素晴らしい作品に出合ったとき、最初の感動や衝撃をもう一度味わいたくて「記憶を消したい!」と思ったことはないだろうか。それは一見夢の技術のようにも思えるが、想定外の副作用もあるもので……。タカノンノ(@takanonnotakano)さんのオリジナル漫画「記憶を消して読みたい漫画」は、X(旧Twitter)上で2万件以上のいいねとともに、「本当に好きな話」「考えさせられるおもしろい作品」と読者からさまざまな反響が寄せられている作品だ。
新人漫画家と、彼女の古くからの友人で、“記憶を消すアプリ”の開発者の二人を軸に描かれた中編は、コミカルながらも“作品の記憶”について考えたくなるテーマを帯びている。そんな同作の舞台裏を、作者のタカノンノさんに取材した。
■創作アイデアと作品への想い
タカノンノさんが本作を生み出した背景には、日常でよく耳にする「大好きな作品をもう一度新鮮な気持ちで楽しみたい」という願いがあり、それを実現するアプリがあったらどうなるのか、というアイデアから物語がスタートしたという。しかし、描いたのは単なる願いの実現だけではない。アプリの普及によって、名作が何度でも新作のように楽しめるようになると同時に、新たな作品を創り出すという関心が薄れてしまい、エンタメ業界が大打撃を受けるという影の部分にも焦点を当てた。この設定により、技術の進歩が創作の世界にどのような影響を与えるのかを問いかけている。
「創作」というテーマを繰り返し取り上げる理由について、タカノンノさんは「自分の中にある唯一の引き出し」としつつも、それ以上に「何かを創り出してそれが自分や他人の救いになることは美しい」という思いがあるそう。単なるアプリの発明や友人の再会という表面的なストーリー以上に、深い問いが織り込まれているのだ。
「緊張感がありながらも、どこか少し間の抜けた雰囲気」を意識していて、これはアニメ『ブレンパワード』以降の富野由悠季さんの作品に影響を受けたそう。森と江波の関係性においても、互いに惹かれ合いつつ嫉妬心を抱くという感情を描いていて、そこにタカノンノさんの作風が色濃く反映されている。
取材協力:タカノンノ / くらげバンチ(新潮社)
配信: Walkerplus
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