監修医師:
柳 靖雄(医師)
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
鼻涙管閉塞の概要
鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)は、涙が眼から鼻腔へ流れる経路である「鼻涙管」が閉塞または狭窄することで、涙の排出がさまたげられる疾患です。
正常な状態では、涙は涙腺で産生され、眼の表面を潤した後、涙点から涙小管を通って涙嚢(るいのう)に集められ、鼻涙管を経て鼻腔へと排出されます。
しかし、鼻涙管閉塞が起こると排出経路が遮断されて涙が涙嚢にたまり、涙嚢炎が起きて目やにや涙目、涙嚢の腫れ、眼の感染症などが現れます。
鼻涙管閉塞は、先天性と後天性の2つに大別されます。
先天性鼻涙管閉塞は、鼻涙管の発達不全によって引き起こされ、新生児の6〜20%に認められる症状です。
乳児の涙道疾患のなかで最も頻度が高いとされています。
先天性の場合、多くは経過とともに鼻涙管が自然に開通することがあり、生後12ヶ月までに約96%が自然治癒すると報告されています。
(出典:日本涙道・涙液学会「先天鼻涙管閉塞診療ガイドライン」)
後天性鼻涙管閉塞は主に成人や高齢者に見られ、鼻涙管周囲の炎症や腫瘍、外傷、手術などによって鼻涙管が狭窄することで発症します。
原因となる疾患の治療で改善しない場合は、閉塞部位を切開してシリコンチューブを留置したり、涙嚢と鼻腔の間に通り道を形成したりする手術をおこなうこともあります。
鼻涙管閉塞の原因
先天性の鼻涙管閉塞は、発達の過程で鼻涙管が鼻腔へ開口する部位に薄い膜が残り、完全に開通しないことで起こります。
鼻涙管に薄い膜が残る原因ははっきりとわかっていません。
後天性の鼻涙管閉塞は加齢や感染症、サルコイドーシス、多発血管線性肉芽腫、上顎洞などの悪性リンパ腫、鼻骨骨折や顔面骨折の手術の既往、化粧品のつまりなどが原因で起こります。
配信: Medical DOC