【内部通報制度】内部通報する方法と通報すべき内容とは

【内部通報制度】内部通報する方法と通報すべき内容とは

3、内部通報内容〜「通報」に値する内容とは?

そもそも、どのような通報が内部通報に値するのでしょうか?

消費者庁の平成28年度の調査から多くの企業で通報の対象とされている事実が次のとおり明らかにされています。

(1)「通報」に相当するもの

消費者庁の前述の調査では、次の事実を通報対象事実として規定している企業が多いようです。

「会社のルールに違反する行為(就業規則等に違反する行為)」(68.9%)
「法令違反行為(公益通報者保護法の対象となる法令違反行為に限定していない)」(68.4%)、
「職場環境を害する行為(パワハラ、セクハラなど)」(65.7%)
「その他の不正行為」(51.2%)。

なお、特に限定していないという会社も24.5%あります。

公益通報者保護法が保護対象とする通報内容よりも、広範に通報を受け付けている企業が多いようです。

(2)「通報」に適さないもの

とはいえ、何でも通報してよいとは言えないでしょう。

通報に適さないものの代表的なものを取り上げてみました。

内部通報を考えているなら、社内規則や社内手引きなどで通報が受け付けられる事実の要件や範囲など確認しておくことは最低限必要です。  

①単なる不満や悩み事

前記調査でも、運用する会社の悩みとして「通報というより不満や悩みの窓口となっている」が35.7%もありました。

職場の単純な不満や悩みなら、上司やさらにその上の上司に相談する方が、適切な解決が得られることが多いでしょう。

とはいえ、会社がよろず相談窓口と割り切って受け付けているかもしれません。

企業の中には、ハラスメントなどの問題を早い段階で拾い上げるために通報しやすくしている、という考えの会社もあるようです。

②業務上のルールなどの疑問

業務上のルールが不適切・非効率だ、といった問題なら、通常は業務所管部署に相談するのが適切でしょう。

内部通報窓口の担当者が個別業務について詳しいわけではなく、結局は「当該部署と相談してください」と言われてしまうなど単なる回り道になりかねません。

とはいえ、当該部署では問題にしていなかったが、他部署の人が見て疑問に感じ、内部通報で判明することもあり得ます。

例えば、長年、品質偽装を行っている企業において、品質偽装を行うための業務上のルールが存在していたとします。

そのルールにについて、当該部署の人は疑問に思っていなかったが、他部署の人が気になって通報し、そのルールの存在に会社が気づき調査したところ、品質偽装が行われていたことが判明する、といったことがあり得るでしょう。

また、不当だと思われる業務ルールの疑問については、業務ルールに関することでも内部通報に値する場合があると言えます。

③噂話・誹謗中傷

会社によっては「単なる噂話や他人を誹謗中傷するような通報は受け付けられません。」といったルールを設けているところも見られます。

但し、これも会社が通報を排除したり通報者を処分したりする理由に使われている可能性も考えられます。

対応についての注意は後述します。

4、内部通報の通報先〜どこに通報するの?

通報先は、以下の3つです。

会社
行政機関(監督官公庁)→ 具体的な機関は、こちらで検索することができます
外部機関(報道機関、消費者団体、事業者団体、労働組合など)→ ライバル企業など「労務提供先の競争上の地位その他正当な利益を害する恐れがある者」は除かれます

この3つから通報先を選ぶことができます(通報先に順番はありません)が、通報先を誤ると、公益通報者保護法で定める通報による不利益な取扱いの禁止の保護を受けられないことになりかねません。

というのも、企業の利益の保護の観点から、ケースごとに、保護されるとする通報先が法定されているからです。

つまり、たとえば、「会社の脱税について外部に通報した、しかし全くの勘違いだった」という場合、会社が被る被害は相当なものです。

このような軽々しい通報まで保護することは難しいということはお分かりいただけるでしょう。

では、どのような場合にどこに通報すれば公益通報者保護法の保護の対象になるのかを見てみましょう。

(1)通報対象事実がある、又は、まさに生じようとしていると信じるに足る相当な理由があり、これに加えて一定の要件を満たす場合

①通報対象事実がある、又は、まさに生じようとしていると信じるに足る相当な理由とは

単なる憶測や伝聞等では足りません。

通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要とされています。

②一定の要件とは

「一定の要件」とは次のようなものです。

会社や行政機関に通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受ける可能性が高い

(例)以前、同僚が内部通報したが、それを理由に解雇された。

会社に通報をすれば証拠隠滅・偽造・変造等される可能性が高い。

(例)事業者ぐるみで法令違反が行われている。

会社から会社や行政機関に公益通報しないように要求されたが、正当な理由がない場合

(例)誰にも言わないように上司から口止めされた。

書面(紙文書、電子メールなど電子媒体含む)で会社に公益通報をしてから20日経っても会社から調査を行う旨の通知がなかったり、正当な理由なく調査を行わなかったりした場合

(例)勤務先に書面で通報して20日経っても何の連絡もない。

個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険がある可能性が高い。

(例)健康被害が発生する危険な食品が消費者に販売されている。 

③保護される通報先

この場合は最も保護に値するケースです。

そのため、3つの通報先のうち、どこに通報しても保護されます。

(2)通報対象事実があると信じるに足る相当な理由がある場合

これは前(1)の「一定の要件」がないケースです。

この場合は外部機関へ通報してしまうと保護対象になりませんので、注意が必要です。

もっとも、会社、または行政機関に通報すると保護対象となります。

(3)通報対象事実があると思われる場合

これは「相当な理由」がないケースです。

相当な理由はないのだけれど、事実があると思えば良いのです。

そのため、このような場合は外部機関のみならず行政機関への通報も保護されません。ご注意ください。

保護されるのは、会社への通報のみです。

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