――上期を振り返って
業務用食用油市場は、為替やユーティリティコストなどの影響によってコストが上昇に転じる中、局地的に過度な価格競争も見られ、若干の下げ基調で推移した。バルク品は7月以降、パーム油を中心に値戻しに向けた動きが見られたが、全体的な改定幅は小幅に留まっている。当社は適正価格での販売に注力するとともに、顧客の課題をソリューションする付加価値型商品の提案を強化し、「日清スーパー長持ち油」、「日清吸油が少ない長持ち油」など差別性のあるフライ油をはじめ、さまざまな調理シーンで作業性改善、メニューの品質向上に繋がる炊飯油や麺さばき油といった機能性油脂の拡販に取り組んできた。
特にピロー包装容器は中食だけでなく、外食業態でも使い勝手が高く評価され、卸店と積極的に提案を強化している。春に当社が主催している全国各地での業務用卸店を集めた会合の中で、今年度の重点商品としてピロー包装容器を一緒に販売していくことを提案しており、成果が出ている。
各エリアでの新規開拓に加えて、中小外食企業を主な販売先とする卸店向けの販売量回復に努めた結果、当社の販売実績は業務用トータルの販売量は前年を上回った。
訪日外国人の需要を背景に外食市場は堅調に推移しているが、原材料コスト高騰によるメニューの値上げの影響も大きい。足元では消費者が物価高に対応し、値ごろ感あるメニューを支持する傾向が強まっている。従来から続く人手不足の慢性化や光熱費、物流コストの上昇とも相まって外食産業を取り巻く環境は楽観視できるものではない。
〈ユーザーの課題解決を起点に質の高いベネフィット提供継続〉
――下期の取り組みを
業務用食用油は10月1日より、7~10%の価格改定をお願いしている。現時点ではまだ目指す水準までには至っていないが、粘り強く丁寧に説明を重ねる中で、ユーザーの理解を得て適正価格での販売を維持していきたい。これまでもユーザーが抱える課題、例えば品質向上やコスト対策、作業効率化に対し、さまざまなアプローチによって当社の強みや差別性を価値に変えて課題解決策を行ってきた。引き続き質の高いベネフィットを提供し続けることで期待と信頼を得ていきたい。
具体的には、品質向上として、米の品質課題が顕在化する中で、炊飯用による保温ジャー保管時の品質維持、炊飯回数削減や品質均一化、食材ロスの低減といったベネフィットを提供している。麺さばき油の活用によるテイクアウトやビュッフェなどで課題となっている経時変化による品質劣化の抑制を提案している。離水抑制機能を持つ炒め油の活用によって、加熱調理後の野菜の食感、おいしさを維持するベネフィットを提案している。
コスト対策として、外食で特に課題となる着色抑制対策、長持ち油による効率的なフライ油管理の提案を行っている。高騰するオリーブオイルの代替として、生食使いでもおいしく風味を引き出すブレンドタイプを提案している。
作業の効率化として、人手不足が深刻な課題である外食店舗へのピロー油の推進、フライヤーへの張り油や差し油の作業負担軽減の提案なども行っている。風味油である「日清素材のオイル」シリーズ活用による濃厚な香味付与や調理工程の短縮、洗浄の省力化による時短を提案している。
当社が持つ課題解決情報をより広く届けるために、飲食店向けの業務用情報サイト「日清オイリオ業務用お役立ちサイト」をさらに充実させるとともに、メルマガ配信やキャンペーン企画なども積極的に活用していきたい。
――業務用の物量回復の見通しは
市場全体として業務用市場はコロナ前の段階に戻っておらず、簡単ではないと見ている。まずは、自社の販売量を回復するため、先ほど述べたような、ユーザーの課題を解決する商品を提案することをきっかけとして、さらに汎用油も当社商品に切り替わっていくというストーリーを描いている。汎用油を価格で取りに行くのも選択肢の一つだが、基本的には新規開拓はユーザーの課題解決という視点から始まり、そこで信頼関係を得ることや、機能を認められることで採用が広がっていくことを目指している。
――価格改定の手ごたえは
21~22年にかけての6回の価格改定を実現できたのは、原料価格が大きく上昇したためで、ユーザーも理解しやすかった。過去の急激なコスト上昇に対し、今回の価格改定は少し意味合いが異なる。値上げ発表した後に円高に触れたこともあった。原料価格も総じて安定している。
ただ、食用油のコストはそれだけで決まるわけではない。世界的な食用油の需要が強いことはベースにある。直近ではミールの販売が非常に悪い。特に中国の景気減退によって中国で搾油したミール販売が思うように進んでおらず、輸入ミールとして入ってきている。こういった状況はなかなか理解されない。10~12月のバルクの価格も7~9月に比べると上がったが、想定のところまでは上がっていない。一般的なパッケージ品の価格も、総じて上げ幅が限定されている。
――今後のコスト環境は
1~3月のコストが決まっておらず、まずはそこを見据え、今後のアクションを決めていく。
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB