3、起訴状が届いたら確認すべきこと
起訴状が届いたら「裁判の結果に直結するもの」と意識し、その内容はくまなくチェックしましょう。特に下記2点が重要です。
訴因が特定されているか
記載の事実につき、自分の認識や記憶と相違がないか
(1)訴因が特定されているか
第1に確認したいのは、公訴事実の欄に記載された事実が、訴因として特定されているかどうか(刑訴法第256条第3項前段)です。
訴因とは、検察官が主張する具体的な犯罪の構成要件に該当する事実をいいます。裁判を進行できるか否かに関わる次の2つの機能を持ちます。
裁判所に対し、審判の対象をはっきりと定める(画定)する機能
被告人に対し、防御の範囲を示す機能
公訴事実の書き方によっては、必ずしも訴因特定の要件を満たしているとは限りません。
特定の犯罪の構成要件のうち、一部が欠けていたり、別の犯罪の構成要件に該当する事実が記載されていたりすることがあります。
何について裁判するのか(=訴因)がはっきり分かる内容かどうか、チェックしましょう。
(2)記載されている事実に間違いはないか
第2に確認したいのは、起訴状に書かれている内容に間違いがないかどうかです。
刑事裁判が開始されるにあたっては、まず、裁判官が住所や本籍などの情報から、被告人の身元を確認し、その後、検察官が起訴状を朗読した上で、裁判官から被告人に対して、公訴事実に間違いがないかどうかの確認が行われます。
起訴状の誤りを見逃すと、たとえ事件発生の時間が事実と数十分程度ずれているだけであったとしても、指摘や反論をしなかったために、大きく不利になることがあります。
送達された段階で細かい点までしっかりと目を通し、起訴状の内容と自分が認識している出来事との間に相違がないかチェックしましょう。
4、刑事裁判では弁護士が必要?
民事裁判においては、代理人としての弁護士を立てるかどうかは任意ですが、刑事裁判ではほとんどの場合で弁護人(弁護士)が必要です。
無罪や軽い刑の獲得のために必要なのはもちろんですが、法律上弁護人を付すことが求められる場合もあります。
弁護士の必要性や選び方については、次のことがいえます。
(1)国選弁護人制度とは?
刑事事件の中には、刑訴法の規定により弁護士が必須な場合があります。
該当するケースは「必要的弁護事件」と呼ばれ、殺人事件などのいわゆる重大事件(刑訴法第289条第1項)がその例として挙げられます。
この場合、被告人は、裁判所が選任する弁護人(刑訴法第38条第1項)を付けてもらうことができます。これを国選弁護人といいます。
また、弁護士が必須ではない場合でも、金銭的に余裕がない方等は、一定の要件を満たすことで国選弁護人を付してもらうことができます。
近年は、その対象が拡大しており、平成30年6月1日施行の改正法によって、勾留を請求された被疑者も請求ができるようになりました(刑訴法第37条の2第2項)。
(2)弁護士を選任する方法
起訴された時に弁護士を選任する方法は2つあります。
貧困等の理由により国の費用負担で裁判所に選任してもらう方法か、又は、自分で適任者を探して依頼する方法(私選弁護人の選任)です。
いずれの方法も一長一短があるので、自身の置かれている状況に応じて選びましょう。
両者に共通することは、被疑者・被告人のために職務を全うすべき任務を負っていることです。
他方で、国選弁護人は、被告人の側で自分に合う人を選ぶことはできず、別の人に変えてもらう(解任する)ことも容易ではありません。
そして、私選弁護人を選任するには、相当水準の報酬を自己負担する必要があります。
もっとも、安心感や穏当な終局処分を求めるなら、私選弁護人を選任することをおすすめします。
最適な頻度で接見・打ち合わせに対応してもらえる等、きめ細かい対応に期待できます。
▼私選弁護人と国選弁護人との違い(比較)
比較項目
私選弁護人
国選弁護人
選任方法
自力で依頼する
裁判所が本人の請求により又は職権で付す
人選
自由に選べる
選べない
費用・報酬
自分で払う(国選弁護士に比べて高額)
国が払う
弁護活動
親身な対応が期待できる
(接見や打ち合わせ、資料作成にしっかりと時間を割ける)
人による
(弁護士自身が別に仕事を抱えている等の理由で、要望に応えてくれないことも)
解任
いつでも出来る
私選弁護士を付けた時や、著しい職務違反・被告人との利益相反が見られた場合等限定的
配信: LEGAL MALL