顔面神経麻痺の治療
顔面神経麻痺は、発症から3日以内の受診が、完治するか後遺症が残るかのわかれ道になる重要分岐点と考えられています。
治療は、まず原因を調べることが重要です。原因が判明すれば、原因に対する治療を行うとともに、麻痺に対する治療を早期に行います。
薬物療法
ベル麻痺とラムゼイハント症候群の主な治療は、神経の炎症やむくみを抑えるステロイドホルモン剤と、単純ヘルペスウイルス・水痘帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬による薬物療法を行います。
発症後3日以上経ってからでは治療効果が下がるので、発症したら早期の耳鼻咽喉科受診が必要です。患者さんの状況に応じて入院での点滴・外来通院での点滴・内服加療を行います。
リハビリ療法
後遺症を軽減するために早期よりリハビリ指導やストレッチを行います。顔面神経麻痺のリハビリは筋力を強化する目的ではなく、顔面の不自然な動き(病的共同運動)やひきつれ(顔面拘縮)などの後遺症を予防する目的で行います。
焦らずじっくり行うことが重要で、やり過ぎや低周波刺激などの電気刺激は顔面のひきつれを助長するため禁忌です。
手術療法
薬物療法で症状の改善がみられない場合は、顔面神経減荷術を行います。顔面神経減荷術は、側頭骨のなかにある、炎症などでむくんだ顔面神経を包んでいる骨を削って除圧する手術です。
発症後1ヵ月以内の施行が望ましいといわれています。麻痺の後遺症が残ることもあり、必要時は形成外科と連携して整容改善手術を行います。
ボツリヌストキシン注射
顔の表情の左右差・顔面拘縮・病的共同運動などの、顔面神経麻痺の後遺症に対しては、ボツリヌストキシン注射での治療が有効です。
細かな表情の微調整が可能なため、中~軽症の不全麻痺・拘縮・病的共同運動が改善する効果が期待できます。ボツリヌストキシン注射の効果は3~5ヵ月すると消えるため、年に2~3回繰り返して行う必要があります。
顔面神経麻痺になりやすい人・予防の方法
顔面神経麻痺の多くは、ウイルス感染や神経に潜伏しているウイルスの活性化によって引き起こされます。
ウイルスから体を守るためには免疫が関係しており、日頃から免疫を保つ、もしくは免疫をあげる生活を心がけることが重要です。
顔面神経麻痺になりやすい人
過労やストレスの蓄積が原因で免疫が低下している人は、ウイルスの再活性化を引き起こしやすく、顔面神経麻痺を発症しやすいと考えられています。糖尿病・免疫不全症・免疫抑制剤治療中の患者さん・がん患者さんも、ウイルスの再活性化が起こりやすいです。
水疱瘡(水ぼうそう)の既往がある人も、年齢とともに免疫が低下するため帯状疱疹の発症率が上昇します。日常生活で急激なストレスを受けた際は、顔面神経麻痺を引き起こしやすいため注意が必要です。マダニに噛まれて細菌が身体に入って起こるライム病も顔面神経麻痺を引き起こします。
山や草むらで作業をする人も発症しやすい環境なので注意が必要です。
顔面神経麻痺の予防
顔面神経麻痺の予防は、ウイルスの再活性化を防ぐことが重要です。ストレスを溜めない・適度に休息するなどして、免疫を低下させない生活を心がけましょう。普段から健康診断を受け、持病を把握しておくことも大切です。
水痘帯状疱疹ウイルスにはワクチンがあります。一方でワクチン接種には副反応もあり、稀に重篤になることもあります。ワクチン接種による予防はメリットとデメリットを天秤にかけて検討しましょう。
山や草むらに入るときは、長袖・長ズボンを着用し、マダニから身を守る工夫が必要です。顔面神経麻痺の症状は、ある日突然起こります。発症後に受診せず様子をみてしまうと、治療開始が遅れ後遺症を残す可能性が高まります。症状がみられた場合は、すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
※この記事はメディカルドックにて【顔面神経麻痺】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC
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