モラハラとは?家庭や職場で起こる具体的事例や対処法を解説

モラハラとは?家庭や職場で起こる具体的事例や対処法を解説

3、モラハラ被害者が法的にできること

相手のモラハラを治せない場合、モラハラ被害者は法的に対処することが可能です。

具体的な対処法について、家庭編と職場編とに分けて解説します。

(1)家庭編

家庭で配偶者からのモラハラ被害に遭っている場合は、「離婚」か「慰謝料」、またはその両方を請求できます。

① 離婚請求

モラハラ加害者である配偶者と話し合って合意ができれば、協議離婚が可能です。

合意できない場合には法定離婚事由が必要ですが、モラハラの程度が重い場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められます(民法第770条1項5号)。

裁判で離婚を認めてもらうためには、後ほど「5」でご紹介する証拠が揃っていなければなりません。

そのため、離婚を利出す前に証拠を確保した方がよいでしょう。

相手のモラハラ行為が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するか微妙な場合や、証拠が不十分な場合でも、離婚調停を申し立て、調停委員を間に入れて話し合うことで離婚できる可能性があります。

② 慰謝料請求

モラハラ行為は相手の人格権を侵害する不法行為ですので、被害者は慰謝料請求ができます(民法第709条、第710条)。

慰謝料の相場は数十万円~300万円程度といわれています。

モラハラ行為の回数が多く、長期間にわたっている場合や、モラハラ行為によりうつ病等の精神的疾患を発症したような場合には高額の請求が可能となります。

その他にも、婚姻期間や双方の収入、子どもの有無などによっても慰謝料の額が左右されることがあります。

高額の慰謝料を請求するためにも、モラハラ行為を証明できる証拠を確保しておくことは重要です。

(2)職場編

職場でのモラハラ被害でとりうる法的対処法は、以下のとおりです。

① モラハラ行為の中止請求

企業(使用者)は従業員に対して、労働契約に基づき、その生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をしなければならないという「安全配慮義務」を負っています。

職場でのモラハラ行為によって従業員が精神的に傷つけられ、生命・身体等の安全を脅かさないように配慮することも安全配慮義務に含まれます。

したがって、モラハラ被害者は会社に対して、加害者のモラハラ行為を中止させて安全に働けるように配慮することを請求できます。

② 慰謝料請求

会社に対して中止請求をしてもモラハラ行為がおさまらなかった場合は、慰謝料等の損害賠償請求ができます。

会社に対する安全配慮義務違反に基づく慰謝料請求と併せて、モラハラ加害者に対する不法行為に基づく慰謝料請求も可能です。

慰謝料の相場は、やはり合計で数十万円~300万円程度といわれています。

モラハラ行為の回数が多く、長期間にわたっている場合や、モラハラ行為によりうつ病等の精神的疾患を発症したような場合には高額の請求が可能となることや、高額の慰謝料を請求するために証拠が重要となることは、家庭編でご説明したところと同様です。

4、モラハラ被害で法的対応をするためにすべきこと

(1)戦う意思をもつこと

SNSによる誹謗中傷などもそうですが、いわゆる「イジメ」を受けた場合に法的対応で決着をつけるには、被害者本人が加害者と「戦う意思」をもつことが何よりも重要です。いくら制度が整っていても、被害者という状況に甘んじていては、何も起こすことはできません。

あなたは加害者と同じ対等な人間です。

あなただけが辛い気持ちでいることは不公平です。あるべきことではないのです。

加害者のおかしな行動に対しやめてもらうよう、戦う意思をもつことが大切です。

(2)モラハラの言動を録音する

モラハラ被害に遭ったとき、まずは証拠を集めることが大切です。証拠がないと、どこに相談をしても、動いてもらうことができないからです。

モラハラの直接的な証拠としては、録音データが役立ちます。特に、暴言型のモラハラ行為を受けている場合には、この方法が効果的です。暴言を吐かれているとき、延々と説教をされているとき、相手がこちらの名誉を毀損するような言動をとっているときなど、ICレコーダーなどで録音しておきましょう。

(3)メールやLINEのデータをとる

夫婦間のモラハラの場合は特に、メールやLINEの記録が役に立ちます。モラハラをする人は、外面が良いことが多いのですが、妻(夫)へのメールやLINEでは、暴言や束縛の内容を平気で書いてくることがあるからです。

もちろん、職場の人からのモラハラであっても、メールやLINEの内容が役立つことがあります。スクリーンショットを撮ったり、バックアップをとったりして、確実に保存しましょう。

(4)相手からわたされた書類やメモを保存する

モラハラをする人は、相手に対して高圧的な内容の指示書を渡したり、束縛するためのメモを渡したりすることがあります。たとえば、びっしりと行動内容を決められた「1日の予定表」が渡されることもありますし、嫌みな言葉が書かれていたり、明らかに処理できないほど大量の仕事の指示書が渡されたりすることもあります。

もし、相手から渡された書類で、相手の非常識な言動を窺わせるものがあれば、捨てずにきっちり保存しましょう。

(5)日記をつける

モラハラの証拠を残すには、日記や手帳への記載も役に立ちます。

こうした証拠は、簡単にねつ造できそうにも思えますが、毎日のように詳細につけている場合、後からねつ造することは困難と考えられるので、有効な証拠となります。

(6)SNSの画面を保存する

嫌がらせ行為がSNS上で行われている場合には、そういった画面上の表示も証拠化しておくべきです。

たとえば、相手のSNS画面に名誉毀損的な言葉が書き込まれていたとき、自分のSNSに嫌な言葉を書き込まれたときなどには、その画面を写真で撮影するか、スクリーンショットを撮影しておきましょう。

プリントアウトして紙の形にしておく方法も効果的です。

書き込みがあるうちに証拠化しておかないと、後になって、相手が書き込みを削除してしまうおそれもあるからです。

(7)病院に行く

モラハラ行為によって精神的に追い詰められると、うつ状態などの精神症状が出ることがあります。その場合には、心療内科や精神科などの病院に行き、医師に診断書を書いてもらいましょう。この診断書や通院歴、領収証などが、モラハラ被害を証明する証拠となります。

(8)相談する

モラハラ行為の証拠をある程度集めたら、しかるべき機関に相談をしましょう。第三者に相談した事実も、モラハラ行為で苦しんだことの証拠となります。

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