電車でゲロして逃走「他の人にかけてしまった」かも・・・あとから悔やむ乗客、犯罪は成立する?

電車でゲロして逃走「他の人にかけてしまった」かも・・・あとから悔やむ乗客、犯罪は成立する?

「電車内で嘔吐してしまい、他の人にもかかってしまったかもしれませんが、その場から逃走してしまいました。私はどのように対応するべきでしょうか」

このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

酔っぱらった状態で電車に乗った相談者ですが、飲み過ぎてしまったのか、電車の中で嘔吐してしまいました。問題はそのあとです。嘔吐でパニックになり、吐瀉物を片付けることもなく、その電車から立ち去ってしまったといいます。

その後、相談者は、嘔吐した際に近くにいた乗客の服を汚してしまったのではないかと後悔していますが、相手の連絡先はわかりません。これらの行為にはどのような法的責任が生じるのでしょうか。幾野翔太弁護士に聞きました。

⚫️賠償責任は生じると考えられる

——嘔吐した乗客はどのような民事上の責任が発生しますか

もし他の乗客の服を汚してしまった場合、その人はその服を使用し続けることは困難です。その服のクリーニング費用や、クリーニングで汚れが落ちない場合にはその服の時価相当額について、民事上賠償する責任が生じます。

鉄道会社については、嘔吐で汚れた床や座席を清掃する必要があるでしょうから、車内清掃にかかる費用や、清掃のために電車が遅延している場合には、理屈上、損害賠償請求される可能性はあります。

ただし、鉄道会社は日常的に多数の乗客を乗せており、よく起こりうる問題ですので、現実的に損害賠償を請求される可能性は低いと思います。

——乗客の服を汚して逃走したり、嘔吐で電車を汚したりした行為に刑事責任は生じますか

他の乗客の服を汚す行為は、刑法上、暴行罪や器物損壊罪にあたります。また、鉄道会社については、車内清掃のために遅延が生じているような場合、威力業務妨害罪が成立しうる行為になります。

しかし、暴行罪も器物損壊罪も、故意の場合に成立する犯罪ですので、わざと嘔吐したり、吐瀉物をかけたわけでなければ、刑事責任は発生しません。

⚫️法的な責任とともに、マナーとして対応すべきか考えたい

——服を汚した相手や鉄道会社に対して、相談者は何か対応する必要はあるでしょうか

法的に責任が発生するかどうかと、マナーとして対応すべきかどうかは別の問題ですが、気になるようでしたら、鉄道会社に連絡して謝罪をすれば、大事になることはないと思います。

また、今から相手の乗客を特定することは困難だと思いますが、もし鉄道会社に確認するなどで特定できるのであれば、謝罪とクリーニング代の支払いを申し入れてみてはいかがでしょうか。

【取材協力弁護士】
幾野 翔太(いくの・しょうた)弁護士
企業法務、一般民事、刑事事件など幅広く対応。大阪市立大学法科大学院修了、2018年弁護士登録。大阪市内の法律事務所を経て、東京スタートアップ法律事務所入所。大阪弁護士会所属。小学生の頃に見たドラマに憧れて弁護士を志望した。ミネラルショー(鉱物の展示会)巡りが趣味。
事務所名:東京スタートアップ法律事務所大阪支店
事務所URL:https://tokyo-startup-law.or.jp/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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