5歳6カ月で小児がんで亡くなった長女。一変した家族の生活を救ってくれたのは「グリーフケア」との出会いだった【脳幹グリオーマ体験談】

5歳6カ月で小児がんで亡くなった長女。一変した家族の生活を救ってくれたのは「グリーフケア」との出会いだった【脳幹グリオーマ体験談】

沙紀ちゃんが旅立ってから2年がたち、知人のすすめでグリーフケアを学ぶ

心にぽっかり穴があいたような状態で看護師の仕事を続けていた理絵さんですが、グリーフケアと出会います。

「沙紀が亡くなって2年ぐらいがたったころ、知人から『グリーフケアって知ってる? 今の理絵さんにとっていい学びになるんじゃないかな?』と言われたんです。沙紀が亡くなって3カ月ほどで訪問看護の仕事を始めたのですが、それは働いているほうが哀しみにふたができたし、沙紀が私に残してくれたこと、教えてくれたことを無駄にしたくないという気持ちが大きかったためです。

また沙紀は元気だったころ『ママのお仕事、応援するね』とよく言ってくれていたんです」(理絵さん)

グリーフケアは大切な人やものを失った悲嘆を抱える方に、同行者として寄り添う支援です。

「しだいにグリーフケアを学んで仕事に活かしたいと思うようになり、日本グリーフ専門士協会の講座を受けようと思いました。グリーフケアを学んだら、私自身も何か変われると思いました」(理絵さん)

グリーフケアを学び、哀しみ、怒りも、何もできない自分も・・・受け入れられるように

理絵さんはグリーフケアを学ぶ中で、大切な沙紀ちゃんを失ったことで生じた、あらゆる感情と向き合うことの連続でした。

「自分の感情と向き合うことができず、情けなく感じて、やめたくなることもありました。しかし、グリーフケアの学びの中で、仲間とお互いの喪失体験を語り合う時間を重ねていくうちに、大切な話を聴かせてもらったり、私の気持ちを大切に聴いてもらったりする経験を繰り返しました。その中で『哀しみ、怒りなどのネガティブな感情に押しつぶされそうになる弱い自分も、すべてが大切な私の一部であること』『哀しみは、お空の娘とつながる大切な感情である』と気づけるようになったのです。
私が『自分はダメなママだ』と落ち込んでいると、沙紀は『ママはママのままでいいんだよ』と慰めてくれる子でした。グリーフケアに出会い、今なら沙紀の言葉の意味を深く理解できるように思います」(理絵さん)

理絵さんは、グリーフカウンセラーの資格を取得し、グリーフサポートIERUBAでカウンセラーとして活動を始めました。そして2024年8月には、大切な故人への想いを語れる場として、神奈川県相模原市で「グリーフケア Cafe つむぐ」の活動を始めました。

「グリーフケアに出会って、沙紀が亡くなってからかたく閉じていた私自身の心のふたをやっと開けることができました。息子には、ママが心にふたをしていたから、君も心にふたをしちゃったよね。ごめんね』という気持ちでいっぱいです」(理絵さん)

沙紀ちゃんを亡くしてから深い哀しみに包まれていた理絵さんの夫も「自分にも何かできたら・・・」と考えるようになったそうです。

「夫は、もともとランニングが好きなので、こどもホスピスのチャリティーランナーなどを務めています。私たち家族はかなりの時間が必要でしたが、今、家族が一歩ずつ自分の人生を歩き出しました。

沙紀は今でも天国で『ママのお仕事、応援するね』と言ってくれていると思います。いつかお空で沙紀と再会したときに『ママ、頑張ったね』と言ってもらえるような人生を歩みたいと思っています」(理絵さん)

お話・写真提供/島田理絵さん 協力/一般社団法人 日本グリーフ専門士協会 グリーフサポートIERUBA(イエルバ) 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

■グリーフサポートIERUBA(イエルバ)
https://www.ieruba.jp/

■グリーフケアcafe つむぐ
https://cafetsumugu.my.canva.site/

沙紀ちゃんが天国に旅立って6年がたちました。インタビューのとき家族構成をうかがった際、「夫、長男、沙紀、私の4人家族です」と答えた理絵さん。今でも沙紀ちゃんが好きだったお花やハートのものを見るたび「沙紀、かわいいね!」と話しかけているそうです。理絵さんは「哀しみは忘れたり、消すものではなく、大切に抱えていくもの。グリーフケアと出会い、哀しみとのつき合い方を見つけられた」と言います。

「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年10月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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