5歳6カ月で小児がんで亡くなった長女。一変した家族の生活を救ってくれたのは「グリーフケア」との出会いだった【脳幹グリオーマ体験談】

5歳6カ月で小児がんで亡くなった長女。一変した家族の生活を救ってくれたのは「グリーフケア」との出会いだった【脳幹グリオーマ体験談】

本日11月23日は、「グリーフを考える日」に昨年記念日協会に登録されました。グリーフカウンセラーの資格を持つ看護師の島田理絵さんには、2人の子どもがいます。第2子の沙紀ちゃんは、4歳のときに小児がんの小児脳幹グリオーマと診断され、5歳6カ月で天国に旅立ちました。理絵さんに、沙紀ちゃんの闘病やグリーフケアを学ぶきっかけについて聞きました。
全2回インタビューの後編です。

夫は介護休暇を取得し、家族と大切な時間を。5歳6カ月でお空に

沙紀ちゃんが小児がんの小児脳幹グリオーマと診断されたのは4歳の秋のことです。診断されたとき医師からは『治療法が確立されておらず、陽子線治療を受けても一時的な延命にしかならない。ほとんどの子が1年以内に亡くなってしまう』と告げられました。
陽子線治療とは、放射線療法の1つで、がん細胞のみをピンポイントで狙い撃ちできるため、ほかの正常な細胞へのダメージが少なく、副作用が軽く済む治療です。沙紀ちゃんは、この治療を自宅から遠く離れた大学病院で受けていました。

「夫ともしっかり相談し、奇跡を願って取り組んだ治療でした。しかし沙紀のがん細胞は髄液に広がり、脳室や脊髄にもがん細胞がバラバラと広がってしまったんです。
医師から『沙紀ちゃんと、ご家族で1日、1日を大切に過ごしてはどうでしょうか』と言われ、沙紀は訪問看護を受けながら自宅で過ごすことになりました。会社員の夫も介護休暇をとって、残された時間を一緒に過ごすことにしました。“公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を”などの協力を得て、新潟でチェアスキーを体験させてもらったりもしました」(理絵さん)

しかし、病気は進行していきました。

「闘病中にお世話になった方、みんなにあいさつができるように配慮したタイミングで、沙紀はお空に旅立ちました。優しくて、思いやりがある性格の沙紀らしい最期だったと思います。私も家族も『大好き!』という気持ちを沙紀に何度も伝えました」(理絵さん)

沙紀ちゃんを亡くして、何も考えられない日々

沙紀ちゃんがお空に旅立ってから、理絵さんは周囲との連絡を絶ちました。

「今、振り返ればあのときの私は、心にかたくふたをしていたような感じでした。心配してメールやLINEをくれる友だちには『心配してくれてありがとう。元気になったらまた連絡するね』と返信するのが精いっぱい・・・。自分たち家族と世間との間に大きな隔たりを感じてしまい、自分たち家族だけ取り残されたような気持ちになり、周囲の人とおつき合いができませんでした」(理絵さん)

そんな理絵さんの心を支えてくれたのは、息子と愛犬の存在です。

「‟つく”とは、沙紀が治療を受けていた地で出会いました。そこでは楽しい思い出もたくさんあり、陽子線治療を選んだことにまったく悔いはないです。そしてつくのお母さんにひょんなことで会いに行くことになったときに、ブリーダーさんに『つくの妹が生まれたけど見る? 同じパパ・ママ犬から生まれる子は、この子が最後よ』と言われました。それを聞いて、つくの本当の妹である‟うらり”を家族に迎えることを決めました。
うらりは、元気で甘えん坊でなんとなく沙紀に似ているんです。つくとうらりがじゃれて遊んでいると、長男と沙紀が仲よく遊んでいたことを思い出します」(理絵さん)

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