監修医師:
大坂 貴史(医師)
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
紫斑病の概要
紫斑病とは、皮膚や粘膜に赤や紫の斑点が現れる疾患の総称で、これらの斑点は小さな血管が破れて出血することで生じます。紫斑病は、血液や血管、免疫系の異常によって引き起こされ、軽症のものから重篤なものまで、さまざまなタイプがあります。斑点は痛みを伴わないことが多く、圧迫しても色が変わらないのが特徴です。
紫斑病には、血管に異常が生じる「アレルギー性紫斑病(血管性紫斑病)」や、血小板の減少によって出血しやすくなる「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」など、さまざまな種類があります。多くの場合、出血は皮膚の表面に現れるだけでなく、内臓や関節、腎臓などにも影響を及ぼすことがあります。重症の場合、内出血や臓器の障害を引き起こし、治療が必要となることもあります。
紫斑病は、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に発症しますが、特に小児に多いアレルギー性紫斑病と、成人に多い特発性血小板減少性紫斑病がよく知られています。早期に診断し、適切な治療を行うことで、多くの場合は回復しますが、放置すると合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
紫斑病の原因
紫斑病の原因は、血管や血小板、免疫系の異常によって異なります。
以下は、紫斑病の主要な原因とそれに関連するメカニズムです。
血管の損傷や炎症
アレルギー性紫斑病:
アレルギー性紫斑病(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病とも呼ばれます)は、免疫反応によって血管が炎症を起こすことで、血管が破れやすくなり、出血が起こる病気です。
この病気は主に小児に見られますが、成人にも発症することがあります。感染症(風邪や咽頭炎など)や薬物、食物に対するアレルギー反応が引き金となることが多く、血管壁が弱くなることで、血液が漏れ出し、紫斑が形成されます。
血管の脆弱性:
高齢者では、血管が加齢によって弱くなることがあり、軽い打撲や圧力でも血管が破れて出血し、紫斑が現れやすくなります。特に、皮膚が薄くなっている部分や、長期間ステロイド治療を受けている患者では、血管が脆弱になり、紫斑が発生するリスクが高くなります。
血小板の減少
特発性血小板減少性紫斑病(ITP):
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、免疫系が誤って自分の血小板を攻撃し、破壊することによって血小板が減少し、出血しやすくなる病気です。血小板は血液凝固に重要な役割を果たしており、これが減少すると小さな血管からの出血が止まりにくくなり、紫斑が発生します。ITPは、急性型と慢性型に分類され、急性型は主に子どもに多く見られ、感染症がきっかけで発症することが多いです。
血液疾患:
血液の疾患、特に白血病や骨髄異形成症候群などの病気は、血小板の産生が低下し、紫斑が発生する原因となります。また、抗がん剤治療や放射線治療を受けている患者も、血小板が減少しやすく、出血リスクが高まります。
免疫系の異常
紫斑病の多くは免疫系の異常によって引き起こされます。免疫系が過剰に反応したり、誤って自分の組織を攻撃したりすることで、血管や血小板が影響を受け、出血が生じます。例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患では、免疫系が血管や血小板にダメージを与え、紫斑を引き起こすことがあります。
外傷や薬物の影響
紫斑病は、外傷や薬物の副作用として発症することもあります。
例えば、アスピリンやワルファリンなどの抗凝固薬や血小板機能を抑制する薬物は、出血しやすくするため、紫斑が現れることがあります。
また、血小板の機能に影響を与える薬物の長期使用もリスクを高める要因です。
配信: Medical DOC