J-オイルミルズは、目指すべき未来(ビジョン)として掲げる「おいしさ」「健康」「低負荷」を軸にしたソリューション提案という形で、お客様の課題やニーズに対応した商品やサービスを提供している。商品面では「JOYL PRO」シリーズの伸びが最も顕著で、調理油では米の高騰もあり「ごはんのための米油」が特に好調といい、調味油では3種類の風味の提案が可能な「バターフレーバーオイル」シリーズが大きく伸びているという。今年度は新商品として「炭火焼き風味オイル」をはじめ4品発売したが、いずれも現場の低負荷を実現する商品だ。10月からの価格改定の状況を含め、柏原章人理事業務用油脂マーケティング部長に重点方針を聞いた。
――業務用の市場環境について
荷動き自体は悪くなく、上期は堅調だった。インバウンドは大きく回復しているが、物価上昇に伴い国内消費は手放しで良いとはいえず、外食も全業態で好調というわけではない。各種統計データは売上金額で公表されており非常に好調な数値を示しているが、足元ではメニューの値上げなど物価が上昇しているため、使用される食材量とは完全に一致はしない。よって、重量ベースでの外食・中食市場は前年を超える程度だと考えている。
原材料価格が軟調に推移する中、業務用斗缶の市場価格はなだらかに下がっていたが、7月末に10月からの価格改定を発表し、足元は値上げを交渉していくステージに変わった。加工用については価格改定の発表に先んじて、7~9月の価格は上昇し、10~12月の値決めもほぼ9月末で終了しているが、数円の上昇にとどまっており、積み残しが発生している。
――10月から行った価格改定について
価格改定はこれまで、油脂コストの上昇に起因する形で打ち出していた。今回、物流費とエネルギーコストに加え、資材価格も上がっているため、10月からの値上げはこれらインフラコストの上昇を含めてのお願いとなる。7月末に値上げを発表した直後に為替は大きく円高に振れたこともあり、お客様への浸透は一部に留まっている。その後、10月前半より為替は円安に反落し、食用油脂の主要な原料である大豆・菜種などの原料相場も底堅く推移しているため、インフラコストの上昇を含めしっかりとご説明を行い、価格改定を進めて行く。
――1~3月のコスト上昇要因は
為替は一時期160円台から140円台まで円高になったが、足元では再び150円台に戻っている。原料についても、大豆は北米については豊作見通しだが、南米は降雨不足が伝えられており、菜種はカナダ・豪州の供給量が事前予想を若干下回るなど、原料相場は反転基調となっている。上記要因により、1~3月のコストは未だ不透明な部分もあるが、確実に上昇基調に変わって来ている。
〈「ごはんのための米油」のコストダウン提案、「バターフレーバーオイル」2ケタ増〉
――注力している商品や提案について
今年は新商品を4品発売した。既存商品も社会情勢に則った形で提案を進め、ユーザーのニーズに対応しながら新規獲得に取り組んでいる。最も伸びが顕著なのは「JOYL PRO」だ。カテゴリは大きく2つある。香味オイルなどの調味油と、炊飯油や炒め油、麺さばき油などの調理油だ。
調理油は「ごはんのための米油」が伸びている。足元では米が品薄で高騰しており、ご飯のおいしさ向上に加えコストダウンも求められる。「ごはんのためのこめ油」を使用すると、お米一粒一粒をコーティングすることで、釜離れが良くなり釜にこびり付くご飯の廃棄ロスを低減することができる。また、加水量を増やしても粒感のあるおいしいご飯が炊けるため、水をたくさん抱き込む「炊き増え効果」で炊き上がりの重量が増える。これらの効果によりコストダウンを図れると提案している。
調味油では「バターフレーバーオイル」シリーズが2ケタ以上と、全体の中でも大きく伸びている。バターは需給によって品薄や高騰を繰り返す品目だが、当社はスタンダードな「バターフレーバーオイル」に加え、発酵バターのような風味の「芳醇バターフレーバーオイル」とミルクのような風味の「プレミアバターフレーバーオイル」の3種類を取りそろえており、お客様の用途に応じた最適なものを選んでもらえる。各商品で推奨するメニューもそれぞれ充実させており、外食、中食、加工の幅広いユーザーが求める風味のニーズを捉え、採用につながっている。
