確固たるスタイルを確立しているおしゃれ業界人たちの、ラグジュアリーブランドとの向き合い方を教えてもらいました。歳を重ねて変わったことは? マイスタイルに欠かせないものとの出会いは? 選んだアイテムはもちろんですが、お買い物をする際の心意気も参考にしてみてください。
スタイリスト・金子綾さん
ふたりの娘に譲れるか。自己完結しない買い物に
スタイリスト・金子綾さん
ファッション誌をはじめ、カタログや広告、ブランドとのコラボレーションやディレクションなど、多方面で活躍。Tシャツの着まわし術をまとめたスタイリングブック『Tシャツ STYLING BOOK』(小学館)が即完するなど、その人気は底知れず。
「最近は昔よりもあれこれむやみやたらに買い物しないようになりました。素敵なものに出会ったときに、というスタンスは変わりませんが、ラグジュアリーブランドなどの高価なアイテムを購入するときは、ふたりいる娘たちに将来譲ることができるか、ということを基準に買い物することが増えた気がします。とはいえ、欲しいものは本能に従って買ってしまうことも多いですけどね(笑)。また、ロゴやグラフィックなど、いわゆるブランドが分かりやすいアイテムは自分のスタイルの方向性とはずれてしまうので、どうしても欲しいもの以外はできるだけ選ばないようにしています」
L’Appartementバイヤー・幸 佳代子さん
スタイルにマッチするものをタイミングが合ったときに
ベスト¥50,600(リジエール)、デニム¥35,200(グッド グリーフ)、シューズ¥148,500(ポール アンドリュー/全てアパルトモン青山店)、Cartierの腕時計、MARK CROSSのバッグ、GOOD GRIEF!のキャンバスバッグ、GUCCIのサングラス、mara cariのブレスレット、その他は本人私物
L’Appartementバイヤー・幸 佳代子さん
ドゥーズィエム クラス、アパルトモンの販売から店長職を経て現職のバイヤーに。世界中から選りすぐりのアイテムを買い付ける忙しい日々を送る。サングラスがチャームポイント。
「ラグジュアリーブランドのアイテムを購入する際は、今の自分自身にしっくりくるかを重要視していて、スタイルに浮いてないかな? 背伸びしすぎてないかな? などの感覚を大切にするようにしています。いつも意識しているのは、モダンとクラシックのバランス。あとは、この先何十年も変わらずに愛でられるものが欲しいと思うようになりました。歴史を感じさせる味のあるヴィンテージを楽しむように、新しく手に入れたものも、年月をかけて自分だけのヴィンテージに昇華させたいなと。今狙っているアイテムは入手困難なものも多く、自分にとって手に入れられるタイミングが来るのを待ちたいと思っています」
「腕時計やバッグのキャメルをメインにした、品のあるトラッドテイストは永遠に好きなスタイルです」
LON デザイナー・舘 かおりさん
目指す方向性に合っているか。未来の自分を想像した買い物に
LON デザイナー・舘 かおりさん
ジュエリーブランド「LON(ロン)」のデザイナー。セレクトショップのプレス、ディレクターを経て、独立。現在は他ブランドのディレクションや、空間ディレクションなど、活動の幅を広げている。
「30代になり歳を重ねるにつれ、ただ消費されるだけのものには興味がなくなってきました。値段は関係なく、この先の10年、20年後も身に着けていたいか、そばに置いておきたいか、ものの価値を今まで以上に考えるようになりました。そして今もこの先も、それが自分の目指すスタイルに合っているのか、よく考えてから購入するようにしています。そうすることによって、扱い方やアフターケアなど、ものに合わせた手入れの知識も得られて、以前よりもきちんと向き合えるようになった気がします」
FATUITE ディレクター・藤井明子さん
どんなときも私を鼓舞してくれるリュクスなブランドアイテム
FATUITE ディレクター・藤井明子さん
スキンケアブランド「ファチュイテ」のディレクター。透き通るような発光美肌に奇跡の43歳とよばれる。美容マニアならではの情報を発信しているインスタは必見。美容と同じくらいアイドルグループSEVENTEEN推し。愛称は藤子。
ADELAIDE/ADDITION ADELAIDEディレクター・長谷川左希子さん
ブランド背景やクオリティをより重要視するように
ADELAIDE/ADDITION ADELAIDE ディレクター・長谷川左希子さん
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション卒業後、ザ・ウォールに入社。2018年よりアデライデのディレクターを務め、21年にはザ・ウォールの姉妹会社TW/serviceを設立。
「30代前半までは、可愛い、素敵! というような、気持ちが動いたものを衝動買いしてきました。ただ、仕事柄多様なプロダクトを見てきたこともあり、35歳を過ぎたころからは人と被らないこと、素材や仕立てのクオリティ、ブランドの生産背景やデザイナー自身の思考など、購入する前段階で考えることが増え、買い物自体が慎重になったように思います。歳を重ねクローゼットの中が充実してきた今だからこそ、ディレクションを務めるアデライデのコンセプト“そぎ落としてスタイリングする” の大切さを痛感しています。また、パリへの出張が多いので、向こうではどんなものが着たいかな? と、街に合わせてスタイリングを考えるのが、そのシーズンの買い物の指針に」
photograph : KAORI IMAKIIRE(model), SPOTLIGHT
otona MUSE 2024年8月号より
配信: オトナミューズウェブ
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