実年齢より老けてみえる「ウェルナー症候群」 実は日本人に多い疾患なのをご存知ですか?

実年齢より老けてみえる「ウェルナー症候群」 実は日本人に多い疾患なのをご存知ですか?

監修医師:
井林雄太(田川市立病院)

大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

ウェルナー症候群の概要

ウェルナー症候群は大変珍しい遺伝性の病気です。ドイツの医師オットー・ウェルナーが1904年に初めて報告したことからこの名前がついています。
思春期以降に、白髪や白内障、手足の筋肉や皮膚の衰えなどのさまざまな老化現象がみられ、実年齢より老けてみえる早老症の一つで、指定難病に認定されています。
かつては合併症のがんや心筋梗塞などにより40歳半ばで亡くなる方がほとんどでした。現在では、医療の進歩により寿命が延び、50〜60歳代の方もいらっしゃいます。
日本のウェルナー症候群の患者数は約2,000名で、病気になる確率は大体5〜6万人に1人と推定されています。また、世界の中でも特に日本人に多い病気で、患者数は日本人が6割です。
ウェルナー症候群の原因となる遺伝子は分かっていますが、どのようにして発症し、なぜ老化が早く進むのかはいまだ解明されていません。そのため、根本的な治療も分かっておらず、多くの患者さんが難治性皮膚潰瘍に伴う足の切断や、がん、糖尿病などを患い、重篤な後遺症や生命の危機に苦しんでいます。

ウェルナー症候群の原因

ウェルナー症候群は両親から遺伝したWPNという遺伝子の異常が原因で起こる病気です。この章では、ウェルナー症候群の遺伝的メカニズムと患者さんの家族における発症リスクについて、具体的に解説します。

WPN遺伝子

ウェルナー症候群は遺伝性の病気であり、WPNと呼ばれる遺伝子の異常が原因と考えられています。
WPN遺伝子は自分のDNAが傷ついたときに修復する働きがある遺伝子です。ヒト1人に対し2つある遺伝子で、両親から1つずつ遺伝します。遺伝した2つのWPN遺伝子の両方に異常があるときにウェルナー症候群を発症するのです。
以前は血縁が濃くなる近親婚の多い地域で報告されていましたが、最近では近親婚でない患者さんも増加傾向にあります。
また、食べ物や運動などの生活習慣は、ウェルナー症候群の原因とは関係がないと考えられています。

家族が発症するリスク

患者さんの両親はそれぞれ1つだけ原因となる遺伝子を持っていますが、1つなので発症しないことがほとんどです。また、患者さんの兄弟姉妹で発病する確率は、約4人に1人です。そのほか、患者さんの子どもが発症する確率は200〜400人に1人以下であり、可能性としてはとても少ないとされています。

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