離婚問題で相手側に離婚調停を起こされたら、しっかりと準備して対応する必要があります。離婚したくないからといって判断せずに放置していると、最終的には相手側の言い分どおりに離婚が決まってしまう可能性もあります。
そこでこの記事では、離婚調停を申し立てられた側が最初にすべきこと、離婚調停を申し立てられた側が有利に調停を進める方法、離婚調停を申し立てられた側が調停を欠席するとどうなるのかなどについて解説していきます。
1、離婚調停を申し立てられたら最初に考えるべきこと
家庭裁判所から離婚調停の書類が届いたら、まずは落ち着いて中身を確認してください。その書類には、配偶者が離婚を求めていることと、希望する離婚条件が記載されています。
記載内容を確認したら、申し立てられた側は以下のポイントについて冷静に考えていきましょう。
(1)自分の希望を明確にする
離婚調停の申立書には、申立人である相手方の一方的な希望が書いてあるだけですので、それに対して自分はどのようなことを希望するのかを明確にしましょう。
離婚したくないのか、あるいは離婚には同意するけれども離婚条件に納得できないのかを考えるのです。
後者の場合には、どのような条件であれば離婚に応じてよいのかも考えましょう。慰謝料や財産分与、子どもの親権、養育費や面会交流などについて、まずは難しいことは抜きにして自分の気持ちに正直になって考えることが大切です。
項目ごとに希望を紙に書きながら、思考を整理していくのがおすすめです。正直な自分の希望をいったん、まとめてみましょう。
(2)落としどころを考える
自分の希望を明確にしたら、次に譲れる部分と譲れない部分をピックアップして、落としどころを考えていきます。
離婚調停では、相手方の希望が一方的に通るケースは少ないですが、自分の希望も一方的に通るものではありません。譲り合うことによって、お互いが納得できる解決案を探っていくのが調停手続きです。
例えば、離婚したくないのであれば、浮気はやめる、ギャンブルもやめる、家事や子育てを手伝うなど、交換条件を考えるべきです。
離婚条件を争う場合も、慰謝料はいくらまでなら支払ってもよいのか、親権はどうしても譲れないのか、面会交流や養育費の条件次第では親権を譲ってもよいのか、などを考えていきましょう。
(3)そのための主張と証拠を準備する
離婚調停は話し合いの手続きですが、有利に進めるためには法的に有効な主張をして、主張する事実を裏づける証拠を提出することが重要となってきます。
例えば、浮気を原因として離婚を求められている場合には、交際相手がいたとしても法律上の離婚原因となる「不貞行為」はしていないと主張することが考えられます。
また、親権を譲りたくないなら、子育ての環境を万全に整えていることを証拠付きで主張していくことになるでしょう。
2、離婚調停を申し立てられた側が知っておくべき基礎知識
そもそも離婚調停とはどのような手続きであるのかを理解しておきましょう。
(1)そもそも離婚調停とは?
離婚調停とは、家庭裁判所において夫婦が離婚問題について話し合い、譲り合うことによって双方が納得できる解決を図る手続きのことです。
裁判(訴訟)のようにどちらの言い分が正しいのかを見極めて、判決によって決着をつけるのではなく、双方にとってメリットのある解決方法を柔軟に探っていく手続きとなっています。
家庭裁判所では夫婦が面と向かって話し合うのではなく、調停委員を介して話し合います。それぞれが交代で調停委員と話すことを繰り返して、話し合いが進められていきます。
双方が一定の内容で合意できたら、「調停成立」となります。離婚について合意した場合は、調停が成立した時点で法的に離婚が成立します。
なお、離婚調停の正式な手続き名は「夫婦関係調整調停」といいます。
夫婦関係がうまくいかなくなった場合に離婚を求めて申し立てる調停のことを俗に「離婚調停」と呼んでいます。
夫婦関係を修復するために申し立てる調停のことは「夫婦関係調整調停(円満)」といいます。
(2)調停委員とは?
離婚調停では、「調停委員」が重要な役割を果たします。
調停委員とは、中立公平な立場で調停の話し合いを進める職責を担う人のことです。地元有識者の中から、裁判所によって選任されます。
調停委員は、申立人からも相手方からも公平に、穏やかな雰囲気で話を聞きます。一方から話を聞いたら、もう一方からも意見を聞き、意見が合致するように導いていきます。
柔軟にトラブルを解決するという調停の目的上、調停委員が導く方向は必ずしも法律上の正解と同じではありません。事案に応じて最適な解決に導くため、ときには当事者の一方を説得することもあります。
調停を有利に進めるためには、調停委員を実質的に味方につけることが重要となってきます。そのためには、法的に有効な主張と証拠を提出することによって、自分の言い分の正当性を調停委員に理解してもらうことが大切です。
(3)離婚調停にかかる期間は?
離婚調停が申し立てられてから終了するまでにかかる期間は、事案によってさまざまです。1回の調停期日で話し合いがまとまるケースもあれば、10回以上の期日を重ねてもまとまらないケースもあります。
ですが、平均としては3か月~6か月、回数にして2~4期日で終了するケースが大半を占めています。
調停は平日の日中に開かれますので、仕事をしている方は2~4日、有休休暇を取るなどして時間を作る必要があるといえます。
(4)離婚調停が不成立になるとどうなる?
離婚調停で話し合いがまとまらない場合は、「調停不成立」となって離婚調停の手続きは終了します。
調停不成立となった後の流れとしては、
離婚審判に移行する
離婚訴訟に進む
夫婦間で再度、話し合う
などが考えられますが、ほとんどのケースでは離婚訴訟に進むことになります。
離婚訴訟は調停のような話し合いの手続きではなく、判決によって強制的に決着がつけられます。敗訴した側は、意に沿わなくても離婚や慰謝料の支払いなどに応じることを強いられてしまいます。
離婚訴訟では自分の主張を証拠で証明できた方が勝訴しますので、しっかりとした法的主張と有力な証拠を提出することが重要となります。
なお、離婚審判とは、離婚調停に引き続いて裁判所が相当と考える解決方法を「審判」として強制的に下す手続きです。
ですが、審判は調停において調停委員が示した解決案とほぼ同じ内容となることが多いため、調停案に納得できない当事者は審判には移行せず、離婚訴訟に進むことが圧倒的に多くなっています。
配信: LEGAL MALL