急性腎障害の治療
急性腎障害の治療は、腎臓の状態を管理する治療法と急性腎障害を引き起こした原因に対する治療法に分けられ、2つの治療法を組み合わせて腎臓機能の回復を目指します。
急性腎障害の管理
急性腎障害を管理する治療には、食事療法や薬物療法、血液浄化療法の3つがあります。
食事療法
急性腎障害の食事療法は、食塩や水分、カリウム、窒素代謝産物などが体内に溜まることを予防するために行います。
食事療法ではタンパク質や塩分の減量、カリウムの摂取が制限された食事による治療が行われます。
薬物療法
腎前性急性腎障害や腎性急性腎障害では、脱水の回復や循環血漿量を増やすために輸液を行うことがあります。
多臓器不全の原因となる敗血症性ショックの治療で腎臓の機能を改善するために、ノルアドレナリンを投与することもあります。
血液浄化療法
血液浄化療法は血液の老廃物や余分な水分を除去する治療法です。高窒素血症や高カリウム血症、アシドーシス、肺水腫などが合併して食事療法や薬物療法で十分な改善が得られなくなった場合や、術後に多臓器不全をきたした場合などで選択されます。
血液浄化療法は血液透析や腹膜透析などの方法があり、血圧の状態や出血傾向の有無を考慮して適切な方法を検討します。
血液透析は血液を透析器に通して老廃物や余分な水分を除去し、血液をきれいな状態にして体内に戻します。
腹膜透析は肝臓や胃を覆っている膜(腹膜)の内側に透析液を注入し、腹膜の働きによって血液の老廃物などを排出させる治療法です。
急性腎障害の原因除去
急性腎障害の治療では腎障害の状態を管理する治療法に加えて、原因疾患の治療も同時に行う必要があります。
原因疾患に対して行うのは主にステロイド薬や免疫抑制剤などの薬物療法です。
腎後性急性腎障害では尿管にステントを挿入して狭窄や閉塞を解消したり、腎臓と尿管の境目にカテーテルを挿入して尿を排泄(腎ろう)させたりします。
急性腎障害になりやすい人・予防の方法
急性腎障害は腎臓の機能が低下している人や、糖尿病患者、高齢者で発症しやすいです。
また、手術や造影剤、抗がん剤、抗生物質などの使用は腎性急性腎障害をきたしやすく、脱水により細胞外液量が減った状態で使用することで、発症のリスクが高まると報告されています。
これらの医薬品を使用する場合はあらかじめ十分な補液をすることで、発症リスクを下げることができます。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などの鎮痛剤も腎臓に負荷がかかるため、使用中に疑わしい症状が見られた場合は早めに医療機関に受診しましょう。
関連する病気
高窒素血症
高カリウム血症
代謝性アシドーシス
後腹膜線維症
悪性腫瘍
前立腺肥大
急性腎炎
急性間質性腎炎
急性尿細管壊死
多臓器不全
参考文献
日本腎臓学会誌「急性腎不全」
厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル急性腎障害(急性尿細管壊死)
日本内科学会雑誌「慢性腎不全の病態と治療」
日本腎臓学会「4.急性腎障害と慢性腎臓病」
日本腎臓学会会誌 「AKI・急性腎不全の原因,診断の進め方」
日本腎臓病協議会「血液透析」
国立循環器病研究センター「さらに詳しく急性腎障害(AKI」
日本内科学会雑誌「AKI(急性腎障害)Update」
日本内科学会雑誌 「急性腎障害の予防法」
配信: Medical DOC
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