5、破壊活動防止法における「外患誘致罪の教唆」とは?
外患誘致罪に該当する行為には「日本国への侵害」という大きな危険性が潜んでいることを踏まえて、破壊活動防止法において、別途「外患誘致罪の教唆」に対する法規制が定められています(破壊活動防止法第38条1項)。
破壊活動防止法第38条の規定によって、外患誘致罪が直接適用される行為だけではなく、それを行わせるような関連行為までが刑事罰の対象に含まれます。
また、外患誘致罪の予備罪・陰謀罪に該当する行為を教唆した場合も、破壊活動防止法の処罰対象となります(破壊活動防止法第38条2項1号)。
(1)外患誘致罪が実行された場合は死刑となる
教唆によって外患誘致罪に該当する行為が実行された場合には、教唆犯の規定である刑法第61条が適用されます(破壊活動防止法第41条)。
つまり、外患誘致罪の教唆をした結果、教唆された者が実際に外患誘致に該当する行為を行った場合には、教唆犯に対して「正犯の刑」が科されるということです。
正犯である外患誘致罪の法定刑は「死刑」なので、外患誘致罪の教唆をした者にも死刑判決が下されます。
(2)実行されなかった場合は懲役または禁錮に処せられる
外患誘致罪などに該当する行為を教唆したが、教唆された者が犯罪の実行に至らなかった場合には、破壊活動防止法第38条第1項の規定に基づいて、教唆犯に対して刑罰が科されます。
教唆の態様などによって、以下のような法定刑が規定されています。
外患誘致罪の教唆をした場合:7年以下の懲役または禁錮
外患誘致罪を実行させる目的で扇動した場合:7年以下の懲役または禁錮
外患誘致罪予備罪・陰謀罪の教唆をした場合:5年以下の懲役または禁錮
外患誘致罪を実行させる目的で、行為の必要性や正当性を主張した文書等を印刷・頒布・公然掲示した場合:5年以下の懲役または禁錮
外患誘致罪を実行させる目的で、無線通信・有線放送で行為の正当性や必要性を主張する通信を行った場合:5年以下の懲役または禁錮
外患誘致罪が実行に移されていなければ、外患誘致罪の教唆犯に対して死刑判決が下されることはありません。
外患誘致罪に関するQ&A
Q1.外患誘致罪とは
外患誘致罪は、日本国に対する外国からの武力行使に関わった人を処罰する犯罪のことです。
外患誘致罪の法定刑は「死刑のみ」であり、現行刑事立法のなかでもっとも刑罰が重い犯罪とされています。
Q2.今までに外患誘致罪で有罪となった判例はある?
過去に外患誘致罪で有罪判決が下された裁判例・判例は存在しません。
・外患誘致罪の性質は裁判手続に馴染まない
外患誘致罪が刑法典に規定されているにもかかわらず処断された例がない理由としては以下のようなことが考えられます。
外国からの武力行使が成功すると日本国内の秩序が崩壊するので裁判制度で処罰することが困難になる(国内秩序が未だに保たれているということは外患誘致罪該当行為が行われていないことを意味する)
外患誘致罪や外患誘致予備罪などが問題になるケースでは深刻な外交問題に発展する可能性が高く、政治的な解決が優先されるので、司法作用が消極的になる
Q3.破壊活動防止法における「外患誘致罪の教唆」とは?
外患誘致罪に該当する行為には「日本国への侵害」という大きな危険性が潜んでいることを踏まえて、破壊活動防止法において、別途「外患誘致罪の教唆」に対する法規制が定められています(破壊活動防止法第38条1項)。
破壊活動防止法第38条の規定によって、外患誘致罪が直接適用される行為だけではなく、それを行わせるような関連行為までが刑事罰の対象に含まれます。
また、外患誘致罪の予備罪・陰謀罪に該当する行為を教唆した場合も、破壊活動防止法の処罰対象となります(破壊活動防止法第38条2項1号)。
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