その①で解説したように、大手メディアA社は具体的な社名を挙げて「高齢者住宅への入居者に対する訪問看護で不正が行われていた」と報じました。
一方で名前を出された3社はそれを全面否定しています。
しかし、これらのニュースが報じられたネットのコメント欄には、現職または元介護関係者と思われる人から「氷山の一角」「私の勤務先でもやっていた」「やっと、これについて報じてくれるメディアが現れた」などの書き込みが多く見られました。
匿名で誰もが自由にコメントできるため、その書き込み内容の全てに信用が置けるわけではありませんが、3社であるかは別として、これまでそうした行為がゼロではなかったと言ってもいいのではないでしょうか。
そもそも、以前から訪問看護以外でも高齢者住宅では同様の行為が見られました。
例えば、デイサービスを併設したサービス付き高齢者向け住宅で、住宅とデイサービスの運営者が同じ場合には、要介護1の入居者に対して併設のデイサービスを週に6回利用させるという非常に極端なケアプランが作成されるというケースがありました。
また、やはりデイサービスを併設している住宅型有料老人ホームには、居室内はもちろん、共用部にも浴室がありませんでした。建物内の浴室はデイサービスの中だけです。
入居者は、入浴したいと思ったらデイサービスを利用するしかありません。事実上のデイサービス利用の強制です。
今回報じられた訪問看護の不正疑惑も、根本はこうした行為と同じといえます。
さて、今回の報道を受けて、国が動きを見せました。
10月22日に厚生労働省保険局医療課より、地方厚生局と都道府県に対して「指定訪問看護の提供に関する取扱方針について」という通知が発出されました。
主な内容は以下の通りです。
利用者の状態にかかわらず一律に回数を定めて訪問看護を行っている事例がある等の報道があったことを踏まえ、指定訪問看護の提供に関する取扱方針の具体的解釈を示す。
① 指定訪問看護は、利用者の心身の特性を踏まえて、利用者の療養上妥当適切に行い、日常の療養生活の充実に資するようにするとともに、漫然かつ画一的なものにならないよう、主治医との密接な連携のもとに看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと。
② 指定訪問看護の提供については、目標達成の度合いやその効果等について評価を行うとともに、訪問看護計画の修正を行い、改善を図る等に努めなければならない。
訪問看護の日数、回数、実施時間及び訪問人数については、訪問看護ステーションの看護師等が訪問時に把握した利用者や家族等の状況に即して、主治医からの訪問看護指示書に基づき検討されるものである。
訪問看護ステーションが個別の状況を踏まえずに一律に訪問看護の日数等を定めることや、利用者宅への訪問に直接携わっていない指定訪問看護事業者の開設者等が日数等を定めるといったことは認められない。
つまり、A社の報道で指摘されたような「全利用者に1回30分・複数人訪問」は適切ではないという判断を示しています。
特に、重要なのは②の後半です。例え訪問看護事業所の開設者であっても、直接訪問に携わっていなければ、訪問の回数や時間を定めることはできない、としています。
つまり報道にあったような「会社的な指示」が不可能となります。
これができなくなれば、訪問看護事業の収入が減少することになり、経営面で大きな影響が出てきます。
また、今回の厚労省の通知を機に、監査や指導を強化する自治体が出てくることと思われます。
急成長を遂げているホスピス住宅ですが、そのビジネスモデルは大きな岐路に立っていると言えます。
介護の三ツ星コンシェルジュ
配信: 介護の三ツ星コンシェルジュ
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