ウェルナー症候群の前兆や初期症状について
ウェルナー症候群は白髪や脱毛、白内障などの老化現象が症状として特徴的です。また、合併症には糖尿病や、死因の要因となりやすいがんや動脈硬化症などがみられます。具体的には次の通りです。
前兆や症状
ウェルナー症候群では20歳以降に、白髪や脱毛などの髪の毛の変化や白内障、かん高いかすれた声などの症状がみられます。ほかにも、手足の筋肉や皮膚が痩せて硬くなったり、足先や肘などに深い傷ができて治りにくくなったりする症状(難治性皮膚潰瘍)がみられます。これらの症状を繰り返すことで、足の切断が必要となる方も少なくありません。
そのほかの症状として、低身長であるケースも多いとされています。
合併症
ウェルナー症候群にみられやすい合併症には、糖尿病や動脈硬化症、がん、性腺機能低下症などがあります。とくに動脈硬化症やがんは命の危険に関わってくる可能性があるため、注意が必要でしょう。
ウェルナー症候群を相談できる施設や診療科
ウェルナー症候群はとてもめずらしい病気であるため、実際に診療経験のある医師や医療機関は限られています。
現在、遺伝子検査を含めた詳しい診断や診療を行っているのは千葉大学の糖尿病・代謝・内分泌内科です。そのほか千葉大学が連携している名古屋大学、奈良県立医科大学、東京都健康長寿医療センターなどが診療実績があります。
また、千葉大学のホームページには2023年時点でのウェルナー症候群の診療経験がある医療機関のリストが掲載されています。
ウェルナー症候群の検査・診断
ウェルナー症候群の検査ではレントゲン検査や遺伝子検査を行います。また、ウェルナー症候群は症状をもとにした診断基準があります。必要であれば鑑別診断も行っており、これらの具体的な詳細は以下の通りです。
検査所見
ウェルナー症候群ではレントゲン検査でアキレス腱の石灰化が特徴としてみられます。石灰化とはカルシウムが蓄積している状態です。石灰化はアキレス腱だけでなく、手や足、膝や肘などさまざまな場所でみとめられるケースもあります。また、石灰化が起こるメカニズムについては今のところ解明されていません。
また、ウェルナー症候群の治療に詳しい施設では、WRN遺伝子の異常を発見するために遺伝子検査を実施することもあります。
診断基準
ウェルナー症候群には診断基準があります。
10歳から40歳までに現れた主要兆候の全てが当てはまった場合、もしくは3つ以上が当てはまり、遺伝子検査でWRN遺伝子の異常があることが分かった場合に確定診断されます。
主要兆候は以下の通りです。
白髪や脱毛などの早老性毛髪変化
両目の白内障
皮膚の萎縮・硬化、潰瘍形成
軟部組織の石灰化(アキレス腱等)
鳥様の顔立ち
また、早老性毛髪変化と白内障に加えて、ほかの主要兆候や以下の兆候から2つ以上が当てはまった場合は、ウェルナー症候群の疑いと診断されます。
音声の異常(かん高いしわがれ声)
糖、脂質代謝異常
骨の変形などの異常(骨粗鬆症など)
非上皮生腫瘍または甲状腺がん
血族結婚
早期に現れる動脈硬化(狭心症、心筋梗塞など)
原発性性腺機能低下
低身長および低体重
鑑別診断
同じ早老症で指定難病でもあるハッチンソン・ギルフォード症候群やロースムンド・トムスン症候群との鑑別診断も行われます。どちらも日本での発症がまれな病気で、一般的にウェルナー症候群より早く、若い世代で発症することが特徴です。
配信: Medical DOC