3、児童買春で逮捕される場合の罪名とその罰則
児童買春は犯罪行為ですから、窃盗や覚せい剤取締法違反等、他の犯罪と同様に、逮捕される可能性があります。
殺人罪や窃盗罪のような刑法犯とは違い、児童買春・児童ポルノ禁止法は特別刑法ですので、逮捕される際の罪名は「〇〇罪」ではなく、単に児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反)とされることになります。
では、18歳未満の児童と買春をしてしまった場合にどのような罪になるのかについて、罰則もあわせてみていきましょう。
(1)援助交際をした場合
出会い系サイトなどで児童と知り合い、金品を提供して性交する援助交際をした場合は、児童買春罪となります。
なお、売春防止法とは異なり、児童ポルノ禁止法には、「性交等」と書かれています。
したがって、性交類似行為(挿入に至らない行為)でも「児童買春」となり得ますので注意が必要です。
罰則は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
(2)相手の裸等の写真や動画を撮影した場合
児童の裸などのみだらな姿を写真や動画に撮影した場合は、児童ポルノ製造罪となります。
罰則は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
児童のみだらな姿を撮影した写真を所持したり、画像や動画をパソコンやスマホなどに保存すると児童ポルノ所持罪となります。
罰則は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
これらの写真、画像、動画をインターネット上の掲示板などに投稿するなどして不特定多数の人が見ることができる状態にすることも、処罰の対象です。
罰則は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれの併科です。
(3)出会い系サイトなどで援助交際を持ちかけた場合
出会い系サイトや、マッチングサービスアプリなどで、児童に対して援助交際を持ち掛けること自体、出会い系サイト規制法で禁止されています。
出会い系サイト規制法の正式名称は、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」といいます。
第六条 何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為(以下「禁止誘引行為」という。)をしてはならない。
一 児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。
二 人(児童を除く。第五号において同じ。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
五 前各号に掲げるもののほか、児童を異性交際の相手方となるように誘引し、又は人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
引用元:インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律
法律の名称から分かるとおり、いわゆる出会い系サイトに限らずインターネットを利用した異性交際マッチングサービス全般に上記の罰則が適用されます。
禁止に違反したときの罰則は、100万円以下の罰金です。
(4)出会い系サイト以外で知り合った児童と援助交際をした場合
知り合ったきっかけを問わず、児童と援助交際をした場合は児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春罪)となり得ます。
援助交際が立証されなくても、18歳未満の児童と性的な行為をした場合、各都道府県の青少年保護育成条例違反となる可能性があります。
罰則は都道府県によって異なる場合もありますが、おおむね2年以下の懲役または100万円以下の罰金とされているところが多いといえます。
4、こんな場合も児童買春で逮捕されることがある
児童と援助交際をした場合は、通常児童買春をしたという自覚があるものですが、場合によっては、児童買春をしたつもりがなくても突然逮捕されることがあります。
以下のような場合は要注意です。
(1)相手が18歳未満だと知らなかった場合
児童買春罪は故意がなければ成立しません。
つまり、本当に相手が18歳未満であることを知らなかった場合は、理論的には無罪となります。
ただし、実際に逮捕された場合はこの言い訳はなかなか通用しないこともあります。
「もしかしたら18歳未満かもしれない」という認識があれば「未必の故意」が認定され、故意があることになるからです。
たとえ相手が「18歳以上だ」と嘘をついた場合でも、疑わしいと思う客観的な状況がある場合には、未必の故意が認定されてしまう可能性があります。
(2)食事をおごって性交した場合
児童買春とは、対償を供与して児童と性交等を行うことです。
ここにいう「対償」はお金に限らず、その他の利益も含まれます。
食事をおごることも利益の提供に該当するので、児童買春罪が成立する可能性はあります。
ただし、利益を与える見返りに性交等をするという対価関係がなければ児童買春罪は成立しません。
したがって、最初は食事をおごって会話をするだけの目的で会ったところ、意気投合して性交等に至ったような場合は児童買春罪にはあたらないのです。
もっとも、当初は会話するだけの目的であったという主張が認められるかどうかは、それ以前のやりとりや当日の行動状況などから判断されることになりますので、このように言っておけば児童買春罪にはあたらないということではありません。
なお、逮捕されたときの対処法は、後で詳しくご説明します。
(3)真剣に交際しているつもりだった場合
出会い系サイトの援助交際がきっかけで知り合った相手であっても、何度か会っているうちに恋愛感情が芽生えて真剣な交際に発展することもあるでしょう。
しかし、相手が18歳未満であれば援助交際を行った時点で児童買春が成立しているため現在真剣な交際をしているからといって、過去の児童買春がなくなるわけではありません。
たしかに真剣な交際であれば青少年保護育成条例違反にはなりませんが、真剣な交際と認められるのはお互いに結婚を意識するほど本格的に交際しているような場合です。
既に相手のご両親にも紹介済みといった事情などがあれば真剣な交際と認められやすいでしょうが、そのような事情がある方はごく稀でしょう。
配信: LEGAL MALL