【内部通報制度】内部通報する方法と通報すべき内容とは

【内部通報制度】内部通報する方法と通報すべき内容とは

5、内部通報者に制裁はあるのか〜内部通報する際の注意点とは

(1)一定の不利益な取扱いは法律で禁止されているが限界も

①禁止される不利益取扱い

禁止される不利益取扱いとは、解雇や契約の打切り、降格、減給、訓告、自宅待機命令、給与上の差別、退職の強要、専ら雑務に従事させること、退職金の減額・没収等です。

派遣労働者については、公益通報を理由にされた派遣先の派遣契約の解除は無効になります。

また派遣先が派遣元に派遣労働者の交代を求めること等も禁止されています。

②問題は人事異動

しかし、よく問題が起こるのは、配置転換や出向、転籍です。

これらの異動を会社から発せられる可能性があります。一般に、報復人事などといわれたりもします。

通報者に不当な異動が発せられれば、住所の変更を強いられたり、能力に見合わない職場への異動を命じられ退職に追い込もうとされたりするなど様々な不利益を被る可能性があります。

不当な人事異動は権利濫用と認められれば無効となりますが、会社側が自主的に報復人事であることを認めることは考え難いため、報復人事であることを立証することは相当に困難を伴います。

報復人事についてはこちらの記事もご覧ください。

(2)人間関係への影響

内部通報により、上司・同僚あるいは会社の経営者から疎まれることはしばしばあります。

いたたまれなくなって退職する事例も後を絶たないようです。

(3)内部通報するにあたっての注意点

これまで述べてきたように、内部通報には様々なリスクがあります。

注意点はここまででも述べてきましたが、それ以外の一般的な注意をご説明します。

①証拠をしっかり集める。

メール、ドキュメントの写し、会話の録音、動画、画像など可能な限り、客観的な証拠を収集します。

単なる噂話ではないか、といった疑いをもたれないためです。

本人へのハラスメント行為等でも、加害者は教育的指導だったとか単なる戯れで本人も気にしていなかった等と言い訳する場合もあり、客観的証拠が役に立ちます。

②誹謗中傷と取られる言動は避ける

たとえ、公正・適切な通報であったとしても、口頭や書面の表現ぶりなどに細心の注意を払いましょう。

正義感に駆られて過激な表現をすると、それだけで誹謗中傷と疑われかねません。

まずは書面に一度書いてみて、冷静に見直すことをお勧めします。

③組織的な不正や経営者による不正の場合、社内窓口への通報は避けたほうがよい

組織的な不正や経営者による不正の場合、社内窓口への通報をしてしまうと社内で揉み消されかねません。

前述4(2)の大王製紙事件のように、社内の所定の通報先が信頼できないとして、信頼できる別部署(関連事業部)に通報して、発覚した、というのも参考になりますが、通報先を慎重に検討しましょう。

ただ、行政機関、報道機関他の外部への通報を検討する場合、保護要件との関係もあります。

このようなケースでは、弁護士に相談することが必須です。

6、内部通報の前に弁護士へ相談を

通報の内容が公益法通報者保護法の要件に該当するかを判断すること、また、内部通報の内容に合わせて通報先を慎重に選ぶことが大切であることがお分かりいただけたことと思います。

通報先を会社にすれば法律上の保護は受けられますが、果たして会社に通報して変化が期待できるのか、その観点からの想像力も非常に重要です。

先に申しあげたように実質的な報復人事などで対応されかねません。

1人で行動することはお勧めできませんが、社内の人間で話し合うことが難しいデリケートな問題であることも多いでしょう。

「お前は上司を売るつもりなのか」といわれかねませんし、そもそも同僚たちが不正の共犯者であった、といったことも現実にはあるのです。

いわんや、組織全体にわたる不正の場合には、会社全体を敵に回す、ということにもなりかねません。

そんなときは、どうぞ弁護士までご相談ください。

あなたにとってのリスクを回避することはもちろん、会社にとってどのように対応することがベストなのか、法的な観点から弁護士がともに考えます。

社外の専門家として、社内のしがらみにとらわれずに冷静で客観的な判断もできます。

「どのように行動するにしても、まず社外専門家の意見も聴いてみよう」そう考えてみてはいかがでしょうか。

ご自身では思いもかけなかった様々なアドバイスが得られるでしょうし、会社との紛争になったときには適切にサポートしてくれます。

あなたの正義感は、とても貴重なものです。

しかし、正義感だけで行動するのは、取り返しのつかないリスクも生みかねません。

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする専門家です(弁護士法1条1項)。

不正をただす最強の味方となるでしょう。

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