内臓がおへそから突出する「臍ヘルニア」 なりやすい人の特徴を医師が解説

内臓がおへそから突出する「臍ヘルニア」 なりやすい人の特徴を医師が解説

臍ヘルニアの治療

臍ヘルニアの治療方針は、患者の年齢、ヘルニアの大きさ、症状の有無、合併症のリスクなどを考慮して決定されます。主な治療法は以下の通りです。

経過観察

新生児や乳児の場合、多くは自然に閉鎖するため、2-4歳まで経過観察されることが一般的です。実際、2歳までに約90%が自然治癒するとされています。

成人の小さな無症状のヘルニアでも、経過観察が選択されることがあります。

保存的治療

小児の臍ヘルニアにおいては、保存的治療が効果的な場合があります。

近年、成人においても保存的治療の効果について報告されています。

ただし、小児の臍突出症のうち、瘢痕によって形成されたヘルニアを伴わない”でべそ”においては保存的治療は無効です。

手術治療

手術方法には主に以下の2種類があります。

開腹手術:
臍周囲に切開を加え、直接ヘルニア門を縫合閉鎖します。
腹腔鏡手術:
小さな切開を数か所設け、腹腔内からメッシュを用いてヘルニア門を補強します。 成人では meshを用いた手術が選択されることもありますが、小児ではヘルニア囊および腹直筋膜の縫合閉鎖が標準的です。余剰皮膚の大きい症例では、整容的観点から臍形成も必要となることがあります。

※以下のような場合に手術が考慮されます。

2歳を過ぎても自然閉鎖しない症例

頻度はまれですが、嵌頓を起こした症例

ヘルニア門は閉鎖したが余剰皮膚が大きく残存した症例

成人の症候性ヘルニア

大きなヘルニア(直径2cm以上)

合併症への対応

嵌頓や絞扼が生じた場合は緊急手術の適応となります。

臍ヘルニアの治療、特に手術療法の選択に関しては、個々の症例に応じて慎重に判断する必要があります。医師と患者が十分に相談し、最適な治療法を選択することが重要です。
なお、成人の臍ヘルニアは自然閉鎖しないため、多くの場合手術の対象となります。一方、小児の臍突出症のうち、臍ヘルニアのみが保存的治療の対象となり得ることに注意が必要です。

臍ヘルニアになりやすい人・予防の方法

臍ヘルニアになりやすい人

臍ヘルニアになりやすい人には、いくつかの特徴があります。
新生児や乳児の場合、早産児や低出生体重児がリスクが高いとされています。
成人では、肥満、妊娠・出産経験、慢性的な咳や便秘、重量物の持ち上げを頻繁に行う職業の人などがリスク群に含まれます。また、腹部手術の既往がある人や、家族歴のある人も臍ヘルニアのリスクが高くなる傾向があります。

予防の方法

臍ヘルニアの予防には、リスク因子を可能な限り減らすことが重要です。
具体的には、適正体重の維持、バランスの取れた食事と適度な運動、便秘の予防、重い物を持ち上げる際の正しい姿勢の維持などが挙げられます。
妊娠中や出産後の女性は、腹部の筋力を維持するためのエクササイズを医師や理学療法士の指導のもとで行うことが推奨されます。ただし、先天的な要因や避けられない状況(例:妊娠)によって臍ヘルニアが発症することもあるため、完全な予防は困難です。そのため、定期的な健康診断や自己チェックを行い、早期発見・早期対応に努めることも重要な予防策の一つと言えます。
臍ヘルニアは、適切な管理と必要に応じた治療により、多くの場合良好な経過をたどります。しかし、症状が気になる場合や増悪傾向がある場合は、速やかに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることをお勧めします。

参考文献

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