すべてのシニア犬に共通する病気
オス、メス、小型、大型にかかわらず、シニア期にはいったすべての犬に共通する病気について説明します。
消化器疾患
犬も高齢になると、消化器機能が衰えてきます。
そして、消化機能が低下すると、ストレスに弱くなってくるように思います。
ストレスはお腹に影響を与えるので、ストレスを与えないように、若いときよりも気をくばってあげる必要があるかもしれません。
加齢とともに腸内細菌のバランスも崩れ、そのため下痢や便秘をしやすくなります。
犬は下痢になることが多いようです。
ただ、高齢犬が下痢をした場合、すぐに動物病院につれて行くのも考えものです。
犬が普段とすこし様子が違うと、その日のうちに動物病院を受診される飼い主さんがいますが、先述したとおりシニア犬はストレスに敏感になっています。
動物病院までの移動や診察で症状が悪化することもありうるので、2~3日自宅で様子をみることも大切なことです。
犬が下痢をしても、元気、食欲に問題なければ少し様子を観察してみましょう。
ただし、犬が明らかに元気がなかったり、普段だったら喜んでたべるおやつにも見向きもしないといった場合には、様子をみずに動物病院につれていってください。
また、元気や食欲はあっても、便に血がまざっているような場合も早めに受診されたほうがいいです。
皮膚疾患
シニア犬の皮膚は、若い犬よりも薄くなって乾燥しています。
皮膚のバリアが薄くなったぶん、細菌による感染症なども引き起こしやすくなっています。
特に、寝ている時間が多くなるシニア犬では、1ヶ所の皮膚に負担がかかり、いわゆる「床ずれ」をおこしてしまうことも珍しくありません。
細菌感染などを伴った皮膚病では、たいていの犬は体を痒がるようになり、飼い主さんもその様子をみて動物病院につれてくることが多いです。
しかし、かゆみを伴わずただ脱毛が進行していくだけの場合は、長期にわたり様子をみてしまわれる方が多いように感じます。
まぁ年だから毛が薄くなってきてもしかたないか、といった感じで特に動物病院に行くほどでもないと思ってしまうようです。
そういうシニア犬の血液検査をしてみると、脱毛の原因はホルモン異常による甲状腺機能低下症やクッシング症候群という病気だったということもあります。
これらの疾患は皮膚だけではなく、全身に影響を及ぼす病気です。
早期発見が大切となってきますので、犬が最近やたらと毛が抜けてきたなと思ったら、動物病院で検査を受けるようにしてください。
癌(悪性腫瘍)
癌といっても腫瘍ができる場所も症状もさまざまです。
若い犬でも癌になることはありますが、やはりシニア犬に多い病気の一つです。
皮膚にできる癌や、乳腺腫瘍のように発見しやすいものもあれば、肝臓癌のように検査をしない限りわからない癌もあります。
犬が慢性的に嘔吐している、食べてはいるけど痩せてきているなどといった症状がみられたら獣医師に相談してみてください。
白内障
白内障とは水晶体のタンパク質が変性して白く濁った状態のことをいいます。
人ではほとんどが加齢によるものですが、犬の場合は遺伝も関わっているようです。
トイプードル、ヨーキー、シーズー、柴犬などは白内障になりやすい犬種として知られています。
また、犬は糖尿病になるとほとんどの場合、白内障を併発します。
犬の目が白く濁ってきたなと感じたら、まずは全身性の疾患にかかっていないか動物病院で調べてもらいましょう。
老齢性白内障の場合は完全には予防できません。
ただ、進行を遅らせる目薬やサプリメントがあるのでそれらを使用することもあります。
手術に関しては、獣医眼科専門医で検査を受けることになります。
認知症(痴呆症)
高齢犬でしばしば問題となるのが、夜鳴きです。
犬が一晩中鳴いて、近所からもクレームがくるといった相談を受けることがあります。
犬が痴呆になった場合にみられる行動を以下に示しておきます。
同じところをグルグルと回っている。
壁があるのに前に進もうとする。後退ができない。
さっき食べたばかりなのにまた欲しがる。食欲が若い時よりある。
飼い主からの呼びかけに反応しなくなった。
今まで鳴いたことのないような声で鳴き続ける。
狭いところに入りたがる。
認知症になるのはほとんどが日本犬です。
柴犬か、柴犬系統のMIX犬の相談が一番多いと思います。
痴呆症を完全に治療したり予防するのは難しいのですが、サプリメントが効果的なことがあります。
EPA、DHAといった不飽和脂肪酸のはいったサプリメントを、日本犬がシニア期に入ったら与えておくと痴呆症の症状を緩和できることがあります。
EPAやDHAは魚に多く含まれているので、日本犬には魚肉中心のフードのほうが合っているのかもしれません。
認知症になると、犬は思わぬ行動にでることがあります。
今まで室内を自由にさせていた場合でも、犬がどこかにぶつかって怪我をしないように、サークルで囲むなどの工夫をしたほうがいいでしょう。
最後に
若いうちは予防目的でしか動物病院を利用されなかった方も、犬が年をとると病気治療のために連れて行く機会がふえると思います。
特に犬が避妊、去勢をしてあるかというのは、獣医師が診断を下すうえで重要となります。
シニア犬を飼っている方が初めての病院を利用するときには、しっかりと伝えるようにしてください。
ご自分の犬がかかりやすい病気を知っておくことで、食事を見直したり、飼育環境を整えるなどの早めの対策ができると思います。
参考にしてみてください。
配信: わんちゃんホンポ