毎年冬になると、連日のようにインフルエンザの流行が話題になり、気になる方も少なくないのではないでしょうか。そんな流行の原因となるインフルエンザウイルスは、A型・B型・C型と3つの型があります。
なかでも症状が強く出やすく話題になるのは、A型とB型です。区別なくインフルエンザウイルスとまとめられることが多いですが、それぞれ異なった症状や特徴があります。
ここではインフルエンザウイルスA型をB型との違いも含めて症状や治療法、予防方法を詳しく説明します。
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監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。
インフルエンザA型の症状
インフルエンザA型の特徴を教えてください。
A型・B型・C型のインフルエンザウイルスがあるなかで感染力が強く、重症化しやすいのがA型の特徴です。また、変異を起こしやすいのも特徴で、毎年12月〜3月にかけて起こる新型インフルエンザ流行の原因にもなっています。数年に一度の大流行も新型インフルエンザによるもので、1918年に世界中で2,300万人以上が死亡したスペインかぜが代表例です。動物にも感染し、鳥インフルエンザもA型による感染症です。そのため人から人への感染だけでなく、感染した鳥や豚を食べたり、触れたりすることでも感染してしまいます。
インフルエンザA型の症状を教えてください。
高熱が出やすく、1〜3日の潜伏期間の後に38度以上の発熱が起こりやすくなります。ひどいときには40度の発熱が起こることもあるでしょう。咳も出やすく、全症例の80%以上にみられます。全身倦怠感・頭痛・寒気・筋肉痛・鼻水・食欲不振などの症状もみられるでしょう。65歳以上では嘔吐がみられることもあります。また、免疫能が低い高齢者や乳幼児、妊婦が感染すると肺炎や気管支炎などの重篤な合併症を引き起こしやすくなるでしょう。
インフルエンザB型の症状とどのような違いがありますか?
一般的にインフルエンザA型の方が、B型よりも38度以上の高熱が出やすくなります。一方で、15歳以下では大きな差はなく、A型とB型のどちらに感染した場合も高熱がみられます。ほかの症状を比較すると全身倦怠感や頭痛や鼻水、食欲不振に大きな差はありません。しかし、悪寒や筋肉痛はA型の方が出現しやすくなります。また、年齢差による症状の出現頻度はA型・B型に大きな違いはありません。
風邪の症状とどのような違いがありますか?
風邪は鼻水や鼻づまり、喉の痛みや咳が一般的で、熱が出ても38度以上の高熱は出にくく局所的な症状が発現しやすいです。一方インフルエンザに感染すると倦怠感や筋肉痛、38度以上の高熱が数日続くことが多く、全身的な症状が出やすくなります。これらの症状が、風邪では数日かけてゆっくり発症するのに対し、インフルエンザでは急激に発症する点でも違いがあります。また、風邪では合併症を起こす確率が低く、免疫能が低いでも症状は軽く済む場合が多いでしょう。
インフルエンザA型の検査・治療方法
インフルエンザA型の検査を受けるタイミングを教えてください。
発症してから12時間〜48時間以内に検査を受けることが推奨されています。病院で行われる抗原検査キットは、インフルエンザのたんぱく質を検出し判定を出すためです。発症後すぐに検査を受けると、十分なたんぱく質量がないため偽陰性となってしまう可能性があります。12時間以内に検査をした場合、約20%の確率で偽陰性となったという報告もあるのです。一方で、検査が遅くなってしまうと、その分抗ウイルス薬の服用も遅くなってしまいます。抗ウイルス薬は発症から48時間以内に服用することで、発熱期間が1〜2日短縮される効果が期待でき、重症化を防ぐことができるでしょう。適切なタイミングで検査を受けることで、何度も通院する必要がなく、適切な処置を受けることができます。
検査にはどのくらいの時間がかかりますか?
抗原検査キットによる検査でしたら、10分程度で検査結果がわかるでしょう。早く結果がわかるだけでなく、90%程度の正確率と精度も高いのが特徴です。また、検査する分泌液は精度を高めるために鼻の奥を拭ったものを使用しますが、小児など難しい場合は奥まで入れずに検査する場合もあります。
インフルエンザA型の治療方法を教えてください。
自宅で安静にする一般療法や解熱剤を使う対症療法、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス薬を使用する治療方法があります。抵抗力の弱い方でなければ、抗ウイルス薬を使用しなくても十分な休息をとることで自然に改善するでしょう。ただ高齢者や乳幼児、妊婦など症状が重症化したり合併症を併発したりしやすい方は、受診時にその旨を伝え適切な治療薬を使用する必要があります。
どのような薬が使用されますか?
対症療法薬と抗ウイルス薬が使用されます。症状を改善するために使われる対症療法薬として、高熱に対する解熱剤を使用することが多いです。ただ、解熱剤によってはインフルエンザ脳症を引き起こすリスクがあるため、使用には注意が必要です。ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬として使われている薬には以下のものがあります(一般名も記載)。
タミフル(オセルタミビル):飲み薬
リレンザ(ザナミビル):吸入薬
イナビル(ラニナニビル):吸入薬
ラピアクタ(ぺラミビル):点滴
上記4つの薬剤は細胞内でインフルエンザウイルスが増殖したのち、細胞の外へ放出するのを抑えることでウイルスの増殖を抑える薬です。ほかの作用機序を示す薬にゾフルーザ(バロキサビル)があります。細胞内でウイルスが増殖するのを抑える効果を期待できるでしょう。これら5つの薬はA型とB型どちらのインフルエンザウイルスにも効果があります。また、服用方法が飲み薬や吸入薬などあるため、患者さんの状態や希望にあわせて選択されます。ただ、抗ウイルス薬は48時間以内の服用が推奨されているので注意しましょう。服用日数はそれぞれの薬で異なりますが、途中で熱が下がった場合も指示された日数を飲み切るようにしてください。途中で服用を止めてしまうと、抗ウイルス薬が効かない耐性菌(耐性ウイルス)の原因となってしまいます。
配信: Medical DOC