●変わらぬ検察 「国会で問題にすべき」
検察官は起訴するかどうかを決められるため、逆に犯罪を世の中から隠すことができるともいえるほど強大な権限を持つ。その検察内部で起きた事件だけに徹底的な調査が求められることは必然だ。
「今回の事件の教訓として、検察組織はハラスメントが起きやすい職場であるということにもっと自覚的になって調査をすべきです。特に、検事と(検事を補佐する職員である)検察事務官の間にはもっと多くのハラスメントが存在する可能性があります。全国の検察事務官からも意見を聴取した方がよいと思います」
検察では今、様々な問題が相次いでいる。静岡県一家4人殺害事件で死刑囚とされた袴田巌さんの再審で無罪が言い渡された後、畝本直美・検事総長が控訴断念を表明する際に袴田さんをいまだに犯人視する内容の談話を公表した。
大阪地検特捜部に逮捕、起訴された不動産会社の社長が無罪となったプレサンス事件では、違法な取調べをしたとされる検事について大阪高裁が特別公務員暴行陵虐罪で付審判開始とする決定を出した。
その他にも、1986年に福井市で起きた女子中学生殺害事件に関して、名古屋高裁金沢支部が裁判やり直しの決定を出した際、被告人に有利な証拠を検察が隠していたことなどが批判された。
市川弁護士は2010年に発覚した大阪地検特捜部の検事による証拠改ざん事件を引き合いに出し、最後にこう提言した。
「あの時検察が変わりかけたのは確かだと思います。でも、息を吹き返してしまった。当時の反省や教訓は今の検察に残っていません。根っこにある問題は検察庁の体質です。ハラスメントに関する情報がちゃんと組織の上層部に伝わるような環境整備が必要です。検事総長や検事長を証人喚問するなど、国会でもきちんと今回の事件を問題にすべきだと思います」
配信: 弁護士ドットコム