離婚する時、子どもがいる家庭では親権を父親がもつのか、母親がもつのかで揉めるケースが多くありますが、一般的には父親が親権を得られる可能性は低いといわれています。
実際、家庭裁判所の手続きによって父親が親権を獲得するケースは全体のわずか1割に満たないと言われています。
しかし、数は少ないですが、父親が親権を持つ例も存在し、父親が親権を獲得するためのポイントも存在します。
この記事では、
親権者が父親になりにくい理由
父親が親権を獲得するためのポイント
などについて解説します。
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1、離婚時に父親が親権者になりにくい理由は?
父親の立場から見ると、離婚時の親権争いにおいて、父親というだけで圧倒的に不利とされてしまうことには納得いかないでしょう。
ここでは、なぜ親権争いで母親が優位とされているのか、日本における親権の考え方について詳しくご説明します。
(1)子育てでは母性が最重要視されるから
子どもが生まれたら、しつけや教育よりもまず、授乳やおむつ替えにはじまり、食事や衣服、風呂、寝かしつけなどが子育ての中心となります。
このような身の回りの世話は、一般的に父性よりも母性がよくなし得るところです。
このように、子育てにはまず父性よりも母性によるきめ細やかな世話が重要であるとする考え方のことを「母性優先の原則」といいます。
子どもの年齢が低ければ低いほど、母性優先の原則が強く働きます。
もっとも、子どもの年齢が上がるにつれて母性優先の原則は次第に後退していきます。
おおむね15歳程度になれば、身の回りのことは自分でできるようになることから、さほど母性優先の原則は考慮されなくなります。
(2)離婚前から母親が主に子育てをしていることが多いから
日本の社会では、まだまだ「父親が外で働き、母親が家庭で子育てをする」ことが当然であると考える風潮があります。
近年は共働きの夫婦も多いですが、それでも子育ては母親が主に担っている家庭が多いはずです。
家庭裁判所では、子どもが生まれてからずっと母親が主に世話をしてきたのであれば、特段の問題がない限り、離婚後も母親が子育てを継続するのが望ましいと考えられています。
このように、離婚後の子どもの養育環境について、できる限り現状から変更しない方がよいとする考え方のことを「継続性の原則」といいます。
なお、ここでいう「継続」については、これまでの子どもとのやりとりの継続(どちらが子育ての中心であったか)と、生活の継続(離婚後の生活環境をこれまでの連続で保てるか)の両面から判断されます。
もし、今まで母親よりもあなたが中心となって子育てをしていたのであれば、「継続」を重視する限り、離婚後も子どもはあなたのもとに置いておくべきという結論となります。
したがって、この原則を過度に恐れる必要はありません。
(3)離婚後も父親が子育ての時間を確保するのが難しいから
子育てにおいては、豊富な資産があるかどうかよりも、子どもに対する愛情があるかどうかが重要と考えられています。
外で働いて収入を得ることも愛情には違いありませんが、子どもが幼ければ幼いほど、家庭で常に一緒に過ごして愛情を注ぐということが重要となります。
ただし、時間があればいいというものではありません。
本当にその時間が子育てに有意義に使われ、愛情が育まれる時間なのか、これが重要です。
あなたが今後、現実に子どもの面倒をみることが可能な程度の時間を確保できるのであれば、親権争いにおいて有利になる可能性もあります。
(4)子どもが母親を求める傾向があるから
親権争いでは、子どもが父親と母親のどちらに懐いているかということも考慮されます。
一般的に母親の方が子どもと一緒に過ごす時間が長いことから、子どもは母親に懐くことが多いものです。
そのため、父親と母親のどちらかを選ばなければならないとしたら、母親を選ぶ子どもの方が多い傾向にあります。
もっとも、この傾向も子どもの年齢が上がるにつれて次第に後退していきます。
子どもが15歳以上になると本人の意思が尊重されますし、それ未満でも10歳を超えると子どもの意思がある程度尊重されるようになります。
おおむね12歳~13歳以上の子どもが父親を尊敬しているようであれば、離婚時に父親を選ぶ可能性も十分にあるでしょう。
(5)家庭裁判所では先例が重視されるから
親権の問題に限りませんが、裁判所が何かを判断する際には、基本的に先例を踏襲するものです。
