監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。
会陰裂傷の概要
会陰裂傷は、分娩時に会陰部(膣口と肛門の間の領域)に発生する裂傷のことです。この裂傷は、自然に発生する場合もあれば、医療処置として行われる会陰切開の結果として生じる場合もあります。
会陰裂傷は、その重症度によって4つのグレードに分類されます。
第1度:腟粘膜と会陰皮膚のみの裂傷
第2度:会陰筋および膣筋の裂傷を伴うもの
第3度:肛門括約筋の裂傷を伴うもの
3a:外肛門括約筋の50%未満の裂傷
3b:外肛門括約筋の50%以上の裂傷
3c:内肛門括約筋の裂傷
第4度:肛門括約筋および直腸粘膜の裂傷を伴うもの
会陰裂傷は、分娩を経験した女性の多くに見られる合併症です。その発生率は報告によって異なりますが、
一般的に初産婦では85%程度、経産婦では60-70%程度とされています。
会陰裂傷の原因
会陰裂傷は、主に分娩時の胎児の通過による会陰部への過度の圧力によって引き起こされます。
会陰組織の伸展性が胎児の大きさや通過速度に対応できない場合に裂傷が発生します。この裂傷のリスクは、様々な要因によって増加する可能性があります。
胎児が大きい場合、会陰部への圧力が増加し、裂傷のリスクが高まります。特に、胎児の頭囲が大きい場合や肩甲難産の場合に注意が必要です。また、分娩が急速に進行すると、会陰組織が十分に伸展する時間がなく、裂傷が起こりやすくなります。
器械分娩、特に吸引分娩や鉗子分娩を行う場合も、会陰裂傷のリスクが上昇します。これは、器械の使用により会陰部への圧力が増加し、また分娩が急速に進行する可能性があるためです。
医療処置として行われる会陰切開も、結果として会陰裂傷となります。会陰切開は、重度の会陰裂傷を予防する目的で行われることがありますが、近年の研究では、ルーチンの会陰切開は推奨されていません。
初産婦の場合、会陰組織の伸展性が低いため、裂傷のリスクが高くなります。これは、過去に分娩を経験していない会陰組織が、初めての大きな伸展に対応しなければならないためです。
骨盤の形状も会陰裂傷のリスクに影響を与えます。骨盤出口が狭い場合、胎児の通過時に会陰部への圧力が増加し、裂傷のリスクが高まります。また、会陰部の組織特性や柔軟性も重要な要因となります。
これらの要因が単独または複合的に作用することで、会陰裂傷が発生する可能性が高まります。しかし、すべての分娩で会陰裂傷が発生するわけではなく、適切な分娩管理と予防策により、そのリスクを軽減することが可能です。
配信: Medical DOC