――業務用のお得意様の課題対応について
「おいしさ」「健康」「低負荷」を軸に、ソリューション提案という形でお得意様の課題やニーズに対応した商品やサービスを提供していく。低負荷の定義には環境負荷の低減と、調理現場や生産現場の負荷低減という2つの軸がある。現場の低負荷は「JOYL PRO」シリーズの調味油と調理油で解決できると提案している。顕在化している外食店の大きな課題は食材高騰と人手不足だ。「JOYL PRO」シリーズはそれらの課題、特に人手不足に対し作業の効率化や均一化といった現場の「低負荷」やメニューの「おいしさ」を手軽に実現できる。
例えば、調理油においては、炊飯油やさばき油、炒め油シリーズなど、食材を油でコーティングすることで調理機器へのこびりつきや食材同士のくっつき、経時劣化を抑制しフードロスを減らせる。また調理機器の洗浄の手間も軽減される。調味油も同じく現場に寄り添った形で提案している。調味油の使用により手軽に調理感を付与することができるため調理時間の短縮が図れる。また、風味の質や力価が均一で調理技術に左右されずに調理の標準化が図れる。調味油は元々、本格的な風味を簡単に付与できるというのが提案の軸だったが、それに加えて人手不足や現場の作業負荷低減を軸にした「低負荷」を実現できる提案に取り組んでいる。
〈「炭火焼き風味オイル」は満を持しての商品化、「長徳」はCFP認証の提案強化〉
――新商品4品の特徴は
「炭火焼き風味オイル」も低負荷の軸は外しておらず、炭火で焼く工程を代替できることを提案している。燻製の煙を油に抱き込ませ、香料や添加物を使わず、ナチュラルに焼いたような香ばしい風味を再現している。時間が経っても炭の風味をしっかり維持できる。冷食やタレなどの加工食品メーカーにも提案しており好評だ。かなり以前から発売を考えていたが、ようやく完成にたどり着き、満を持しての商品化となった。
炊飯油はご飯の食感もコントロールできる。大量に米を炊くベンダーやセントラルキッチンなどに向けて、「炊飯油F3」を新発売した。既存の「炊飯油F2」は、粒立ちの良い硬めのご飯を炊けるのが特長だが、今回発売した「炊飯油F3」は、もっちりとしたやわらかい食感に仕上がる。ユーザーが好む食感を提案することが可能になった。
カレーパンやドーナツ専用の液体油「ベーカリーフライアップL」も新発売した。コロナ以降個包装されるようになったカレーパンやドーナツは、固形脂で揚げることも多い。固形脂は常温に戻しても油染みが少ない一方、扱いにくさをデメリットと感じているお客様もいる。新商品はハンドリングを向上させながら、油染みを抑えることができ、まぶした砂糖が溶けてしまう砂糖泣きも抑制することができる。
紙パックの「スマートグリーンサラダ油」は、環境面での低負荷を押し出しながら、小規模な飲食店向けに提案している。使いやすい省スペースの四角形の容器が好評で、C&Cで並ぶケースも増えてきている。
――主力の「長徳」について
当社独自の長持ち技術「SUSTEC(サステック)」を採用した「長徳」も、食材の高騰や人手不足の課題に対して提案を進めている。長持ちすることで直接的にトータルコストが下がることに加え、油を交換する手間が軽減でき、調理現場の低負荷も提案できる。カーボンフットプリント(CFP)認証は、荷姿・油種別に計16品に増えた。CO2削減ができる油であることを提案する販促ツールも作成し、量販店や外食店の店頭でご使用いただいている。顕在ニーズは食材の高騰や人手不足だが、潜在的にはそういった意識が企業や消費者に強く芽生えてくると考えており、CFP認証の提案をより強化していく。
〈大豆油糧日報2024年11月18日付〉
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB