監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
ユーイング肉腫の概要
ユーイング肉腫は、主に骨やその周囲の軟部組織に発生する希少な悪性腫瘍です。
特に小児および若年成人に多く見られ、10〜20代が最も発症しやすい年齢層です。
この腫瘍は、ヨーロッパ系の人々に多く見られる一方で、日本人では稀です。また、男性に若干多く発症する傾向があります。
ユーイング肉腫は主に骨に発生しますが、骨外型と呼ばれる軟部組織から発生するタイプも存在します。
ユーイング肉腫は速やかに進行することが多く、診断が遅れると肺や骨などに転移をきたすリスクが高まります。そのため、早期診断と適切な治療が予後に大きな影響を与えるため、迅速な対応が求められます。
ユーイング肉腫は他の骨肉腫と比較して放射線治療や化学療法に対して比較的感受性が高いことが特徴であり、手術とこれらを組み合わせた治療を行います。
若年で発症することもあり、こういった治療に伴う副作用も含め、治療終了後も長期にわたって通院が必要となります。そのため、小児慢性特定疾病の指定を受けています。
ユーイング肉腫の原因
ユーイング肉腫の正確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、遺伝的要因が強く関与していることが知られています。特に、ユーイング肉腫は特定の染色体異常、具体的には11番染色体と22番染色体の間で生じる遺伝子融合(EWSR1-FLI1融合遺伝子)が原因で発生します。
この異常な融合遺伝子は、細胞の異常な増殖を引き起こし、腫瘍形成に寄与します。この遺伝子融合は、ほぼすべてのユーイング肉腫患者さんで確認されており、ほかのがんと異なり、家族性の遺伝ではなく、発症する際に新たに生じる突然変異によるものと考えられています。
したがって、ユーイング肉腫は遺伝的素因よりも、偶発的な遺伝子異常が重要な役割を果たしていると考えられています。
配信: Medical DOC