股関節唇損傷の治療
股関節唇損傷の治療は、保存療法と手術の2つに大別されます。
保存療法
保存療法では消炎鎮痛薬などの薬物療法と、運動療法や物理療法をおこないます。痛みが強い時期にはスポーツなどの股関節へ負担がかかる活動を中止し、安静にすることも重要です。
特に股関節唇損傷を引き起こす臼蓋形成不全や大腿骨寛骨臼インピンジメントでは股関節周りの筋力強化やストレッチが重要と考えられています。股関節前方やお尻の筋肉の筋力強化・ストレッチ、関節可動域拡大運動は股関節唇への負担を軽減させる効果が期待できます。
手術療法
保存療法で痛みの緩和が得られない場合、関節鏡による股関節唇の修復・除去手術をおこないます。関節鏡手術は切開する皮膚の範囲が小さいうえ、痛みの軽減やスポーツ復帰に効果的です。しかし股関節唇の除去による痛みの軽減効果は短く、長期的には股関節の不安定性が強くなる可能性も示唆されています。
股関節唇損傷になりやすい人・予防の方法
股関節唇損傷になりやすい人は以下に挙げる特徴を持っています。
寛骨形成不全
激しい股関節運動を伴うスポーツをする
寛骨形成不全では股関節の一部分にかかる荷重が増えやすく、激しい運動は股関節にかかる負担が大きくなります。
股関節唇損傷を予防するためには、股関節周囲の筋肉を鍛えることと、ストレッチをして股関節の柔軟性を高めることが重要です。
股関節周囲の筋力強化をすることで股関節の安定性が高まり、骨盤と大腿骨の動きが滑らかになって股関節のインピンジメントや股関節唇損傷が起こりにくくなります。
また、ストレッチによって股関節の柔軟性が向上することも、股関節の可動域が広くなり、股関節にかかる負担が軽減されます。狭い可動域では股関節の一部分に過剰な負担がかかり、股関節唇損傷が起こりやすくなるため、ストレッチによって股関節の可動域を広げることが股関節唇損傷予防に効果的です。
関連する病気
大腿骨寛骨臼インピンジメント
寛骨臼蓋形成不全
参考文献
星野裕信 股関節唇損傷に対する股関節鏡視下手術の適応 日関病誌 34巻2号 2015
日本股関節学会ニュースレター2015年9月創刊号
廣津匡孝 et al 関節鏡視下切除術にて症状改善を認めた股関節唇損傷の1例 整形外科と災害学会 57 巻1号2008年
平尾利行 et al 臼蓋形成不全による二次性変形性股関節症患者に対し 理学療法を施行した際の経過分析 理学療法学 第49巻 第4号2022年
配信: Medical DOC
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