「あれ?指が…」生まれてすぐに判明した障がいに頭が真っ白に…【先天性絞扼輪症候群(せんてんせいこうやくりんしょうこうぐん)体験談】

「あれ?指が…」生まれてすぐに判明した障がいに頭が真っ白に…【先天性絞扼輪症候群(せんてんせいこうやくりんしょうこうぐん)体験談】

生まれつき「先天性絞扼輪症候群(せんてんせいこうやくりんしょうこうぐん)」という障がいがあるりあちゃん(9歳・小学3年生)は、手指や足指に、ひもで縛ったようなくびれがあり、一部の指がくっついた「魔法の手」の持ち主。大変なことや嫌な思いをすることもあるけれど、持ち前の明るさと器用さで何だってできちゃうスーパーガールです。そんなりあちゃんとママは、この個性についてたくさんの人に知ってもらいたいと、YouTube「たらこ3姉妹」で動画を発信しています。今回はりあちゃんと双子の妹の母親である、たらこ3姉妹ママさんに、障がいのことや日常のこと、YouTube発信に込めた思いなどを聞きました。全2回インタビューの前編です。

産後すぐに娘を胸に抱いたとたん、モヤモヤしていた不安が一気に吹っ飛んだ

「先天性絞扼輪症候群」という障がいを知っていますか? 読むのも難しいこの障がいは、指や腕などにひもで縛ったようなくびれがあったり、複数の指がくっついていたりするもので、指が欠損している場合も。赤ちゃんがおなかにいるときに羊膜(ようまく)の一部が絡まることが原因で起こると考えられています。

現在、小学3年生で9歳になったりあちゃんも、生まれてすぐこの障がいであることが判明しました。

「妊娠がわかったのは、私が20歳のときでした。生理不順だったということもあり、妊娠に気づくのが遅くて、気づいたときには信じられなくて。おなかが大きくなるにつれて、生まれてくるのが楽しみで楽しみでしかたなかったです。

妊娠中期くらいまでは順調だったので、安定期に入ったらやる気満々でたくさん歩いていたんですが、妊娠7カ月くらいに子宮頸管(けいかん)が短くなって、自宅安静ののち入院。24時間点滴をしながら何とかおなかにいてもらい、36週と6日で出産しました。

出産した産院では、生まれたばかりの娘が体重を測ったりしている様子がモニターで見られるようになっているんですが、そのときに娘の指の様子に気づいたんです。『大丈夫かな?痛いんかな?どうしよう』って、ずっと頭の中に不安と心配がめぐっていたところに、医師が現れて、『こういう状態で生まれました』と教えてくれました。

ただ、生後すぐ赤ちゃんをママの胸に乗せて行うスキンシップ(早期母子接触)をさせてもらったときに、娘の体がすごく温かくて。モニター越しに見て感じていた不安が、その瞬間は吹っ飛んで、自然に『ありがとう』という言葉がでました」(たらこ3姉妹ママさん)

生まれたばかりの赤ちゃんのぬくもりを感じ、無事に出産した喜びをかみしめていたとき、モニター越しに見て不安に思っていたことについて、医師から説明がありました。

「先生から娘の状態についての説明を聞いた途端、一気に涙が出たことを覚えています。ただ、それ以外は何も考えられなくて、頭が真っ白という状態。健診でもわかっていなかったし、先生もびっくりされているようでした。

生まれて2~3日目だったでしょうか。娘のケースが珍しいこともあって、心臓や内臓に異常がないかを調べてもらうため、産院から紹介された大きな病院に検査に行きました。産後すぐのことで大変ではありましたが、とにかく娘のことが心配だったので、自分の体のことなど言っていられませんでしたね。

検査の結果としては、手足の指以外はとくに問題は見られないと言われ、少しホッ。産後の入院期間もとくに長びくことはなく、娘と一緒に退院することができました」(たらこ3姉妹ママさん)

退院後は、同じ県内の実家に里帰り。そこで、りあちゃんとの生活がスタートしました。そして、1歳になったころ、りあちゃんは手術を受けることになります。

「左右の手、どちらとも指がくっついている箇所があったので、それをはがすという手術と、右足首にあった輪ゴムでしばったような跡を平らにするという手術です。

といっても、左手の指は中指・薬指・小指が複雑にからんでいて、医師からその部分は手術のリスクが高いと言われ、私たちも手術で使いやすい指になる想像ができなかったので、手術には踏み切れませんでした。

なので、その部分はまだくっついたままですが、左手の親指や人さし指など、くっついたままだと、今後、生活面で不自由さが出てくるかなという部分を切り離す手術をしました。手術はこの1度きりです。

