ニュースでも取り上げられるようになった市販薬によるオーバードーズ。
ドラッグストアで買えてしまう薬の危険性とは?依存性はあるの??
今回は特定非営利活動法人たんぽぽの丘に所属する、薬剤師の竹下友紀子さまにお話を伺いました。
増加する市販薬でのOD(オーバードーズ)
市販薬の過量服薬による救急搬送が、2018年と比較すると2020年には約2倍に増加しています(出典:厚生労働省 医薬品の販売制度に関する検討会(第2回)、資料3 わが国における市販薬乱用の実態と課題)。
薬の過量服薬(過量摂取)とは、オーバードーズ(OD)とも呼ばれますが、文字通り、決められた量を超えた量の薬を短時間で飲んでしまうこと。
特に、一部の風邪薬や咳止め薬などに含まれる成分の一部が、多量に摂取すると幻覚作用や睡眠作用など、感覚や気持ちなどに変化を起こすことから、市販薬でのODが一部の若者たちなどの間で広まっています。
違法薬物や麻薬などの使用とは異なり、普通のドラッグストアで購入できる薬でできてしまうため、買いやすさから気楽に始められてしまうことが原因のようです。
事実、救急外来受診率は20代が30%と最も多く、10代も7%との報告もあり、若い世代への広がりが見受けられます。
こういった背景により、厚生労働省は販売数量の制限など販売規制を強化しています。
どんな薬がODに用いられる?!
現在、ODの原因となる市販薬は鎮咳去痰薬(咳止め)、総合感冒薬(風邪薬)、解熱鎮痛薬(痛み止め)などがあります。
症状に合わせ、適切に服用する場合は大きな問題は起こりにくいのですが、過剰に摂取した場合は副作用として
[依存]薬を摂取したいとコントロールできなくなる、手足の震え、発汗、不眠、幻覚
[呼吸抑制]呼吸回数が減る、浅くなる
[錯乱]注意力が散漫になる、行動にまとまりがない
[せん妄]軽度の意識混濁、興奮状態
などが起こることが考えられます。
OD用の薬として人気のものはパッケージやネーミングから「金〇〇」などといった俗称がつけられたものもあり、大人からするとぞっとするようなことですが、その効果や体験談などはSNSなどで共有されており、誰でも簡単に見つけることができます。
体への影響は?市販薬だから安全・・・は大間違い!
シンナーや大麻、違法ドラッグと違い、市販で売られているものなので、大量服用しても危険性は低いのでは、と思ってしまう方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
薬を過剰に摂取することで、肝臓などの臓器にダメージを受け、病気になったり、場合によっては命に係わる状況となることも考えられます。
特に、医師から処方される薬とは異なり、市販薬にはもともとさまざまな成分が含まれています。
多量に摂取し、これらの成分が作用しあって影響が現れた際は、原因となる成分が分かりづらく、治療に影響を与える恐れもあります。
また、過量に服用している場合、依存性は連用により高まります。
店で買えるという手軽さ、手に入れやすいという現実は、始めやすさにもつながりますが、薬の止めにくさにもつながります。
一般薬とはいえ、多量に摂取することの危険性は頭に入れておきましょう。
どうやったらODをやめられる?!
ODに興味を持ったり、実際にやってしまう人は、つらさやストレスを抱え、誰にも相談できず、孤独感を持っていることが多いです。
そのため、専門機関(精神病院や、カウンセラー、社会福祉士等)に、相談することが重要となります。
周囲の方にODの兆候が見られたら、真剣に話しを聞いたり、専門機関へつながるよう手助けしてあげてください。
その方がODをしたくなる要因(家庭環境や、貧困問題等)に目を向け、先に生活の問題を解決し、安心できる環境を整えることも重要です。
具体的には、今の悩みや過去の記憶など不快なものを書き出していき、その中で解決できそうな項目から、取り組んでみる・・・といった提案もいいでしょう。
[執筆者]
竹下友紀子
特定非営利活動法人たんぽぽの丘 薬剤師
薬学部卒業後、製薬会社に2年半勤務。
その後結婚を機に調剤薬局へ就職。
妊娠・出産を経て、現在も調剤薬局で働いている。
特定非営利活動法人 たんぽぽの丘
配信: キレイ研究室
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