解熱鎮痛薬を服用したときに起こる「アスピリン喘息」発症しやすい人の特徴を医師が解説

解熱鎮痛薬を服用したときに起こる「アスピリン喘息」発症しやすい人の特徴を医師が解説

監修医師:
高宮 新之介(医師)

昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院生理学講座生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

アスピリン喘息の概要

アスピリン喘息は、アラキドン酸シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を持つ、アスピリンに代表される解熱鎮痛消炎薬(NSAIDs)によって、喘息発作や鼻詰まりが急激に悪化する気管支喘息のひとつのタイプです。
NSAIDs喘息、N-ERD、AERD、解熱鎮痛薬喘息などと呼ばれることもあります。
アスピリン喘息の体質は、生涯にわたり続くことが知られているため、喘息の症状がよくなってもNSAIDsの使用を避けることが必要です。
しかし、NSAIDs以外の薬である抗生剤、胃腸薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、漢方薬、去痰薬、降圧薬などは、安全に使用することができます。この体質は、遺伝性の疾患ではありません。
アスピリン喘息は、思春期以降に発症した喘息患者さんの5~10%を占めます。また、女性の方が多く(男性:女性は1:2)、小児は稀です。

アスピリン喘息患者さんのうち、多くの方に慢性副鼻腔炎や鼻ポリープの合併がみられ、手術歴がある方もいます。これらの症状は、特に嗅覚障害を伴うことが多いです。鼻症状は、コーヒーの香りがわからないなどの嗅覚低下が最も多く、鼻閉、鼻汁といった一般的な喘息症状を示します。

練り歯磨きや香水の匂い、香辛料が多く含まれる食事、果実などで発作がおこったり、悪化することもあるので注意が必要です。

アスピリン喘息は、多くの場合次のような経過をたどります。

① 30~40歳代に、鼻茸(鼻ポリープ)および副鼻腔炎により、嗅覚が低下します。

② 通年性の鼻炎症状(鼻水、鼻づまり)を生じます。

③ ①から2~3年以内に、長引く空咳や典型的な喘息発作を生じます。

④ 吸入ステロイド薬+長時間作用型β2刺激薬を中心とした喘息治療を開始します。

アスピリン喘息の原因

アスピリン喘息は、アスピリンのみによって誘発されるわけではありません。ピリン系・非ピリン系といった分類や内服薬や注射薬、坐薬、塗り薬、貼り薬、点眼薬といった剤形にかかわらず、ほとんどすべての解熱鎮痛薬が原因となります。
NSAIDsは、市販の総合感冒薬(風邪薬)や解熱鎮痛薬のほとんどの商品に含まれているので、自己判断で薬を使用しないことが大切です。

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