さいたま市西区にある私立埼玉栄高校のグラウンドで11月16日深夜、男子生徒(16)が運転していた軽乗用車が横転し、助手席に乗っていた男子生徒(17)が死亡する事故が起きました。
後部座席にも別の男子生徒が乗っており、計3人がナンバープレートのない「グラウンド整備用」の車に乗っていたとされています。
報道によると、軽乗用車は時速30〜40キロ程度で走行していたとみられ、グラウンド脇ののり面に乗り上げて横転。その際に助手席の窓を開けて外に身を乗り出していた助手席の生徒が身体を挟まれたようです。亡くなった生徒以外にケガはありませんでした。
運転していた生徒らは、埼玉県警に「過去にもグラウンドで運転した」と話しているといい、学校によると、カギは軽乗用車の中に置いておく運用になっていたといいます。学校側の管理体制が不十分だった可能性も報じられています。
学校のグラウンドで、自動車の死亡事故という「異例」ともいえる状況だが、生徒らはどんな責任を問われるようなことになるでしょうか。また、学校側の責任はどうなのでしょうか。(弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士/小倉匡洋)
●考えられる刑事上の責任
まず、運転していた生徒の刑事上の責任として、危険運転致死罪の「その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ」た結果、人を死亡させた場合(自動車運転処罰法2条3号、1年以上(〜原則20年まで)の有期懲役)にあたるのでは?と気になる方が多いと思います。
同条の「技能を有しない」とは、ハンドル・ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能すら有しないような、運転の技量が極めて未熟なことをさします。
たとえば、運転経験がまったくなく、右左折をうまくできないとか、ブレーキがうまく操作できず、急発進・急停車したり、他の物に衝突させてしまうような技能しか有していない場合です。
なお、この判断には免許の有無は関係なく、実際に車を運転できる基本的な技能があるのかで判断されます。免許を持っていないからといって、ただちに「技能を有しない」とはなりません。
今回のケースでは、実際の運転状況や、この生徒の運転経験がどのくらいだったのかが問題となりそうです。たとえばこの生徒がこれまでも運転をしており、特に事故などを起こしていなかった事情があれば、本罪は成立しないことになりそうです。
次に、危険運転致死罪にあたらない場合も、無免許過失運転致死罪(自動車運転処罰法5条、6条4項。10年以下の懲役)等に問われる可能性があります。
これらの犯罪が成立する場合、少年事件として家庭裁判所の審判を受けることになる可能性があります。
●運転免許の必要な「道路」といえるのかどうか
報道によると、運転していた生徒は「無免許過失運転致死」の疑いで事情を聞かれているようです。
生徒らは高校のグラウンドで運転していたようですが、このグラウンドが、運転免許を必要とする「道路」といえるのか、つまり「無免許」だったのか、という点が大きな問題となります。
配信: 弁護士ドットコム