「つわりで歯磨きをするのもツライ……」。そんな日々をお過ごしの妊婦さんも多いのではないでしょうか? 妊娠中はつわりにくわえ、ホルモンバランスや生活習慣の変化により、お口トラブルが生じやすくなります。これらのトラブルは妊婦さんのみならず、お腹の赤ちゃんにも影響を与える可能性があるため注意が必要です。そこで妊娠中に注意したいお口トラブルや、つわりの時期のセルフケアのポイント、歯科受診のタイミングについて、江並歯科の江並先生に解説していただきました。
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監修歯科医師:
江並 大和(江並歯科)
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。日本歯科大学新潟病院研修終了。芦屋市および神戸市の歯科医院での勤務を経たのち、父の代から30年以上続く歯科医院を引き継ぎ、江並歯科を開院。患者とのコミュニケーションを重視し、「かかりつけの歯医者さん」として地域に根ざす。治療だけでなく、日常のケアや口腔健康の相談にも応じる。スタッフ一丸となって、通いやすく安心できる歯科医院を目指している。
妊娠中に気をつけたいお口トラブルとそのリスク
編集部
妊娠中はむし歯や歯周病などのお口トラブルが増えると聞きますが、それはなぜでしょうか?
江並先生
妊娠期特有のホルモンバランスによる体の変化に伴い、お口の中にも様々な変化が生じてしまうためです。つわりの影響で歯磨きが難しくなったり、繰り返す嘔吐で口内が酸性に傾いたりするのがその代表例です。これにより、妊娠中は通常よりもむし歯リスクが高まります。さらに、注意が必要なのが歯周病です。妊娠中はある種の歯周病菌が増殖しやすく、歯ぐきの腫れや出血が起こりやすくなります。
編集部
そのほかに、お口の中に影響する要因はありますか?
江並先生
食生活の変化も大きな影響を与えます。妊娠中は一度にたくさん食べられないので、少量ずつ頻繁に食事をする傾向があります。この状態で食後の歯磨きが十分にできないとお口の環境はさらに悪化し、むし歯や歯周病、口臭などの問題が生じやすくなるわけです。
編集部
むし歯や歯周病、口臭のほかに、妊娠時に気をつけたいお口トラブルはありますか?
江並先生
ほかにも、いくつか注意したいトラブルがあります。1つは、「歯の揺れ」です。妊娠中は出産に備えて骨盤の靭帯が少しずつ緩んでいきますが、これが歯にも影響を及ぼし、一時的に歯が揺れることがあります。このような妊娠特有の歯の揺れは、出産後に自然に消失しますが、それが妊娠によるものか・ほかの病気によるものかどうかは歯科医による診断が必要です。
編集部
ほかにも、妊娠期特有の症状はあるのでしょうか?
江並先生
「妊娠性エプーリス」と呼ばれる症状があります。これは歯ぐきにコブのような膨らみや腫れが生じるもので、多くの場合、出産後に自然に消失します。したがって、特別な治療は必要ありませんが、歯周病を併発しやすいため注意が必要です。
編集部
以上のようなお口のトラブルは、母体や胎児にも影響を及ぼす可能性はあるのでしょうか?
江並先生
妊婦さん自身については、妊娠中に歯や歯ぐきの状態が悪化すると、その影響が出産後にまで及ぶ可能性があります。歯は一生使い続けるものですから、以後も快適に過ごすためにも妊娠中の口腔ケアは非常に重要です。胎児への影響としては、歯周病による早産や低体重児出産のリスクに注意が必要です。歯周病による炎症は出産リスクを高める可能性があるため、お腹の赤ちゃんの健康を守るためにも、妊娠中は普段以上に口腔ケアに取り組んでいただきたいと思います。
つわりの時期を乗り切る! 妊娠中の口腔ケアのポイント
編集部
妊娠中はつわりで歯磨きをするのが難しい場合もあると思いますが、どのように工夫すればよいでしょうか?
江並先生
食後すぐに歯磨きができない場合は、体調の良い時間帯を選んで磨くようにしてください。その際、歯ブラシを大きく動かすと気持ち悪くなりやすいので、小さいヘッドの歯ブラシを小刻みに動かすのがポイントです。また、歯磨きに集中しすぎると吐き気が起こりやすくなるため、テレビを観ながら、外を眺めながらの「ながら磨き」で気を紛らわせるのも効果的です。
編集部
そのほかに、妊娠中の口腔ケアのポイントはありますか?
江並先生
今まで使っていた歯磨き剤の味が苦手になってしまったら、別の製品に変えてみるのもよいでしょう。「どの歯磨き剤が自分に合うか、実際に使ってみないとわからない」という場合は、歯科医院で相談するのも方法の1つです。歯科医院によっては、院内で取り扱っている歯磨き剤を試用させてもらえるところもありますので、上手く活用していただければと思います。
編集部
妊娠中の歯の健康を保つために、食生活で気をつけるべきポイントを教えてください。
江並先生
妊娠中はむし歯や歯周病のリスクが高まるため、甘いものやジュース類はできるだけ控えるようにしましょう。また、栄養バランスのとれた食事を心がけることも大切です。歯の健康に関しては「カルシウム」が歯と骨に働きかけるので、妊娠期は積極的に摂っていただきたいです。その際、ビタミンDと一緒に摂ると吸収率が上がりますので、カルシウムとビタミンDをセットで取り入れるようにしましょう。
配信: Medical DOC