「二人とも病気だから将来のことが心配」 一緒に暮らすことが許されない日本人の娘とフィリピン人の母親

「二人とも病気だから将来のことが心配」 一緒に暮らすことが許されない日本人の娘とフィリピン人の母親

●職員から暴力、伴侶の死、最愛の娘とも会えない

マリベスさんは娘に会えないストレスから抗議を二度したため、複数の職員から暴力的な制圧を受けている。

腕を強引にひねられたり、床に頭と体を強く抑え込まれたりした。通称、懲罰房と呼ばれる三畳ほどの狭い部屋に強引に連れていかれ、トイレも着替えもテレビカメラで監視される日々が五日間も続いた。今でもその時のトラウマと身体の痛みが残っている。

そんなとき、唯一頼りにしていたAさんが脳梗塞になって亡くなったと知らせを受ける。マリベスさんは、ますます絶望の淵に落とされることになる。

2021年、ようやく仮放免申請が通り、3年10カ月のもの長い収容生活を終え、10キロ以上やせ衰えた状態で外にでることができた。

ところが解放されたあとも、コロナ禍であるために娘に会わせてもらうことができない。最初はテレビ電話で会話するだけだった。

2023年、今度こそ娘に会えると連絡が来て、養護施設に出向いたら、マリベスさんは室内に入れてもらうことができず、外の窓から15〜20分だけやりとりをした。

ガラスで遮られているので、触れ合うどころか、声すら聞き取れない。ガラス越しに手を合わせて、マリベスさんは、ただただ号泣した。

「入管の外に出てもさみしい。娘に会えない。死にたかった」

●国賠提訴したが「記録用ビデオ」はすべて提出されず

マリベスさんは2023年、入管から過度な制圧行為を受けたとして、1000万円の損害賠償を求める国賠訴訟を起こした。

入管側は「合理的に必要と判断される限度内の有形力の行使といえる」と反論している。

しかし、証拠となるはずの記録用ビデオを全部出そうとしない。出されたのは、入管により切り取られた部分的な映像だけだった。

代理人をつとめる笹本潤弁護士は「ないのなら仕方ないが、入管はあると認めているのに出さないのはおかしい」と話す。

すべての映像を提出したうえで、裁判官に審査してもらわないことにはフェアではない。この裁判は、現在も東京・霞が関の東京地裁で続いている。

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