「上咽頭がん」の初期症状はご存知ですか? 早期発見のポイントを併せて医師が解説

「上咽頭がん」の初期症状はご存知ですか? 早期発見のポイントを併せて医師が解説

監修医師:
渡邊 雄介(医師)

1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

上咽頭がんの概要

咽頭とは、鼻の奥から食道までつながる、筋肉と粘膜でできた約13cmの管です。高さにより上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つの部位に分けられます。

上咽頭がんは、一般的に「のどちんこ」とよばれる口蓋垂(こうがいすい)の後ろの上部にある上咽頭に発生する悪性腫瘍です。咽頭の周囲にはリンパ節が多いため、首のリンパ節に転移しやすい特徴があります。

上咽頭がんは、中国南部や東南アジアに多く、日本では比較的まれながんです。
国立がん研究センターがん情報サービスによると、日本では1年間に約800人が上咽頭がんと診断されており、女性よりも男性に多い傾向があります。

上咽頭がんの症状は鼻や耳にみられることが多く、鼻づまりや耳づまりなどがみられます。そのほか、物が二重に見えたり、見えにくくなったりするなど、脳神経から生じる症状がみられることがあります。

初期では自覚症状がないことが多く、早期発見が難しいがんですが、早期に治療を開始できれば生存率は高くなることが期待できます。
国立がん研究センターがん情報サービスによると、上咽頭がんを含む口腔・咽頭がんの5年相対生存率(2009〜2011年)は63.5%であることが報告されています。

上咽頭がんの発症には、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)とよばれるウイルス、喫煙や過度の飲酒が関係していると考えられています。一般的に、手術ではなく放射線治療や抗がん剤治療が行われます。

上咽頭がんの原因

上咽頭がんの発生は、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)に感染することが原因のひとつとして考えられています。上咽頭がんになる人の多い地域(中国南部、東南アジアなど)では、多くの場合、EBウイルスへの感染が確認されています。

EBウイルスは、ヘルペスウイルスとよばれる種類のウイルスで、伝染性単核球症や肝炎、脳炎、リンパ腫などさまざまな病気の原因となるウイルスとして知られています。通常は感染しても、無症状か風邪のような症状で終わることが多いです。

日本でも成人の約9割はEBウイルスに感染しているといわれていますが、EBウイルスへの感染に加えて、特定の遺伝子変異が生じることなどにより、上咽頭がんが発生するリスクが高まると考えられています。

上咽頭がんの発生に喫煙や過度の飲酒が関連する場合があることも指摘されています。国立がん研究センターの大規模調査によると、日本人の男性において、喫煙者のグループは非喫煙者のグループと比較して、上咽頭がんになるリスクが約4倍増加したことが明らかになりました。また、日常的に飲酒をしているグループは飲酒をしないグループと比較して、口腔・咽頭がんになるリスクが増加したことも明らかになっています。

そのほかの原因として、中国南部や東南アジアで塩漬けにした魚などの食品が広く食べられていることが、これらの地域で上咽頭がんの発症が多いことと関連していると考えられています。

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