胃がんの手術・内視鏡治療の費用相場
胃がんの手術にはさまざまな術式があります。がん細胞の浸潤部位・範囲や転移の状況、長時間の手術に耐えられる体力があるかなどで術式を選択することが必要です。胃がんの術式と料金を以下で解説します。
なお、記述している料金は医療保険適用前の金額(10割)です。
胃全摘術
噴門(胃の上側の入口)と幽門(胃の下側の出口)を含む胃全体を切除し、食道と小腸をつなぎ合わせる術式です。1,600,000〜2,000,000円程度かかります。
なお、開腹手術より腹腔鏡手術の方が費用が安くなりますが、それぞれのメリット・デメリットがあるため手術時は主治医と相談となるでしょう。
幽門側胃切除術
噴門部ががん細胞に浸潤されていない場合の一般的な手術方式です。幽門を含めた胃下部約3分の2を切除し、残った胃は十二指腸か小腸とつなぎ合わせます。幽門側胃切除術と後述する幽門保存胃切除術・噴門側胃切除術は、胃切除術という手術の分類になり、違いは切除する部位です。
そのため料金が大きく変わることはなく、下記の二つの術式については料金の記載を省略します。胃切除術の料金は500,000〜650,000円程度です。
幽門保存胃切除術
幽門・噴門から離れた部位にがん細胞がある場合に適用される術式です。噴門・幽門は残して間の部分の胃を切除し、残った胃をつなぎ合わせます。
胃の出入り口を残すため、胃切除による合併症は起こりにくいとされていますがゼロではありません。また、部分的な切除になるため再発のリスクが高く、術後も定期的な内視鏡検査を必要とします。
噴門側胃切除術
胃の上部や食道と胃の境目にがん細胞がある場合に適用される術式です。噴門を含めた胃の上部半分未満を切除します。この術式では食道と残った胃をつなぎ合わせてから間に逆流防止の弁を作る方法と、小腸を食道と胃両方につなぎ合わせ食事の通り道を2つ作る再建方法があります。
再建手術
切除した消化管を、再び機能するようつなぎ合わせる工程を再建手術と呼びます。消化管は口腔から肛門まで1つの管になっていないと機能しません。
胃を切除することと、切除した部位を何らかの形で管状に戻すことは必ずセットになっています。したがって再建手術の料金も上記手術料金に含まれています。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
胃以外の臓器やリンパ節への転移がなく、がん細胞が粘膜層で止まっている場合は内視鏡治療が適用となります。EMRはループ状のワイヤーを腫瘍にかけて高圧電流を流す術式です。EMRはワイヤーのサイズの関係で2cm以下のサイズの腫瘍に適用となります。EMRにかかる手術費は250,000円前後です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
ESDは高周波電流を流せる特殊なメスで腫瘍を切除する術式です。EMRと同じ内視鏡治療となりますが、メスを使用する特性から腫瘍の大きさに制限がないのがEMRとの大きな違いになります。ESDにかかる手術費は570,000円前後です。
胃がんの手術以外の治療の費用相場
がん組織の浸潤範囲が少なかった場合や手術に耐えられる体力がないと判断された場合は、手術が適用されないこともあります。また、手術をする場合でも手術前後にほかの治療法を組み合わせることもあります。
薬物療法
抗がん剤を点滴もしくは内服します。使用する薬剤が先発品か後発品か、保険適用の有無により、大きく金額が変わってくるでしょう。オキサリプラチンという胃がん治療でよく使われる抗がん剤を成人に使用する平均的な量(150mg)点滴投与した場合、一回で14,500円程度かかります。
放射線治療
胃がんで用いる放射線治療は補助的な役割が大きいです。根治目的はもちろん、食物通過不良や痛みなどの症状緩和目的で用いられることがあります。診察や検査に関する費用を除き一回700,000〜1,400,000円程度かかります。
緩和ケア・支持療法
緩和ケア・支持療法とは、がんによる身体的および精神的な痛みや苦痛を和らげるための治療です。身体の痛みに限らず精神的な辛さや社会的な困りごとも支援します。
緩和ケアと聞くと末期の患者さんが受ける治療を想像する方も少なくありませんが、がんと診断されたときから適用される治療です。緩和ケア・支持療法の定義は広く、かかる料金もさまざまですが、緩和ケア病院に1ヶ月入院となった場合にかかる費用は1日51,000円程度です。
配信: Medical DOC