3、身元引受人の責任とは?
身元引受人になったからといって、法的な義務や責任が発生するわけではありません。
以下、事実上行うこと(事実上の責任)や注意点をご説明します。
(1)誓約書、身元引受書に住所、氏名などを記入する
身元引受人になる場合は、「誓約書」や「身元引受書」という書類に住所、氏名、連絡先などを記入します。
誓約書や身元引受書には予め、被疑者・被告人を監督する旨の文言が記載されています。
その文言は捜査機関や弁護士によって異なります。
しかし、概ね、「私が責任を持って身元を引き受け、裁判所及び捜査機関への出頭を確保し、日常生活においても厳重に監督することを誓約します。」など記載されていることが多いと思われます。
(2)被疑者、被告人の行動を監督し、裁判所や捜査機関に出頭させる/保釈金が没収される
その他、身柄引受人のやるべきことは、「被疑者、被告人の行動を監督し、裁判所や捜査機関に出頭させる」ことです。
ただ、「監督」といっても、身元引受人の方も生活があるわけですから、四六時中、被疑者・被告人の行動を監視する必要はありません。
もっとも、捜査機関や裁判所に提出した書類の中で約束したこと、弁護士との間で交わした約束(例えば、被疑者・被告人と同居するなど)については守るよう努めなければなりません。
また、場合によっては、刑事裁判に証人として出廷し、尋問(裁判官、弁護人、検察官からの質問)に答えなければならない場合もあります。
その他、保釈中に被告人が逃走した場合、保釈金が没収されることには注意が必要です。
(3)被疑者・被告人の釈放中、保釈中に罪証隠滅行為や逃亡をしたら?
証拠隠滅罪(刑法104条)は「他人の刑事事件」に関する証拠を隠滅した場合、逃走罪(刑法97条)は「拘禁(拘束)された者」が逃走した場合に問われる罪です。
したがって、被疑者が釈放中に、被告人が保釈中に「自己の刑事事件」に関する証拠を隠滅したり、逃亡したとしても罪には問われません。
しかし、他人に証拠隠滅を唆した場合は証拠隠滅罪の教唆犯、逃走を唆した場合は犯人隠避・蔵匿罪の教唆犯に問われる可能性があります。
2019年10月1日、東京地方裁判所立川支部で恐喝未遂罪に問われ実刑判決を受け控訴中だった男性が、勾留執行停止中に逃走したことが報じられました。
男性は、医療機関への受診を理由に3時間のみ釈放を許されていたそうです。
男性は勾留が停止されていることから「拘禁された者」に当たらず逃走罪には問われません。
しかし、男性以外の方が男性を匿うなどした場合は犯人隠避・蔵匿罪、男性がそれを唆した場合は犯人隠避・蔵匿罪の教唆犯に問われる可能性があります。
(4)身元引受人が被疑者・被告人に関する証拠を隠滅したり、身元を匿うと罪
身元引受人が被疑者・被告人の刑事事件(「他人の刑事事件」)に関する証拠を隠滅した場合は証拠隠滅罪に問われる可能性があります(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)。
また、(3)でも触れましたが、身元を匿った場合は犯人隠避・蔵匿罪(刑法103条)に問われる可能性があります(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)。
4、身元引受人になる前に|交際相手、家族が逮捕された場合の相談は弁護士へ
交際相手やご家族など身近な方が逮捕されてしまった場合、早いうちに弁護士に相談されることをお勧めします。
突然いなくなってしまった寂しさもあると思いますし、これからどうしていけば良いのか、途方に暮れてしまうことでしょう。
弁護士に相談することにより、逮捕直後から面会してもらえます(ご家族は逮捕から72時間は面会することができません)から、様子を見に行ってもらうことができますし、逮捕後どのような処遇となるのかの流れも確認することができます。
早期釈放や不起訴を望まれる場合も、弁護士が豊富な経験をもって実現されるよう動きますし、起訴された場合も刑が可能な限り軽くなるよう、最善を尽くすことでしょう。
また、被害者がいる事件であれば、被害者との示談も必要です。
ご家族が動きたいところかと思いますが、被害者から拒否されるなどのことがあり、なかなかうまくいかないこともあります。
示談も弁護士が代行し、被害者への対応もどのようにしていくべきか、弁護士が丁寧にアドバイスしていきますので、ご安心ください。
刑事事件における弁護活動は、早期着手が秘訣です。
早めに事実関係や当事者感情を把握し、総合的に動いていくことが求められます。刑事事件に関与してしまった際は、どうぞお早めに弁護士にご相談ください。
配信: LEGAL MALL