先天性絞扼輪症候群にもいろいろなケースがあるので、娘の場合はということにはなるんですけれど、娘は障がいがあっても生活面で特別困るようなことはほとんどなかったんです。本人の器用さもあるかもしれませんが、赤ちゃんのころの手づかみ食べも、右手でも左手でもやっていましたし、これができないということもとくにありませんでした。

だからこそ、私たちは、娘の障がいを『少し大きな見た目の違い』と考えています。

たとえば、私たちは人によって目の大きさが違うとか髪質が違うとか、背が高い低いとか、そういう見た目の違いがありますよね。それの大きいバージョンという感じ。見た目だけの違い、個性のひとつという感じととらえていますし、娘にもそう話しています」(たらこ3姉妹ママさん)

「もしかしたら…」妊娠ごく初期に遭った事故。あれが原因だったのかもしれない

現在のところ、先天性絞扼輪症候群になる原因ははっきりとはしていませんが、内因的要因が原因とされる説と、外因的要因が原因とする説の2つがあるそう。外因的要因は、赤ちゃんがおなかにいるときに、衝撃などで羊膜が損傷され、繊維性のものが赤ちゃんの体に巻き付いてできるというものです。この話を、産後入院中に検査に行った病院の医師に聞かされたたらこ3姉妹ママさんは、あることを思い出したと言います。

「医師から『妊娠中に何か大きな衝撃を受けると、子宮内の繊維がバラバラになってしまって、それがまだ手足を形成中の赤ちゃんに絡まってしまい、絞扼輪ができることがあるんです。何か心当たりはありますか?』と言われて、すぐに思い浮かんだことがありました。

実は、娘の妊娠のごく初期、自分が妊娠していることにも気づいていない時期に、職場の人の車の助手席に乗っていて、赤信号で停車中、後ろから飲酒運転の車にノーブレーキで突っ込まれるという事故に遭ったんです。

幸い、私にも運転していた職場の人にも、相手方にも大きなケガはなかったんですが、事故の衝撃はものすごいものでした。だから、医師に話をされたとき、あの事故が原因だったのかなと思ったんです。

確かに、事故後、車から降りたときになんだかすごく足が震えて、自分の中で何かが壊れていくような不思議な感覚がしたんです。私、あまりそういったことで泣くようなタイプじゃないんですが、このときは珍しくしゃがみ込んで泣きました。

あのときの不思議な感覚だけは、今でもものすごく覚えているんですよね。とくに痛いところがあるわけじゃないのに、怖くて不安で涙が止まらなかったんです」(たらこ3姉妹ママさん)

たらればを考えてもしかたないことではありますが、あの事故がなかったら、相手がお酒を飲んで運転していなければ、りあちゃんに必要以上の苦労や、嫌な思いをさせることはなかったのかもしれない――。そう思ってしまうのは当然です。

「すごく大きい事故だったので、それでも生まれてきてくれたことに、ありがとうと娘には感謝しています。娘が生まれてきて、そこから私は本当に幸せになれたと思う。

この事故が先天性絞扼輪症候群の原因かもしれませんが、もしかしたらこの事故で娘が私のことを守ってくれたのかもしれない、とも思います。もちろん、最初は事故を起こしてきた人のことを恨んだこともありますが、今はもうそんなことを思ってなくて、事故がなければ今の娘はいなかったのかもしれない。そう考えると、その人のことだけを責める気持ちにはならなくなりました。

それに、本人にとっては、生まれたときからずっとこうだから、この状態が当たり前だと思っているみたいです。苦労とも思ってないんだと思います。

箸(はし)だって、はさみだって、だれだって最初は使うのが難しいけれど、繰り返し練習して使えるようになるように、娘も同じように自分の手で習得する。まわりは心配するけれど、本人はみんながやっているように、自分も練習してできるようにするだけで、同じ感覚なんですよね。

いろいろな場面で、娘の手を見た人に『できないんだろうな』って決めつけられてしまうことがあって、それはしかたないことではあるんですが、娘は純粋に生きているなってすごく感じます」(たらこ3姉妹ママさん)

お話・写真提供/たらこ3姉妹ママさん 取材・文/酒井有美、たまひよONLINE編集部

動画配信では、とびっきり明るい笑顔とはちゃめちゃで楽しい家庭の様子を見せてくれるりあちゃんとママ。しかし、妊娠中や出産直後のママは、計り知れないほどの不安を抱えていました。ただ、現実を受けとめ、まずはりあちゃんをどう支えていくかにシフトしていったママの愛情が、今のりあちゃんの笑顔につながっているのだなと感じます。後編では、成長していく過程でみんなとの違いに気づいたり、周囲の友だちに心ない言葉をかけられたりしたとき、りあちゃんの気持ちをママ・パパはどう支え、寄り添ったかなどについて聞きます。

「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指して様々な課題を取材し、発信していきます。

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