WHO(世界保健機関)は、2023年に感染が確認されたはしかの患者数は約1030万人となり、2022年と比べて20%増えていることを明らかにしました。この内容について中路医師に伺いました。
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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
WHOが発表した内容とは?
WHOが今回発表した麻疹の感染状況について教えてください。
中路先生
今回、WHOとCDC(アメリカ疾病予防管理センター)が発表したによる推計によると「2023年のはしかの症例数は世界全体で1030万件と推定され、2022年から20%増加した」という結果が出ています。
WHOは増加している理由として、世界的な予防接種率が不十分であることを指摘しています。予防接種率の地域格差により、2023年には57カ国で大規模または壊滅的なはしかの流行が発生し、アメリカ大陸を除くすべての地域で感染が確認され、前年の36カ国から約60%増加しました。アフリカ、東地中海、ヨーロッパ、東南アジア、西太平洋地域では、感染者数が大幅に増加しており、大規模または壊滅的な流行のほぼ半数がアフリカ地域で発生しました。その結果、2023年には10万7500人が死亡したと推定されました。死者の大半が5歳未満の子どもたちでした。はしかによる死者数は、2022年と比べると8%減少していますが、ワクチンで予防可能な病気で命を落とす子どもたちが依然としてあまりにも多いことに変わりない状況です。
はしかのワクチン接種を巡っては、2023年に世界全体で推定83%の子どもたちが1回目のワクチン接種を受け、推奨されている2回目の接種率は74%にとどまっています。また、2023年には2200万人以上の子どもたちが1回目のワクチン接種を受けていないことも明らかになっています。
はしかとは?
今回のニュースで取り上げた、はしかについて教えてください。
中路先生
日本は、はしかの土着ウイルスが存在しない排除国として、2015年にWHOから認められています。そのため、この年以後の感染は海外から持ち込まれたウイルスによるものです。近年のはしかの感染者数について、2019年は744人の患者が報告されましたが、コロナ禍の2020~2022年は10人以下でした。それが2023年には28人に増加し、2024年は8都府県で少なくとも20人の感染が確認されています。
はしかは、「麻疹ウイルス」によって引き起こされる急性の全身感染症です。空気感染や飛沫感染、接触感染がウイルスの感染経路で、感染力が非常に強いウイルスです。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%の確率で発症し、感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。
はしかに感染してから約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が出てきます。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。また、肺炎や中耳炎を合併しやすく、1000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われています。
はしかを予防するためには、ワクチン接種が最も有効です。はしか感染者に接触した場合でも、72時間以内にワクチンの接種をすることで、発症を予防できる可能性があります。ワクチンを接種することで、95%程度の人が麻疹ウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
配信: Medical DOC