レビー小体型認知症の治療
根本的な治療法はなく、中核症状・パーキンソニズム・自律神経症状への薬物療法と非薬物療法での対症治療になります。
認知機能障害に対する薬物療法では、コリンエステラーゼ阻害薬を使います。認知症の進行抑制と幻視・注意などの改善が期待できる薬です。行動・心理症状にはドネペジル・抑肝散・メマンチンなどが使われます。抗精神病薬は適応外の使用になるため、十分なインフォームドコンセントが必要です。
コリンエステラーゼ阻害薬が使えないケースで行動症状のコントロールが必要な症状には、非定型抗精神病薬が使われます。抑肝散は副作用が少なく、非定型抗精神病薬よりもリスクが低い薬剤です。パーキンソニズムにはL-ドパを使いますが、せん妄や精神症状が悪化する可能性があるため、状態を見ながら少しずつ投与していきます。また、レビー小体型認知症の行動・心理症状にケアや環境整備などの非薬物的介入は重要と考えられますが、研究報告に乏しいのが実情です。
認知機能障害や幻視は、覚醒レベルや注意機能の低下で悪化します。環境整備を行い刺激が入力されやすい状況や他者と交流する機会を設けると覚醒レベルや注意機能の維持につながる可能性があります。転倒による骨折や誤嚥性肺炎の可能性も高いため、早期からリハビリテーションを行って運動機能の維持に努めるようにしてください。
レビー小体型認知症になりやすい人・予防の方法
レビー小体型認知症になりやすい人は、認知症の危険因子を複数もっている方やレム睡眠行動異常症・便秘・嗅覚低下がある方です。レビー小体型認知症などの神経変性疾患では、10〜20年以上も前からレビー小体の蓄積が始まっており、発症時には脳神経の変性が進んでいるケースも少なくないです。
近年の研究で、レビー小体が原因の神経変性疾患を発症する10〜20年程前からレム睡眠行動異常症・便秘・嗅覚低下が生じている可能性が示唆されています。気になる症状がある方は医療機関で相談してみてください。また、認知症は加齢や遺伝性のもので罹患する場合もあります。加齢・遺伝子を変えることは難しいですが、認知症の危険因子として考えられている高血圧・喫煙・飲酒・糖尿病・肥満・運動不足などを変えることは可能です。
危険因子を改善すると認知症のリスクを軽減できる可能性はあります。日常生活で取り入れられることから見直して認知症の予防に努めていきましょう。
参考文献
Lewy小体型認知症
1.認知症の病態解明の進歩―認知症と蛋白異常による分類と病態 3)αシヌクレイン
レビー小体型認知症(DLB)|独立行政法人国立病院機構宇多野病院 関西脳神経筋センター
レビー小体型認知症の病態と早期診断のコツ
レム睡眠行動障害|厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
脳ドーパミントランスポータシンチグラフィ|国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
Lewy小体型認知症の診断基準
パーキンソン病とレビー小体型認知症
Lewy小体型認知症
鷲見幸彦病院長らの研究グループは、日本人の一般人口におけるレビー小体病の前駆症状(prodromal症状)の保有率を明らかにし、自覚症状を有しない50歳以上の健診受診者の5.7%に2つ以上の前駆症状を有するハイリスク者が存在することを見出しました|国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
認知症の危険因子と運動による予防|国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
配信: Medical DOC
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