なぜ「貯蓄から投資」へ?新NISA導入の背景と目的とは


新NISAで、政府は本気で国民に貯蓄から投資へ / (C)Casper1774Studio/PIXTA(ピクスタ)

新NISAがスタートし、投資を始める人や興味を持つ人が増えた2024年。一方、8月に起こった円相場と株式相場の急騰落では、「やっぱり投資は怖い」と不安を感じた人もいたのではないでしょうか。

とはいえ、実質賃金の低下や物価上昇が続く日本で、預金だけで将来に備えるのも厳しいのは事実。そこで紹介するのが、経済愛好家でコラムニストの肉乃小路ニクヨさんが提案するお金との付き合い方。

慶應義塾大学を卒業後、証券会社や銀行、保険会社などを渡り歩いてきたお金のプロであるニクヨさんが、新NISAやiDeCoの基礎知識とともに、堅実にお金を貯める方法についてレクチャー。将来を見据えたポジティブなマネープランを参考に、お金を育てることの大切さを学んでみませんか。

※本記事は肉乃小路ニクヨ著の書籍『いま必要なお金のお作法 幸せを呼ぶ40のマネープラン』から一部抜粋・編集しました。

新NISAで個人資産の一部を投資に回し、国内経済の活性化を目指す。
老後資金は国に頼りすぎない

新NISAで、政府は本気で国民に貯蓄から投資へという流れを進めようとしています。日本政府が新NISAを導入した背景には、いくつかの大きな目的があります。

■目的① 経済活性化
日本経済の長期的な低迷を脱却するためには、企業への投資を活発化させることが必要です。2,000兆円を超える個人の金融資産の一部を「貯蓄」から「投資」へとシフトさせることで、企業が成長するための資金を増やして、国内経済全体の活性化を目指しています。

また、日本や近隣国は少子高齢化の傾向ですが、世界規模で考えると人口は増え続けています。そんな世界を相手に戦える日本企業が沢山出てきてほしいし、日本に来る世界中のインバウンドを相手にできる企業も沢山出てきてほしいです。

■目的② 老後資金の準備
医療技術の進化もあり、日本では長寿化が進んでいます。そうすると年金と貯蓄の切り崩しだけでは老後生活を送ることが難しくなる可能性が指摘されています。

一般に老後2,000万円問題と言われている事案です。退職年齢の後ろ倒し、年金受取開始年齢の後ろずらし、GPIFによる資金の運用などの対策を打っていますが、さらに個人でもできることをやってもらおうということです。

新NISAを利用して投資を行ってもらい、金融資産を増やすことで、自らの老後資金を補完することを促しています。

■目的③ 世界の投資資金を呼び込む
2,000兆円を超える日本人の金融資産の一部が株式市場に流入し、市場が活発になることで、日本の株式が世界の主要な投資先の一つになることを目指しています。実際に2024年の新NISAのスタートに伴って、海外投資家からの買いが集まり、日本株は大幅な上昇をしました。

ただ、2024年の7月後半から8月にかけての騰落で短期資金は逃げてしまうということがありましたが、市場が落ち着くことで、各国の年金基金や保険会社などの長期的な運用資金が市場に戻ってくることが期待されています。

■目的④ 金融機関の競争力強化
新NISAの導入により、日本の金融機関がより魅力的な投資商品を提供できるようになって、国際的な競争力を高めることを期待しています。

せっかくお金を集めるチャンスをもらったのだから、金融機関も魅力ある商品を作って、この「貯蓄」から「投資」への流れを後押しすることが大切です。魅力ある商品を作ったら、日本だけでなく、世界の投資家も買ってくれるのです。

そうやって日本の金融機関の国際的な競争力が増すと、産業としても雇用を生み出します。理想としては東京が世界の金融センターの一角を占められるくらいの地位に戻ってほしいですよね。

● 本記事は、執筆時点の情報を元に作成しています。金融に関連する法律、制度が改正、または各社のサービス内容が変更される可能性がありますのであらかじめご了承ください。
● 投資には一定のリスクが伴います。売買によって生まれた利益・損失について、執筆者ならびに出版社は一切責任を負いません。投資は必ず、ご自身の責任と判断のもとで行うようにお願い致します。

著=肉乃小路ニクヨ/『いま必要なお金のお作法 幸せを呼ぶ40のマネープラン』

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