2、膝蓋骨骨折による後遺症の症状と認定される後遺障害等級
膝蓋骨骨折により生じる後遺症の症状は様々です。考えられる症状と認定される後遺障害等級を解説します。
(1)機能障害(可動域制限)
膝蓋骨骨折により、膝関節の動かせる範囲(可動域)が狭まってしまうケースがあり、機能障害として後遺障害等級が認定されます。
可動域がどの程度狭まったかによって認定される等級が変わります。
等級
症状
8級
関節が全く動かない
ほとんど動かない(可動域がケガしていない側の10%以下)
10級
可動域がケガしていない側の1/2以下
12級
可動域がケガしていない側の3/4以下
(2)動揺関節
膝蓋骨骨折にともなって靱帯を損傷し、関節がグラグラして不安定になるケースがあります。
例えば
通常では曲がらない方向に関節が曲がる
正常な可動域を超えて動く
といった異常が発生し、動揺関節と呼ばれます。等級は以下のとおりです。
等級
症状
8級
常に硬性補装具の装着を必要とする
10級
ときおり硬性補装具の装着を必要とする
12級
強度が強い労働の際に硬性補装具を必要とする
硬性補装具とは、プラスチックや金属で作られた補装具です。布製のサポーターは含まれません。
(3)変形障害
膝蓋骨骨折にともなって
腓骨
脛骨
を骨折して、回復の過程で骨がうまく癒合しないケースがあり、変形障害になります。
変形障害のうち、骨同士が癒合せず、関節のようになってしまうことを偽関節と呼びます。
偽関節の後遺障害等級は症状によって以下のとおりです。
等級
症状
7級
常に硬性補装具の装着を必要とする
8級
常に硬性補装具の装着を必要とするわけではない
また、偽関節にはなっていなくても、腓骨や脛骨に変形が認められれば、12級が認定される可能性があります。
(4)神経症状(痛み・しびれ)
膝蓋骨骨折の影響で膝に
痛み
しびれ
などが残った場合には、神経症状として後遺障害が認定されるケースがあります。
認定される等級は12級または14級です。MRIなどの画像から神経症状を明確に証明できる場合には12級となります。
また、画像からは明らかとはいえない場合でも、
事故態様
症状の一貫性
治療期間
などから自覚症状の存在を医学的に説明できると14級が認定されます。
3、膝蓋骨骨折で後遺障害が残ったときに請求できるものの種類と慰謝料相場
膝蓋骨骨折で後遺障害が残ってしまったら、相手から十分な補償がないと納得できないでしょう。具体的にはどのような金銭を請求できるのでしょうか?
(1)何が請求できる?
①治療費
治療にかかった費用を請求できます。病院の入通院費はもちろん、医師の承諾を得て通院した整骨院の施術費用も請求可能です。
相手方が任意保険(自賠責保険では補償されない部分をカバーできる保険)に加入している場合には、任意保険会社が直接病院に支払っているのが通常です。
なお、
松葉杖などの装具・器具代
通院の際の交通費
なども支払いを受けられます。
②慰謝料
精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。慰謝料には、
入通院慰謝料
後遺障害慰謝料
があります。
入通院慰謝料は、
入通院した日数
期間
などに応じて支払われる慰謝料です。
これに加えて、後遺障害等級が認定されると等級に応じて後遺障害慰謝料も支払われます。
③休業損害
交通事故の影響で仕事を休んでいれば休業損害を受け取れます。主婦・主夫の方も、家事労働ができなかった分について休業損害の請求が可能です。
逸失利益が将来の収入減少に対する補償であるのに対して、休業損害は治療のために仕事を休んだ現在への補償、という違いがあります。
④逸失利益
後遺障害等級が認定されていると、逸失利益も請求できます。逸失利益とは、後遺障害がなければ将来得られたであろう収入です。
事故時の収入
年齢
後遺障害等級
などに応じて計算した金額を受け取れます。
(2)慰謝料計算には3つの基準がある
慰謝料は、誰が計算するかによって以下の3つの基準があります。
自賠責基準:自賠責保険が支払いの際に用いている基準です。自賠責保険は最低限の補償を目的にしているため、金額は3つの基準の中で最低になります
任意保険基準:任意保険会社が支払いの際に用いる基準です。金額は自賠責基準に多少の上乗せをした程度になります
弁護士基準:弁護士が請求する際の基準です。裁判で認められる金額をもとにしているため、裁判基準とも呼ばれます。3つの基準の中で最も高額です
(3)等級ごとの慰謝料相場
等級ごとに後遺障害慰謝料の相場は以下になります。
ご自身が該当する可能性のある等級についてご確認ください。
任意保険基準は非公開のため、自賠責基準と弁護士基準を紹介します。
等級
自賠責基準
弁護士基準
7級
419万円
1000万円
8級
331万円
830万円
10級
190万円
550万円
12級
94万円
290万円
14級
32万円
110万円
弁護士基準は
自賠責基準の2倍以上
場合によっては3倍以上
にもなっています。
弁護士基準で支払いを受けるのが重要だとおわかりいただけるでしょう。
配信: LEGAL MALL