鎖肛の治療
鎖肛(さこう)のうち肛門がないタイプの場合は、緊急手術をおこないます。
どの型であっても最終的には根治を目指せますが、術後も通院しながら排便トレーニングをおこなう必要があります。
手術方法については、病型により下記のように異なります。
低位型の手術
低位型の場合は、男児では新生児期に新しく肛門を作る肛門形成術とよばれる手術をおこない、多くの場合一度の手術で根治が望めます。一方、女児の低位で多い肛門膣前庭瘻などでは、出生後は肛門拡張術などで排便ができるようにした後、乳児期に肛門を作る手術をすることが多いです。低位型の場合、術後の排便機能は良好の場合が多いといわれています。
中間型、高位型の手術
中間型や高位型の場合は、2段階にわけて手術をおこないます。
新生児期には、人工肛門(ストーマ)を作る手術をします。人工肛門増設術は、便の排泄の出口を新しくつくるために腸の一部を直接お腹の外に出す手術です。術後はお腹の上から便がでるようになります。ストーマからでてくる便は、パウチとよばれる専用の装具をお腹に貼って便を受け止めます。パウチは便だしや定期的な交換が必要です。
人工肛門により便が排泄できるようになると、母乳やミルクで栄養をとれるようになります。赤ちゃんの成長を待ち直腸や肛門の筋肉が発達した段階で、肛門形成術をおこないます。新しい肛門ができ排便に問題がないことを確認した後に、人工肛門を閉じます。
術後の治療
術後の排便機能は低位型では良好ですが、中間位型と高位型では便秘や便失禁などの排便障害がみられることがあります。
鎖肛の患児は肛門の周りの筋肉や神経が未熟です。便が溜まったことを感じづらかったり便を出す力が弱かったりするため、便秘や便もれが生じます。
手術だけでは自分で排便する力が身につかないため、術後の排便トレーニングが重要になります。
排便は生活と密接に関わる問題です。便秘や便漏れがあると、生活の質の低下につながります。排便のことで困らない状態になることを目指して、退院後も通院しながら排便トレーニングをおこなっていきます。具体的には毎日一定のペースで浣腸をおこない、毎日同じ時間に排便する習慣をつけていきます。決まった時間にトイレに座れば、少しずつ自分の力で排便することができるようになるといわれています。
鎖肛は適切な手術とケアによって、多くの子供たちは正常な生活を送ることができます。
排便の自立は長期的に取り組む必要があり、子どもにとって排便ケアは生涯を通じて向き合う課題です。親としては病気について十分な知識を持ち、医師や専門家と協力して治療に取り組むことが大切です。
鎖肛になりやすい人・予防の方法
鎖肛(さこう)になりやすい人の特徴は、現在のところ分かっていません。
鎖肛は数千人に1人の頻度で起こる生まれつきの病気のため、予防法もありません。
関連する病気
ヒルシュスプルング病
参考文献
鎖肛(直腸肛門奇形)|一般社団法人 日本小児外科学会
西田みゆき:排便障害児の排便の自立に関する望まれるケア.小児保健研究 , 71(6), 837-843, 2012
胎児消化管閉鎖疾患(食道閉鎖、十二指腸・小腸閉鎖、鎖肛)生後の診断、治療、フォーローアップ、予後など)|日本産婦人科医会
こどもの便秘|小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会
配信: Medical DOC
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