シニア犬が罹りやすい病気|症状や対策法を、犬の性別・大きさ別に獣医が解説

シニア犬が罹りやすい病気|症状や対策法を、犬の性別・大きさ別に獣医が解説

犬は小型犬なら10歳、大型犬なら8歳くらいから、ちょっと年をとったかなと思えることが増えてくるようです。今回はシニア犬によくみられる病気を解説していきます。

小型のシニア犬によくみられる病気

僧帽弁閉鎖不全症

犬の心臓にある僧帽弁という弁が動きに異常をきたし、しっかりと閉じなくなることでおこる病気です。

僧帽弁が閉じなくなることで血液の逆流が生じ、心臓が肥大して気管支にも悪影響を与えます。

そのため、この病気になると犬は咳をするようになります。

ミニチュアダックスフンド、マルチーズ、シーズー、トイプードル、チワワ、キャバリアなどの小型犬に多くみられます。

キャバリアにいたっては、高齢犬だけでなく3歳くらいの若い犬でも発症することがあるので注意が必要です。

僧帽弁閉鎖不全症はほっておくと肺水腫になって命に関わってくる病気です。

治療は生涯にわたって必要になることがほとんどですが、初期段階から治療を開始すると延命効果も高まります。

進行すると、だれでもわかるくらいしょっちゅう咳をするようになりますが、できればそうなる前の軽い段階で受診することをおすすめします。

初期段階では普段は症状がみられませんが、朝方咳をするとか、興奮した時にだけ咳をするといった症状がみられます。

また、犬の咳は人のようにわかりやすい咳ばかりではありません。

実際には吐くものはないのだけれど、吐くようなそぶりを何度もするといったようなこともあります。

このような様子が何日もみられるようでしたら、動物病院につれていきましょう。

関節疾患

関節疾患のなかでも、小型犬に多いのは膝蓋骨脱臼です。

膝蓋骨(いわゆる膝のお皿のこと)が外れてしまう状態になるのですが、犬の場合ほとんどが内側に外れます。

膝蓋骨脱臼は先天性のものがほとんどですが、脱臼のしやすさによっていくつかのグレード(段階)にわけられています。

グレード2以上の場合は子犬のうちに手術をすることが推奨されています。

膝蓋骨脱臼の犬ははしゃぎまわったりしたあとに、片足をあげてスキップするみたいに歩くことがあります。

しばらくすると自然に膝がもとの位置にもどって普通に歩けるようになることが多いのですが、年齢を重ねるうちに膝に負担がかかり片足で歩くことが増えるようになります。

完治させることはできないので、普段からなるべく膝に負担がかからないようにしてあげることが大切です。

小型犬は室内で飼育されていることがほとんどなので、そのことも膝への悪影響となっていることが少なくありません。

フローリングの床などのすべりやすい環境は関節を痛める原因となります。

床は絨毯かマットを敷くなどして、足がしっかり踏ん張れるように工夫することです。

また、ソファーから飛び降りたり、階段の上り下りなどもシニア犬の膝を痛めることになります。

そういったことができないように住空間の工夫が必要です。

大型のシニア犬がかかりやすい病気

関節疾患

小型犬には膝の関節疾患が多いのですが、大型犬は膝に限らず、前肢の手根関節や股関節などの関節も年齢とともに炎症をおこしやすくなります。

大型犬は体が大きい分、関節への負担も多くなってくるのです。

加齢とともに関節軟骨も柔軟性を失ってくるため、関節に直に負荷がかかる状態となります。

そのような状態でも関節は使い続けられるので、だんだんと変形していきます。

痛みが出てくると犬は歩きたがらなくなり、そうすることで筋力も衰えてきます。

関節も筋肉にサポートされているので、筋肉が減ってくるとますます関節への負担が大きくなります。

加齢とともに関節に変形を生じることを完全に防ぐことはできません。しかし、日々の養生でその進行を遅くすることは可能です。

養生の第一歩は体重管理です。やはり、肥満は関節に一番負担をかけてしまいます。飼い主さんは、犬を太らせないようにフードを調整してあげてください。

次に環境です。

最近は大型犬も室内で飼われる方が多くなりました。

小型犬のところでも書きましたが、フローリングの床などは犬が滑りやすく関節に負荷がかかりやすいです。

犬は本来は土の上を歩いています。

アスファルトを歩くことも足の関節にはよくないとは思いますが、現代社会ではある程度は仕方ありませんね。

せめて普段の生活の場では、足がしっかりと踏ん張れるよう工夫してあげてほしいと思います。

また、変形性脊椎症といって、背骨を形成する椎骨のゆがみによって神経が圧迫され、腰が痛くて歩けなくなってしまう病気もあります。

老犬になれば程度の差はあれ、どの犬にも起こることではあるのですが、大型犬にはその影響が大きくでやすいのです。

腰が痛いため、犬は後ろ足の歩幅が小さくなり、立っているときもブルブルと足を震わせるようになります。

大型犬がそうなった場合、立ち上がるのが困難になることもあるのです。

痛みを軽減するために、鎮痛剤の投与が必要となることも少なくありません。

薬はやむを得ませんが、犬が立ち上がりやすいように生活場所をすべらないようにすることが大切です。

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