離婚慰謝料請求と民法709条:不法行為責任の理解

離婚慰謝料請求と民法709条:不法行為責任の理解

5、離婚しても民法709条に基づく損害賠償請求が認められないケース

民法709条に基づく損害賠償請求は、全ての離婚事件で認められるわけではありません。

損害賠償請求が認められない離婚事件は、次のようなケースになります。

(1)性格の不一致で離婚した場合

さまざまな離婚理由がある中でも「性格の不一致」で離婚する夫婦は最も多いものです。

性格の不一致は相手に非があると考える方も多いかもしれませんが、この場合は夫婦のどちらが悪いとも言えません。そのため、どちらが加害者でどちらが被害者であるとも言えず、どちらか一方の違法行為で損害が発生したわけではないため、損害賠償は請求できないと考えられます。

(2)既に夫婦関係が破綻していた場合

配偶者に不倫慰謝料を請求したいというようなケースでも、不倫前から夫婦関係が破綻していれば慰謝料請求は認められません。なぜならば、既に夫婦関係が破綻していれば法律上で守られるべき夫婦の共同生活の平和を維持するための権利は消滅していると考えられるからです。

既に夫婦関係が破綻していたかどうかの判断は難しいケースも多いですが、双方に離婚の意思があると客観的に認められるような場合は、既に破綻していたと認められやすくなります。

例えば、離婚協議や調停が進められているような場合や、長期間に渡って別居をしているような場合などが挙げられます。

(3)自分が先に離婚原因を作った場合

自分が先に離婚原因を作った場合には損害賠償を請求できず、反対に相手から損害賠償尾請求される恐れがあります。

例えば、あなたが先に不倫をして夫婦関係が破綻したのであれば、あなたが不法行為による損害を相手に与えたことになるため、離婚慰謝料を支払わなければなりません。

ただし、あなたが不倫をしたことで配偶者から暴力を受けたという場合、どちらにも有責性が発生します。この場合、あなたは配偶者からの暴力に対して損害賠償を請求でき、配偶者は不倫をされたことに対して損害賠償を請求できます。

6、民法709条に基づき離婚慰謝料を請求する際の注意点

民法709条に基づき離婚慰謝料を請求する際には、いくつか注意すべき点があります。

適切な慰謝料を請求するために、次の点に注意してください。

(1)証拠を確保しておくこと

離婚慰謝料を請求する際には、証拠が重要になります。なぜならば、相手が慰謝料請求の原因になる事柄を否定した場合に、その事柄を立証できる証拠を提出する必要があるからです。

もし慰謝料を請求できるようなケースであったとしても、証拠がなければ慰謝料請求が認められない可能性があります。そのため、慰謝料請求を行う前に、慰謝料請求の原因を立証できる証拠を集めておきましょう。

不倫の場合であれば、肉体関係があったことを立証できる証拠が必要です。

ホテルに出入りする写真
肉体関係があることのわかる写真や動画
不倫を自白するメッセージ内容、音声
ホテルや旅行などで宿泊した際のレシートや領収書

上記のような証拠が不倫を立証できる証拠になります。

また、DVの場合は次のようなものが証拠になり得ます。

病院の診断書
DVによって負傷した際の写真
DVを受けている時の動画や音声の録音
DVを受けた日時や内容などをメモした日記

(2)慰謝料の相場を知っておくこと

慰謝料の金額は法律で決められているわけではありません。

ただし、それぞれのケースで慰謝料の相場があり、慰謝料を請求するには相場を知っておくことが大切です。

裁判の場合は、裁判所がそれぞれのケースにおける事情を全体的に考慮し、過去の判例などを参考にしながら慰謝料の金額が算出されます。

個人間の協議で慰謝料を決める際には、こうした相場金額を知っておけば協議を進めやすくなります。

不貞行為の場合であれば100~300万円、DV・モラハラの場合は50~300万円、セックスレスの場合は50~300万円が相場と言われています。

(3)弁護士に相談すること

離婚の慰謝料請求はご自身で請求することも可能ですが、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士への相談では証拠集めや慰謝料相場に関してのアドバイスを得られるだけではなく、慰謝料以外の財産分与や養育費など離婚で請求できる金銭に関しても相談することができます。また、依頼すれば慰謝料請求の交渉や書面作成、さらには調停や裁判の手続きなど全てを任せることができ、手間や精神的な負担を軽減させられるでしょう。

離婚の慰謝料請求を当事者同士で交渉すれば感情的になってしまい、トラブルが大きくなってしまうことも少なくありません。第三者である弁護士に介入してもらえば、早急かつ円滑に問題解決を目指すことができます。

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