メルカリで返品詐欺? パーツ破損でキャンセルのはずが「ゴミ」に…出品者「安心して利用できない」 いったい何があった?

メルカリで返品詐欺? パーツ破損でキャンセルのはずが「ゴミ」に…出品者「安心して利用できない」 いったい何があった?

●相手方のアカウントから、個人を特定できるか

今後もメルカリが取引トラブルについて対応しないという態度を維持する場合、当事者が直接交渉をする必要があります。

しかし、直接交渉しようにも、相手方の連絡先がわかりません。そして、メルカリはこの場合にも、相手方の情報を任意に開示しようとはしません。そこで、メルカリに対して法的な根拠に基づく開示請求をしていく必要が出てきます。

通常、こういった場合には情報開示請求という手続きがあり、手間さえいとわなければ、弁護士などに依頼せずに個人で行うこともできます。

しかし、メルカリを相手方とする場合には、個人で手続きを行うのが難しいのです。具体的には、弁護士会照会という手続きを踏まなければならないと思われます。<「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(通称「取引DPF消費者保護法」)」5条参照>。

簡単にいうと、この条文は、個人間の取引について、相手方情報の開示を認めるような条文にはなっていないので、弁護士会照会という別の制度を使わなければならないのです。

そのため、弁護士に依頼しなければならず、費用もかかってしまいます。

したがって、トラブルが起こった場合に、相手方と直接交渉を行うこと自体が、かなり難しいかもしれません。

●警察への被害申告

メルカリの対応に期待できない、直接交渉も難しい、ということであれば、警察に被害申告することも考えられます。

先に検討したように、もし返品詐欺であれば何らかの犯罪が成立すると考えられますから、大変ではありますが、被害申告自体は可能でしょう。

しかし、この場合でも、警察から、「本当に詐欺をされたのか」とか、「実は最初からまともな商品を送っていなかったのではないか」などと、逆に疑われてしまうおそれもあります。

●しっかりと証拠を保全し、自衛すること

そこで、利用者にとってできることは、とにかくしっかりと証拠を保全し、自衛することです。

警察に申告する際だけでなく、トラブル解決全体にいえることですが、たとえば、物を売る際には、梱包から送付までの写真をきちんと撮って保存する必要があるでしょう。

ただし、写真を多く撮影しても、「梱包する写真を取った後に、梱包から中身を抜きとって送付した」と言われてしまう危険性もあります。

そこで、梱包から送付までの一連の流れを動画で撮影しておく方法もあります。商品を梱包するところから、コンビニや郵便局で送付するところまで一連の流れを、一本の動画に残していれば、さすがに売主が嘘を言っている、と疑われることは防げるでしょう。

大変面倒ですが、現状のリスクを考えた場合、自衛手段としてはこのくらいやらないといけないかもしれません。

●おわりに

以上のように、インターネットにおける個人間の取引は、トラブルがあった場合には解決が非常に面倒です。

今回の件で、メルカリに対しては、個人間の取引から利益を得ている会社なのに、トラブルがあった場合には個人間の取引だからという理由で何も対応しないのはおかしい、という強い批判がありました。

今後、対応が変わるのかどうかはわかりませんが、現状では、トラブルがあれば、利用者個人が一方的に不利益を受けるリスクがある、ということは事実です。

取引相手が信頼できるかを見極めることや、個人間の取引には常にリスクが伴うという意識を持ち、高額商品の取引には特に注意するなど、慎重な利用を心がけたいものです。

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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