胃腸炎は年齢や性別に関係なく、誰もがかかる可能性があります。そのなかでも一般的に広く知られているのがノロウイルス感染症です。
ノロウイルス感染症のつらい症状に悩まされて苦しむ期間を少しでも減らすためには、特徴を十分に把握し対策しておくことが大切です。
この記事ではノロウイルス感染症の初期症状を中心に、感染経路や治療方法も含めて解説します。罹患しないための予防法も参考にしてみてはいかがでしょうか。
≫「ノロウイルスの潜伏期間」はどのくらい?症状・予防法も解説!【医師監修】!
監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
ノロウイルス感染症の感染経路・潜伏期間
ノロウイルスとはどのようなウイルスですか?
ノロウイルスは直径30~38nmの正20面体をしており、ウイルスのなかでも小さい部類に属します。32個のコップ状のくぼみを持つカプシドタンパク質に覆われていて、粒子内にウイルスRNAゲノムを遺伝子として持っているのが特徴です。小腸の上皮細胞で増殖し、物理的に高い安定性を有しています。宿主域が異なる10の遺伝子型グループが存在し、主要な流行株の遺伝子型は多様化しています。また、ノロウイルスを培養できる生きた細胞がなく培養ができないため、ウイルスを特定するのが困難です。一般的に食中毒として認識されているものの、食品中のウイルスの検出が難しいことが原因究明を遅らせています。
感染経路を教えてください。
ノロウイルス感染症の感染経路の多くは経口感染です。ウイルス性急性胃腸炎の場合、ウイルスを大量に含んだ嘔吐物や排泄物による二次感染や、ヒトからヒトへの直接の感染などが多くみられます。さらに、ウイルスに汚染された食品や水を飲食したことで起こるウイルス性食中毒にも注意が必要です。近年では、罹患した食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を摂取したことによる感染が増加傾向にあります。そして、口腔内に10~100個のウイルスが入るだけで感染が成立する程、強力な感染力を有していることが報告されています。それにより人が密集する閉鎖空間で感染が拡大し、集団食中毒となって発覚するケースが多いです。特に食品産業・医療施設・高齢者施設・教育施設で頻繁に発生しています。
潜伏期間はどのくらいですか?
ウイルスが体内に侵入し感染してから症状発症までの潜伏期間は、24~48時間程度です。短い場合には数時間で症状が現れることもあり、反対に3日以上後になって症状がみられる患者さんもいます。潜伏期間中から他者への二次感染が考えられるため、感染が疑われるなら自宅でゆっくりと休養しましょう。
流行しやすい時期を教えてください。
日本での月別発生状況によると、通年発生はしているものの特に11月頃から発生件数が増加し始め、12月から翌年1月頃までがピークとなる傾向にあります。その後、4月頃まで流行が続くと考えられます。これらの時期は発生件数が多いことに加え、ひと月あたりの患者数が1,000人以上になることもあるでしょう。ノロウイルスは低温や乾燥した環境に強い性質があり、冬に感染が拡がりやすいです。日本の夏は高温多湿のため発生は少なくなるものの、鮮魚や肉類など水分活性が高い食品のなかでもウイルスが生き残ることから、夏も引き続き注意が必要です。
ノロウイルス感染症の初期症状
ノロウイルスに感染するとどのような初期症状が出ますか?
ノロウイルス感染症は顕著な前兆がなく、突然症状が現れます。発熱を伴うケースは少ないですが、初期状態で37~38度程の微熱が生じることはあるでしょう。明確な初期症状は、突発的な吐き気や嘔吐です。胃がムカムカするような症状がみられた後、半日程の間に複数回嘔吐を繰り返します。また嘔吐に続いて、下痢症状が引き起こされます。酸っぱい臭いのクリーム色をした下痢が生じてから、水様性の下痢が1日に2~3回程度出るでしょう。嘔吐や下痢は、体内のウイルスを排出しようとする身体の自然な反応です。これらに伴い、刺すような腹痛もみられます。一方で、感染しているにも関わらず自覚症状がない方や軽い風邪のような症状で済む方もいます。この場合、患者さん自身がウイルスを持っていることに気付かず感染を拡げてしまいやすいです。
症状はどのくらいの期間続きますか?
ノロウイルス感染症の症状は平均1~2日程度と短期間です。発症から1週間程度が回復期とされ、大半の患者さんはその期間内に治療せずとも自然に回復し、後遺症もないのが一般的です。しかし患者さんの体調や感染状況によっては、1週間以上長引くこともあります。特に腸管免疫が確立されていない5歳未満の小児や免疫力が低下している高齢者は、重症化しやすい傾向にあります。嘔吐・下痢に伴う脱水症や嘔吐物の誤飲による誤嚥性肺炎などの症状が引き起こされると、回復までに時間がかかってしまうでしょう。
配信: Medical DOC