離婚で父親が親権をとるには?親権を勝ち取るためのポイント

離婚で父親が親権をとるには?親権を勝ち取るためのポイント

3、父親でも離婚時に親権を獲得したい!そんな場合の具体的な手続き

それでは、父親が親権を獲得するためには具体的にどうすればよいのでしょうか。

ここでは、離婚時に父親が親権を獲得するための具体的な手続きについて解説します。

(1)父親が育てた方が子のためになるという証拠を固める

離婚手続きに入る前に、まず証拠を確保しておくことが大切です。

これまで解説してきたことを参考に、「父親が育てた方が子のためになるという証拠」と「母親が育てることが子のためにならないという証拠」の両方をできる限り集めていきましょう。

妻側に離婚原因がある場合、離婚原因に関する証拠も必要ですが、それだけではなく、さらにその事実がどのように子どもにとってよくないのかを示す証拠が必要ということです。

例えば、妻が不倫しているケースなら、不倫したことの証拠に加えて、子どもの食事をあまり作らない、夜に外出することが多いなど、子育てに手を抜いていることがわかる証拠を集めましょう。

また、収入を示す資料(給与明細や源泉徴収票、確定申告書の控えなど)や、両親などの親族が子育てに協力する旨の誓約書も提出するとよいでしょう。

(2)母親と話し合う

証拠を確保したら、親権を決める手続きに入りますが、基本的には父母の協議によって決めることになります。

相手に証拠を突きつけて説得する一方で、慰謝料や財産分与などについては譲歩して、相手にもメリットのある離婚条件を提案して交渉するのも有効となります。

また、前記でご説明したように面会交流を積極的に認めることと、その他にも可能であれば「共同養育」(離婚後も元夫婦が協力して子どもを育てていくこと)を提案するのもよいでしょう。

実際に共同養育を実践している元夫婦も少なくありません。

母親としても、形式的な「親権」はなくても継続的に子どもと関わっていけるのであれば、説得に応じやすくなるでしょう。

共同養育について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

(3)離婚調停では家庭裁判所調査官の調査を求める

母親との話し合いで決着がつかない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。

調停では、調停委員2名を介して当事者間の話し合いが進められます。

父親が親権を獲得するには、その方が子どもの成長にとって望ましいことをしっかりと主張し、その主張を裏づける証拠を提出することが重要となります。

さらに、調停では希望すれば家庭裁判所調査官による調査を求めることもできます。

家庭裁判所調査官とは、家庭裁判所に持ち込まれるトラブルにおいて、法律ではなく心理学や社会学、社会福祉学、教育学といった専門知識に基づいて具体的な調査を行い、トラブルを解決するための調整を行う人のことです。

親権争いにおいては、父親・母親それぞれの家庭を訪問するなどして、どちらが親権者としてふさわしいのかについて調査を行い、一定の意見を家庭裁判所へ提出することになります。

(4)離婚裁判で徹底的に争う

離婚調停で話し合いがまとまらなければ、離婚裁判(訴訟)を起こすことになります。

裁判(訴訟)では、当事者双方が出し合った主張と証拠を裁判所が精査した上で、最終的に判決が言い渡されます。

判決には強制的に従わなければなりませんので、離婚裁判(訴訟)を起こすなら十分に準備をした上で、徹底的に争う必要があります。

なお、裁判(訴訟)の途中でも話し合いによって和解をすることができます。

実際のところ、民事裁判(訴訟)の約7割は和解で終了しています。

しかし、有利な和解案を引き出すためには、その前提として主張をしっかりと行い、十分な証拠を提出しておく必要があることにご注意ください。

4、離婚時に父親が親権を勝ち取った事例

ここまで読んで、父親が親権をとるのは「なかなかハードルが高そう…」と思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

たしかに割合的には少ないですが、実際に父親が親権を獲得している事例もあります。

そこで、ここでは父親が親権を獲得した実例をいくつかご紹介しますので、参考になさってください。

(1)ベリーベストにおける実例

当事務所の解決事例で、以下の通り父親が親権を勝ち取れたケースがありましたのでご紹介します。

①ご相談者様

30代男性

②ご相談時の状況

妻が不倫をしている。仕事は風俗。

③ご相談内容

親権を獲得して離婚をしたい。慰謝料請求したい。

④ベリーベストの対応とその結果

風俗で働いていることは口外しないことを条件に、公正証書により慰謝料を分割弁済、親権者は夫とすることになりました。

⑤解決のポイント

この事例では、妻が不倫をしていることと、風俗で働いていることについて明確な証拠を確保できたことが決め手となりました。

動かぬ証拠によって妻に非があることは明らかでしたので、交渉を有利に進めることができました。

このように、離婚時の親権の問題について交渉する際には、しっかり証拠を集めて立証していくことが重要になります。

(2)裁判例

次に、実際の裁判(調停、審判、訴訟)で父親に親権が認められた事例をご紹介します。

①母親が子どもを連れ去ったケース

〇父親の不在時に母親が無断で子どもを連れて家を出て別居に至ったケースで、母親は親権者としてふさわしくないと判断された。

このケースでは父親は親権を獲得できれば母親との面会交流にも積極的に応じる意向を示していたこともあり、父親が親権者に指定されました(千葉家庭裁判所松戸支部平成28年3月29日判決)。

②母親が一人で家を出て別居を開始したケース

〇母親が父親との生活を嫌って、子どもを置いて一人で家を出たケースで、父親が親権を勝ち取った。

このケースでは、父親は別居前から積極的に子育てをしており、別居後も円滑に子育てを続けていたことから、継続性の原則により父親に親権が認められたものと考えられます(大阪高裁平成30年8月2日決定)。

③子どもの希望で父親が親権を勝ち取ったケース

〇離婚時には母親が親権者となったものの、10歳の子どもが父親との生活を望んだことから、親権者が父親に変更された。子どもが15歳未満の場合でも、ある程度の年齢になると子ども自身の意思が重視されるため、母性優先の原則はさほど重要ではなくなってきます。

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