3、前科がつくと生じるデメリット
前科がついたとしても日常生活で特段の制限を受けるわけではありませんが、時と場合によっては一定の不利益を受けることもあります。
ここでは、前科がつくことでどのようなデメリットが生じるのかについてご説明します。
(1)就けない職業がある
前科があると、多くの国家資格において資格のはく奪や停止がなされ、その職業に就けなくなってしまいます。たとえば以下の職業は前科があると就けません。
医療関係(医師、看護師、歯科医師、歯科衛生士、薬剤師など)
国家・地方公務員、教員
士業(弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士など)
建築関係(一級建築士、建設業者、宅地建物取引士など)
警備業者・警備員
資格のはく奪、停止となる条件はそれぞれ異なります。現在の職業や目指している職業について、念のため確認しておくとよいでしょう。
資格制限のない職業に関しては、前科があっても就くことは可能です。
もっとも、採用の際に尋ねられたら正直に答えなければならず、履歴書の賞罰欄には前科について書かなければなりません。
もし嘘をつくと経歴詐称となり、就職後に解雇されてしまうおそれがあります。
以上より、前科があると仕事の継続や就職に支障が出てしまう可能性が十分あるといえます。
(2)一時的に選挙権を行使できなくなる
禁錮や懲役の判決を受けると、その刑の執行が終わるまでは選挙権、被選挙権が認められなくなります。
選挙権とは投票する権利で、被選挙権とは立候補する権利です。
このように、前科の内容によっては政治に参加する機会を逸することになってしまうのです。
(3)海外渡航にも影響がある
前科があると海外に行けなくなってしまうことがありえます。
渡航先の国が、前科がある人の入国に対して厳しい態度をとっているケースがあるためです。
たとえばアメリカの場合は、ビザが必要となり、審査に通らなければ前科がある人は入国できません。
犯罪や刑罰の内容にもよりますし、すべての国に行けなくなってしまうわけではありません。
自分が行きたいと考えている国があれば、一度確認してみてください。
(4)他の人にはバレる?
前科の有無について、一般の人が直接確認することはできません。
前科調書や犯罪人名簿は一般には公開されていないためです。これらの記録から、前科が他人に発覚することはありません。
もっとも、逮捕や裁判について実名つきでニュースになっていれば、話は別です。
インターネット上に残っている情報から知られてしまうリスクは十分にあります。
就職先の会社に直接聞かれなかったとしても、気づかないうちに知られている可能性があるのです。
(5)時間が経てば消える?
前科が消えるかどうかは、前科調書と犯罪人名簿で扱いが異なります。
まず、検察庁で管理される前科調書の記録は一生消えません。
前科調書は、後に別件で捜査の対象とされた場合に参照されるものです。
犯罪内容が似た前科があると刑が重くなりやすいため、前科の影響が一生続いてしまうといえます。
これに対して、市町村が管理する犯罪人名簿の記録は消えます。以下の期間が経てば刑の言渡しの効力が消滅し、削除の対象となるためです(刑法第34条の2、第27条)。
禁錮・懲役の場合:刑の執行終了後、罰金以上の刑に処せられず10年経過
罰金の場合:刑の執行終了後、罰金以上の刑に処せられず5年経過
執行猶予の場合:執行猶予を取り消されずに執行猶予期間が経過
上記期間が経過すれば、選挙権や各種資格は復活します。
4、交通事故で前科をつけないためには被害者と示談をするべき!
同じような内容の交通事故であっても、事故後の対応次第では前科がつく可能性を下げることもできます。そのために最も重要なポイントは、被害者と示談をすることです。
ここでは、交通事故で示談をする意味や、示談交渉におけるポイントについてご説明します。
(1)示談がまとまれば不起訴になる可能性が上がる
示談とは、当事者間で話し合って民事上のトラブルを解決することです。
一般的には加害者が相応の示談金を支払い、被害者からの許しを得ることを合意します。
刑事事件で起訴するかどうかを決めるのは検察官ですが、示談金の支払いによって被害の回復が図られ、被害者も処罰を望んでいないとなれば、「処罰する必要性が低い」と判断され、不起訴処分となる可能性が高まります。
不起訴となれば、前科もつきません。
交通事故の場合、通常は保険会社を通じて示談をしますが、被害者の許しを得るためには加害者自身も誠心誠意対応することが重要です。
(2)反省を示すことも必要
被害者に対して謝罪し、反省の態度を示すことも重要ですが、それと並んで、警察官や検察官に対して反省の態度を示すことも重要となります。
反省の有無は再犯のおそれの有無にも関わるので、検察官が起訴するかどうかを判断するための重要な要素のひとつです。
もっとも「反省しています」と口で言うだけでは十分に伝わりません。
ときには反省を示すために具体的な行動をすることも必要になります。
たとえば、車を処分する、免許を返納するなどです。
そこまでする必要があるかは事案によりますが、起訴されるか微妙なケースでは意味を持つことがあります。
配信: LEGAL MALL