「人前で話すとき、つい緊張してしまう……」という経験は誰にもあると思いますが、もしかしたら「社交不安症」という病気かもしれません。身体的・精神的な症状が絡み合って、人間関係や仕事にも深刻な事態が起こります。 社交不安症とはどのような病気なのか、原因や症状、生活への影響について、「ペディ汐留こころとからだのクリニック」の近野先生に解説していただきました。
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監修医師:
近野 祐介(ペディ汐留こころとからだのクリニック)
信州大学医学部医学科卒業。その後、飯田市立病院、産業医科大学精神医学教室、門司松ヶ江病院などで勤務医として経験を積む。2023年、「ペディ汐留こころとからだのクリニック」副院長に就任。日本精神神経学会精神科専門医、日本救急医学会救急科専門医。精神保健指定医。
編集部
社交不安症とは、どんな病気ですか?
近野先生
社交不安症は、人に見られている場で話や食事をしたり、字を書いたりすることを過剰に恐れ、生活に支障をきたしてしまう病気です。会議やプレゼンでの発言、大事な試験のときなどは、ほとんどの人が緊張してしまうと思います。これは自然な反応ですが、「プレゼンでの発言の度に頭が真っ白になって何もできなくなる」「会食でご飯が食べられない」「手元を見られると字が書けない」「大事な試験やプレゼンを回避しようとする」など、極端な影響がみられる場合は社交不安症の可能性があります。
編集部
社交不安症と社交不安障害は違うのでしょうか?
近野先生
いいえ。社交場面に強い不安が生じてしまう病気を表す「SAD :Social Anxiety Disorder」を日本語に訳す際、2種類の訳し方となってしまっているというだけで、同じものと考えていいです。
編集部
社交不安症では、どのような症状が出るのですか?
近野先生
身体症状としては、「ドキドキして息苦しくなる」「頭が真っ白になる」「手足や声が震える」「大量に汗をかく」「顔が赤くなる」「吐きそうになる」などがみられ、ひどい場合はイベントの何日も前から通常の生活が送れなくなってしまいます。また、精神症状としては、「不安」や「緊張」、「予期不安」なども伴います。予期不安とは「また同じ症状が出るのではないか」と不安に陥ることです。悪化すると、そういった状況から逃げたいがために、仕事をやめたり、死にたくなったりするようなケースもあります。
編集部
社交不安症の原因はなんでしょうか?
近野先生
原因はほとんどわかっていませんが、脳の扁桃体が人よりも過剰に反応していることが関係していると言われています。また、例えば「もともと人前で話すのが不得意」といった性格的なことも要因となり得ます。
※この記事はMedical DOCにて【社交不安症(社交不安障害・SAD・あがり症)を抱える人が人間関係や仕事を続けるためのコツ<医師解説>】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
配信: Medical DOC
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