これまで、家庭裁判所における親権争いにおける先例としては、母親が親権者に指定されたケースが圧倒的に多くなっています。
そのため、母親の子育てに重大な問題があるようなケースは別として、多少の問題があったとしても、先例に従って母親が親権者に指定されることが多いのが実情です。
2、離婚時に父親が親権を獲得するためのポイント
親権者を決める際に最も重要なことは、「子どもの福祉」、つまりどちらが子育てをした方が子どもの利益になるかということです。
以下で、父親が親権を獲得するためのポイントをご紹介します。
どうしても親権を獲得したい方は、以下の解説をご参考の上で、少しでも有利な状況を作るようにしましょう。
(1)積極的に子育てに関わっているか
父親が自力で「母性優先の原則」を突き崩すことは困難ですが、「継続性原則」については、父親にも勝ち目はあります。
そのためには、これまで子育てにどれくらい積極的に関わってきたかという点が重要となります。
子どもと一緒に過ごす時間は母親よりも短いとしても、日々子どもと真剣に向き合ってきたか、十分な愛情を注いできたかという点が問われます。
日中は仕事で子どもと過ごせないとしても、帰宅後や休日などには子どものことを第一に考えて子育てに関わることが必要でしょう。
(2)今後の養育環境は整っているか
父親の多くは外で働いているため、日中は子どもに関わることができません。
保育園や学童などを利用するのもよいですが、それでも父親一人では子育てに手が回らないこともあるでしょう。
子育ては、何も親権者が一人で行わなければならないものではありません。
夫の両親など身近な人の協力が得られるのであれば、積極的に協力を依頼しましょう。
このようにして離婚後の養育環境が整っている場合は、親権争いでプラスに働きます。
(3)母親の子育ての問題点を証明できるか
母親の子育てに問題点がある場合は、それを主張・立証することも重要となってきます。
例えば、以下のような事情があるケースでは、母親が子育てをすることは子どものためにならない可能性が高いといえます。
母親が不倫に夢中になっており、子育てが二の次となっている
母親が子どもを虐待している
母親がDV・モラハラ体質であり、子どもがなついていない
子どもの食事をほとんど作らない
子育てで必要な手続き(医療手続きや進学関係等)を適切にすることができない
夜に意味もなく家を空けている等々
これ以外にも母親の子育ての問題点として挙げられるのか、そういった不明点があれば是非弁護士にご相談ください。
(4)すでに子どもとの別居が長引いていないか
夫婦が不仲になると、離婚前に別居をすることも多いでしょう。
別居するケースでは、母親が子どもを連れて家を出ることが多いと思いますが、このような別居が長引いてしまうと、父親は親権争いで不利になってしまいます。
親権を獲得したいなら、なるべく同居したままで離婚協議をするか、別居するとしても子どもを手放さないことが重要となります。
もし、すでに母親・子どもと別居している場合は、早急に「面会交流権」を活用して子どもと交流しつつ、離婚協議も早めにまとめる方がよいでしょう。
(5)子どもが自分になついているか
前記でもご説明したように、子どもが父親になついているかどうかという点も重要です。
母親は子どもと一緒に過ごす時間が長いだけに、子どもを叱らなければならない機会も多いものです。
それに対して父親は、子どもの遊び相手や話し相手になって楽しい時間を中心として過ごすことも可能です。
ただし、子どもの気を引くために母親の悪口を吹き込むことは避けてください。
このような行為は親権者としてふさわしくありませんので、親権争いで不利になってしまいます。
父親としては、自由な時間にはできる限り子どもと楽しい時間を過ごすように心がけるとよいでしょう。
(6)親権をとれたら|面会交流を認める寛容性はあるか
元配偶者と子どもとの面会交流を認めない親よりは、積極的に面会交流権を認める親の方が親権を獲得できる可能性は高くなります。
この原則のことを「寛容性の原則」といいます。
離婚した元配偶者も子どもにとっては親です。
親権者でなくなった親との面会交流は、子どもが健全に成長していくために非常に重要な意味を持っています。
そのため、面会交流に積極的に応じる親の方が、親権者としてふさわしいと判断されるのです。
ちなみに、面会交流の頻度の相場は、月に1回、半日程度が相場です。
配信: LEGAL MALL